2013年06月22日

応分理論

MankiwのJEPの近刊サーベイは、適切な税制とは何かを論ずることの難しさを示している;
http://gregmankiw.blogspot.jp/2013/06/defending-one-percent.html

1. 現状認識
アメリカの所得格差は1970年代以降広がっている。これはロビー活動の結果でもあるけど、技術偏向型の経済成長に乗り遅れた低スキルの労働者が機械や国外の低賃金労働者との競争に曝されているためというのも大きい。

2. 最適課税論
公平と効率のトレードオフを論ずるフレームワークはマーリーズが完成した。政府は人々の所得をできるだけ平等にしたいけれど、人々の稼得能力には差があってどれだけ働いたかは政府にはわからない。このためあまり税が高くなりすぎると高い能力のある人は低い能力しか無いかのように振る舞い、税収がむしろ落ちてしまうーーそんなお話だ。ここで重要になるのは、「税が課されるとどれだけ働きたくなくなるか」という特徴だけ。
でもここだと人々の好みはみな同じだと仮定されている。もし異なる好みを持つとしたら、再分配は適切ではなくなる;お金が得られない職に就いているのは、「そう望んだから」なので、政府の出番は無いというわけだ。

では、そもそもこのモデルが前提とする功利主義自体がおかしいのでは、とマンキューは問う。効用の個人間比較が可能だとしているのはおかしいし、人々の厚生を考えるのなら国境で区切ることにはなんら正当性が無いーー先進国に重い課税をしろなんて提言する人は居ないわけで。
功利主義からすると、「高い収入を得るような生得的能力が見える」なら、それをもとに重い税を課せば良いということになる。秘密にできないからだ。たとえば背の高い人は高い収入を得るという研究結果があるけれど、身長をもとに税を課せという提言に耳を貸す人はあまりいないだろう。この「タグ付け」に対する多くの人の不快感は、衡平感を論ずるのに功利主義が妥当ではないことを示しているのかもしれない。
またもし政府が個人の生産性を観察できるなら、働くやる気を考慮する必要はなくなる;仕事のできるヤツに働かせて、できないヤツと同じだけ消費させることが「最善」になるのだ。でもこれもやっぱり直感に反している。

3. 左派の事実誤認
i. 逆進的課税になっているというのは間違い;CBOによると税負担は所得が高いほど重くなっている。
ii. 市場の失敗や政治を利用し分不相応なほど収入の多い人間が居る;基本的には収入は貢献に見合ったもの
iii. 高収入なほど社会インフラから多くの便益を得ているのだから、負担すべき;十分負担している
とはいえ耳を傾ける価値のある議論、としている。

4. 応分理論
ここでマンキューはJust Desert Theory(訳すなら「応分理論」とでもなるか)を提言する;各人はそれぞれが社会に貢献したのにふさわしい分だけ収入を得るべき、とするのだ。競争均衡にあるなら政府の出番は無く、ピグー税は外部性の是正のために課され、累進所得税は応益負担から正当化され、救貧制度は公共財の提供としてみなされる。この考え方のほうが、我々のもつ衡平観により近いのではないか、とみている。

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(補足)
元ネタとおぼしき彼のサーベイを発見;
http://www.palgrave-journals.com/eej/journal/v36/n3/full/eej201022a.html
内容ほぼ一緒だけどこちらのほうが応分理論の概略を簡潔に説明している。


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(感想)
・いろいろ突っ込み待ちなサーベイ。刺激的。

・マーリースモデルへの批判がいまいちよくわからない;
個人間効用の比較はできないとしても、多くの政策があればそのうちのどれかは公平になっているだろう。まあパレート改善を目指せばいいよね、という古典的な擁護もある。
課税理論で前提にするのは、課税できるような中心的な権力があること。国境を越えた権力なんてのはないのだし、そこは批判してもあまり実りのある議論は出てこないような。。。


・身長は高収入の目安だとか。そういえば見た目も高収入に影響するから課税してしまえという議論もあったな;



ちんこやおっぱいの大きさとか、はげ方ってどうなんでしょう。年収に影響するのかしら。

・経済学だと、垂直的公平性を論ずるのはできても、水平的公平性を論ずるのはできない感じ;

水平的公平なんか考慮に値しないとバッサリ切っている。

・税を誰が負担しているかという現状認識すら調べるのは結構しんどい。以下の本はよく要約できているのでオススメ;
posted by Char-Freadman at 14:28| 北京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月20日

新しい金ぴか時代

所得格差の拡大が指摘されて久しい。いま、世界は二つの「金ぴか時代」を迎えているーー発展途上国も先進国も、ともに。19世紀末に泥棒男爵が経済を席巻していたのと似たような状況なのが前者であり、グローバル化による低賃金労働力との競争と機械化による人員削減に曝されているのが後者だ。本書は古今の実務家がいかなる生態であるのかを描写してゆく。

Crystia Freeland, "Plutocrats: The Rise of the New Global Super-Rich and the Fall of Everyone Else"



かつて所得階層の最上段を占めたのは大地主だったが、現在では高い報酬を受け取る労働者だ。ウォールストリートのトップたちは、その社内の働き手と比べても遥かに高い給与を受け取っている。トップ1%内部でも競争は激しく、トップ0.1%との差は拡大していっている。教育への熱は高く大学入学への競争は激しい。技術やアイデアが利益の源泉だ。その資金を活かして政治的に影響も持っている。

デジタル技術が進化し商品を広めるのが容易になった現在では、スーパースター現象が生じやすくなっている。かつての歌姫、エリザベス・ビリントンが不可能だったほどたくさんの人に歌を聴いてもらうことが可能になっているのだ。ほんの少しの能力の差が大きな収入の差を生み出してしまっている。

大きな社会変革の波に乗ることも重要だ;ロシアの新興財閥はみなソビエト崩壊時のバウチャーにより富を成した。彼らは数物系の専攻のエリートではあるものの、ソビエト社会主義の本流からは離れていた人たちだった。中国の自由化でも、経済特区にいち早く駆け込んだ人が財を成している。

社会の流動性が失われつつある危険を指摘し、結語としている。

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(感想)
・ジャーナリストだけあって経済学の論文と実務家の逸話を同時に語るのがうまい。学術ネタに聞き飽きてる人は逸話を、創業者の偉そうな話にウンザリしてる人は学術で大きな流れを、といった別種の楽しみ方ができそうだ。
・本書は2013年度のライオネル・ゲルバー賞を受賞しているみたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E8%B3%9E
他にも面白そうな本がたくさん!
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2013年04月29日

途上国に学ぶ経済政策

ヨーロッパはこのところずっと金融危機に悩まされ続けている。ギリシャに続きスペイン・イタリアも危ない。これらの先進国が学ぶべき教訓は、実は途上国の中にあったと説く本がある。

Turnaround: Third World Lessons for First World Growth, by Peter Blair Henry



ある政策が効くか否かの評価は確かに難しい。とはいえ、投資家はたいてい合理的な判断を下すから、当該国の株式市場が政策変化に対しいかに反応したかを見ていこうというのが本書を特徴付ける主な手法だ。
たとえばカリブ諸国が財政破綻にあたり固定為替の維持とともに賃下げを選んだときも、ブラジルがインフレ対策で物価連動型の賃金体制を捨てたときも、中位所得国が従属理論を捨て輸出志向型工業化を目指したときも、株式市場は短期のコストより長期の便益を予期して株価は上昇した。そこでキーとなったのは「政策が規律付けられていた」ことで、各国が直面する状況は違えど規律は先進国にとっても重要であるとみている。
資本の自由化はしばしば非難の的になるけど、よくみてみれば、株式市場の開放は外資の導入に繋がり好影響をもたらす。債務超過になってしまうのは、必要な資本を外債でまかなうようにしたときなのだ。
ある国が債務超過に陥った場合、救うべきかそれとも見捨てるべきかは、それぞれ理論的には正当化しうる;貸し手が協調して債務を減免してあげればその後ちゃんと成長するかもしれないし、はたまたその後のモラルハザードを助長するかもしれない。さて事例をみてみると、中位所得国に関しては救ってあげた方が良さそうだ。とはいえより発展の度合いの低い国ではそうではない。債務減免以外の手法、たとえばバナジーやデュフロが主張するようなthinking smallが必要になるだろう。

もちろん先進国たる日本でも規律は重要でしょうね!

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(感想)
・途中までみんな知ってることばっかで投げようかと思ったけど、後半はよくできていた。特に株式の自由化はよくって負債はダメってところは意外で新鮮。
・負債のGDP比が9割を超えると低成長に繋がるという論文に瑕疵が見つかったという最近の事件を思い出した;
http://www.bloomberg.com/news/2013-04-28/refereeing-the-reinhart-rogoff-debate.html
posted by Char-Freadman at 21:33| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月28日

単純化

あれはクルーグマンだったか、政府の仕事してるとバカになるみたいな嫌味をどこかで読んだ記憶がある。Cass Sunsteinは何冊も学術書を著している法学者だけどそのジンクスからは逃れられなかったようで…



"Simpler", by Cass R. Sunstein

著者はオバマ政権でOIRA(規制をシンプルにする部局)の任に当たっていたそうで、行動経済学の知見をいかに活かせたかその経験を語る・・・とのことなのだけど前作Nudgeから目新しいポイントはまるで増えていなかった。費用便益分析を利用して有効な政策であるかチェックすべきとか、もっとデザインを工夫して健康促進させようとかはそのとおりなのだけど、でもそれならどうやればその国民の福利をのばすような研究会を超党派で保っていけるのかとの考察は無く。任用にあたり共和党から痛烈な反対に遭ったとかいう話を載せるだけでなく、どうすれば適任な人を摩擦無く選べるような制度を作れるか考察してほしいところだ。また、健康や年金制度のデフォルトをいじるというリバータリアン・パターナリズムが合憲たりえるのかの解説も薄い。

前作のNudgeを読んでないならまあ面白いのかもです……。

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・オバマの二期目が始まる年に出版されてるのをみると政治的意図があるのかと勘ぐってしまうな〜w
・とはいえ今年からアカデミックに復帰しているようなので今後の活躍には期待しておきます。
・「人間にはこんなバイアスがあるよ」だけで終わってる行動経済学系のお話はもう飽き飽き。各種のバイアスをもとに、それがどんな意外な結果をもたらすかとか語ってほしいところ。。。
posted by Char-Freadman at 19:03| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつるんです

ネットを漂流すると、色んな炎上が散見される。ではどんなコンテンツが広がりがちでどんなコンテンツなら広がらないのだろう?それを調べている本があった。



Contagious: Why Things Catch On, by Jonah Berger

もちろん売り出しに成功しているものだけをみてもしかたない。失敗しているものを含めて比較しないと意味が無いのだ。事例と統計によって筆者は以下の6つの要因(STEPPS)があると説いていく;

1. イケてること(Social Currency)
その内容を話していると格好良く見えるような内容を語りたがるもの。良い印象をもたれたいのが人間というものだ。希少であったり排他的であったりすると、自分がその製品の仲間であると思うようになる。秘密にしてねと言われた「からこそ」ついしゃべってしまった経験は誰にでもあるだろう。そんな気持ちを利用して口コミで広まる秘密のバーがある。

2. 思い出しやすいこと(Triggers)
どれくらいの頻度でその製品のことを思い出すかも重要。「金曜日」、という曲は実際金曜日にyoutubeでの再生が伸びるし、コーヒーに関連づけることでキットカットは売り上げを伸ばした。何か話さないとな、と思ったときに頭の中にある内容を話すものなのだ。

3. 感情を呼び覚ますこと(Emotion)
科学的内容は理解できたとき畏怖を抱くもので、広まりやすい。どんな感情でも広まりやすいかというとそうではなく、特に怒りや笑いなど興奮状態になるような感情が鍵だ。悲しみをよぶようなものはダメで、とにかく興奮状態であればいいーー運動後であったり。

4. 目立つこと(Public)
実際に見えるようになっていることが肝要。他の人が並んでいる店なら美味しいのだろうと推測したり、他の人が投票している候補なら優れているだろうと思ったりしがち。ヒゲをのばすという前立腺ガンの寄付を募るキャンペーンは、「見える」からこそ成功したのだ。

5. 役に立つこと(Practical Value)
他人を助けたくなるのが人情というもの。他の人に役立ちそうな情報ほどシェアされやすい。どんなものに価値を見いだすかはプロスペクト理論で調べられている;割引を喧伝したいなら、$100を超えるような商品であればその絶対的な値引き価格を、$100を超えないような商品ならその相対的な値引率を伝えると、より価値のある情報であると思われるだろう。

6. お話になっていること(Stories)
お話は簡潔で教訓やたくさんのメッセージを含んでいる。とはいえそのメッセージを、売り込みたい製品に関連づけなくてはならない。無関係な情報は、伝達されるにつれ失われていってしまうのだ。

簡潔だしユーモアのある文体で実に読みやすい。各種紹介されているyoutube動画を確認するためネットサーフィンしながら読むのが推奨されます。

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・著者は経営系のトップジャーナルに載せまくっている気鋭の学者のようだ。
・本書自体STEPPSを意識して書かれてるのかな。実体験を盛り込んだり(Stories)、どんな製品でもこの要因を付ければ広がるよと言ったり(Practical Value)、そう思える箇所が節々に。



・【ネタバレ注意】
紹介されているyoutube動画、どれもおもろい。
http://www.youtube.com/watch?v=lAl28d6tbko
http://www.youtube.com/watch?v=nnsSUqgkDwU
http://www.youtube.com/watch?v=iYhCn0jf46U
http://www.youtube.com/watch?v=RxPZh4AnWyk
http://www.youtube.com/watch?v=YnBF6bv4Oe4
posted by Char-Freadman at 16:51| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月01日

幼児に投資しよう

アメリカの不平等度は近年いよいよ増している。大検獲得者ーー労働市場では高校中退と同程度のスキルしか発揮しないーーを除くと、高校を卒業できる男性の割合は減っているし、大卒者も減っている。 教育のある女性は初婚年齢が高く、子どもの数も少なく、養育に時間もお金もつぎ込むことが出来る。これでは格差は広がる一方だ。 こんな状況を変えるために、Heckmanは早期の教育に焦点をあてろと提言していく。

“Giving Kids a fair chance”, by James Heckman



認知能力以外の能力、たとえば心身の健康、注意深さ、やる気、自身といった点も人生の成功には欠かせない。 ランダム実験かつ長期の追跡調査であるペリー就学前教育計画およびAbecederian計画が明らかにするところによると、 認知能力もそれ以外の能力も、発達するのは幼児期で、しかも大人になってからも影響がある。IQはさほど高くならないものの、認知能力以外の能力は高まるのだ。政策が一番効果を出すのもこの時期だ。小中学校の教員を増やしたり、犯罪更正プログラムより、学費援助より、遥かに効果が高いのだ。
とはいえ、どうターゲットを絞るか、どんなプログラムにするか、いかに提供するか、支払いをどうするか、いかにプログラムを遵守させるか、早期教育の時期は過ぎてしまった青少年の子をどう扱うかといった問題は残っている。

識者からのコメントが載っている。貧者を就職で救うのも大事、母親に補助を与えるのも大事、政治的反対に遭うかもしれない、上記のプログラムはサンプルが少ないがより大規模な追実験(IHDP)では同じような結果は得られなかった、否認知的能力を上げることは可能、実行するには問題があるなど。そして、それらに反論を加えて〆となっている。

不平等および教育に関心のある方はぜひ!!!

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(関連)
・不平等解消に向けてアツいディベートがなされているこの本の続きか;


↑一橋の川口先生のとってもわかりやすい解説を発見;
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&ved=0CDEQFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.econ.hit-u.ac.jp%2F~kawaguch%2Fpapers%2Fkrueger%26heckman_review.pdf&ei=tTxZUaWRJtT1qwGZq4CgBA&usg=AFQjCNF3hHdfjNQYNJ_Pbk2rjqzsCnQIHQ&bvm=bv.44442042,d.aWM

Handbook of Labor Economics, Vol4の15章も似たような内容(下はゲート無し);
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0169721811024130
https://www.princeton.edu/~jcurrie/publications/galleys2.pdf

・本邦でも就学前教育が重要との指摘がされてますね;
http://blogos.com/article/57423/
posted by Char-Freadman at 17:01| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月27日

すごいおばちゃん

たまには読みやすい本を紹介しよう。

“Lean In”, by Sheryl Sandberg



男女差別は縮小傾向にあるとはいえ、まだまだ格差は大きい。自己主張は薄く、自己評価は低く、真の男女平等が達成されるにはいくつかの障害がある。著者は自身がキャリアを積んでいく上で重要だったことを述べていく。

女性は野心が欠けている。それは幼い頃から偏見を持たれてきているから;男は度胸、女は愛嬌。人は偏見にさらされると、そのとおりに行動してしまうもの。そうして「理数系の学問やら仕事ができないだろう」という考えが植え付けられてゆく。野心的に見えると嫌われてしまうことが多い。ワークライフバランスを迫られるのは女性ばかりーーでも、両親ともキャリアで成功している方がいいという証拠もある。恐れることなんて何も無く、もっと挑戦すると良いのだ。

偏見は根強く、インポスターシンドロームに陥ってしまう;自分の業績を自分の実力であると信じられないのだ。手を上げて発言することに消極的になり、機会を逃してしまう。女性が発言しやすいような環境を作ることが大事だし、女性自身ももっと自信を持ち積極的になることが肝要。

仕事での成功は、男性なら良いヤツと思われがちだけど、女性だと嫌なヤツだと思われがちという実験結果がある。誰からも好かれたいと思うのは自然な気持ちであり、嫌われたくないから交渉に臨みたくなくなってしまうのだ。この無意識の偏見を所与とするなら、自分のためではなく他の人のためでもあると強調したり、交渉の正当性を主張するといいだろう。

職歴はたとえるなら梯子ではなくジャングルジム;どんな方向にもいける。リスクを取り、成長する業界に飛び込み、笑顔で昇進機会をつかむといい。長期的な目標と、1年半でできる目標を持つこと。チームで出来る目標と、自分が学べるスキルは何かを考えるとよい。

相談相手がいることは重要であり、昇進に結びつく。 でも、眠れる森の美女のごとく相談相手が現れるのを待つのは間違い。仕事に打ち込むほど、良い指導者を見つけられるもの。とはいえ年長の男性と若い女性とが談話しているとあらぬ勘ぐりを受けることが多い。正規の相談プログラムを設けたりするとよいだろう。同僚も助けになる。

真実を知ったり告げたりするのは学ぶのには不可欠だけど、苦痛を伴う。公私の生活は曖昧で、たとえ仕事場でも感情を出すようにしても良いかも。

職歴を積むことを諦めるのが早すぎる。育児にかかるコストは確かに高いけれど、給与は働くほど高まるから、離れるのがあまりに早いともったいない。

職場で女性が偏見を持たれがちなのと同様、家庭では男性に偏見がもたれる。でも育児に夫が参加していた場合のほうが、カップルの幸福感も増えるし、子どもも発育がよい。対等な分担を望むなら関係の最初からそうするとよいだろう。

全部完璧にこなそうとしなくていい。仕事でも育児でも本当に重要なことに時間と労力をしぼるとよい。育児にかかりきりなほうが子どもが優秀になるという傾向は見られないし、家庭を離れるからといって罪悪感を覚える必要はないのだ。達成可能な目標を持ち、そこそこにやっていけばいい。

男女には行動やその認識のされ方で性差があり、現状を追認して男性のやり方に合わせているようでは社会は変わらない。70年代にフェミニストが終わらせた過去の問題と見るのは間違いで、依然として性差別は残っている。オープンに話せる環境を作るといいだろうーーセクハラを気にしすぎると、結婚や育児等のジェンダーの問題を職場で話すのもためらわれることになるからさじ加減は難しいけれど。

「ワークライフバランス」を考える人にお勧めですね。

(感想)
・本書を読み終わった人にはぜひhttp://leanin.org/およびhttp://www.facebook.com/leanincommunityを訪れてほしいとのこと。
・著者はLarry Summersの秘蔵っ子、ずっと華やかなキャリアを歩んできた人だ。自慢に満ちた啓発本かなぁ、と思ってたらとんでもない!「アカデミックな業績に基づいた主張→自身の経験を話す」という形になっており、意外にも社会科学に敬意が払われている。上記まとめだと省いちゃったけどユーモアに満ちた文体だった。
・TEDでスピーチしていたみたい;
http://www.ted.com/talks/sheryl_sandberg_why_we_have_too_few_women_leaders.html
日本語字幕がついてる!!!
・彼氏探しでも、「支えになってくれる人を探せ」とか言ってるけどそれはあんまうまくいく気がしないナァ。
・また役に立てようが無い知識が増えてしまった……。
posted by Char-Freadman at 12:45| 北京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月24日

伝統社会から学べること

伝統社会は小さな人数の集団からなる。複数の家族から構成されるほど小さなものから、政治リーダーのいる大きな集団まで様々だ。伝統社会と現代社会との最大の差は、出会う人々が見知らぬ人であるかどうかだ。本書は伝統社会から学べる点がいくつかあるのではないかと提言していく。

“The world until yesterday”, by Jared Diamond



1部は伝統社会の描写にあてる。それぞれ相互に不可侵の土地からなり、移動の自由は無い。そのため「知っている人なら味方であり、知っている敵がおり、知らない相手なら敵の可能性が高い」という認識が生じる。このため故郷を離れた土地のことは無知になる。
2部では問題解決の方法を探る。
刑事事件が生じた際、現代社会では国家権力が善悪を決め、被害者の家族への弔慰はそこそこにして加害者への懲罰が下される。いっぽう伝統社会では、今後も付き合いのある相手に対して以前の関係を取り戻すため、償いに重点が置かれている。伝統社会には欠点があるーーたとえば政治力のある集団の構成員なら交渉力を持つし、調停に失敗したら際限なく復讐がなされるーーとはいえ、調停をもっと利用したり、被害者と加害者が対面してお互いを人間であると認識するようなプロセスがあるとよいのではと提言される。
伝統社会は現代社会との接触があると変質してしまうため、研究は難しい。とはいえ直接観察、死体や武器など考古学的史料、古代の絵画を眺める、などの方法はある。「異なる政治集団に属する人たちの間で周期的に起きる、集団として対抗される暴力」が戦争と定義される。(というのも現代社会からしてみたら小規模すぎるため)死傷者の人数こそ小さいが、人口に占める割合からいったら非常に高い;二次大戦の期間の大国ですら伝統社会の平均のような死亡率なのだ。直接戦闘や急襲、だまし討ちといった戦術が用いられる。職業軍人がいるのが現代社会の特徴であり、伝統社会では老いも若きもすべてが戦闘員になる。リーダーがいないため、攻撃を協調させることができず、あまり効果的に攻めることはできない。伝統社会では全面戦争がなされ、資源に余裕も無いため皆殺しにされる。(生む機械として女は収奪されることもある。)戦争終結にも違いがあり、伝統社会では代表がいないため各々の復讐を抑えることができない。このため平和維持は不可能であり、すぐにまた紛争へと繋がる。現代では復讐心は恥ずべきものとされ隠すように教え込まれるが、伝統社会ではその逆で敵の殺害は褒めそやされる。

3部は幼児と老人の扱いについて。
栄養面から選択的に嬰児殺しや育児放棄がなされるし、出生時の死亡率は高いし、刃物や火などの危険物と遊んでいても放置され、戦争やセックスの真似事は幼いときから始める。これらは現代社会には受け入れられない習慣かもしれない。とはいえ、乳母車に押し込めるよりは親と同じ視線でものを見られるようにしたり、多くの人が疑似親の役割を果たしたり、赤ん坊とのふれあいを増やしたり、同い年以外の世代と遊ぶことで幼児の扱いに早いうちから慣れたり、出来合いの玩具をあげるよりは創造的な遊び方を促したりすることは、学んでもいい点かもしれない。数万年もの間実行されてきている方法ではあるのだから。
老人の価値は社会ごとに異なる;手工芸や子守りや生き字引として機能するのだ。極端な場合には、老人のみある食べ物の消費が許されるようなタブーがあったり、40歳以上になるまで男子の結婚を禁じ複数の妻を有するようなこともある。それらに比べるとアメリカ社会での老人の地位は低い;勤労を尊ぶので退職者は軽視され、個人主義が浸透し、若さへの固執がある。多くの人が故郷を離れるため、老境に至ると長年の友人や家族とともに過ごすことは困難になり、老人ホームで孤独な生活を送るようになってしまうのだ。子育てを手伝ったり、忘れ去られた経験の保有者として後進の育成に励み、経験が生かされるような分野で働くといいのではないかと提言されている。

4部は危険について。偏執的と思われるほど危険回避に備えるが、それは伝統社会の危険は死に結びつきやすく、小さな確率とはいえ無視できないものだから。話し好きなのは、ゴシップがテレビやラジオの代わりの娯楽という面もあるけれど、世界を理解し危険に備えるという面も大きいのだ。
社会はそれぞれ別の危険と直面している。伝統社会なら、猛獣や天候、暴力や飢饉に備える必要がある。現代社会ではリスク評価が甘くなっているかもしれない。というのもリスクに備えることに慣れすぎていたり、危険な状態から得る便益が大きかったり、自分の手でコントロールできるものはリスクが少ないという錯誤を持ったり(例えば運転)、果てはリスキーな行動を好んだりもする。

5部は宗教、言語、健康について。
超自然的な存在がおり、同じ信念を共有する仲間の社会運動となり、その所属にはコストが伴い、実践的規範を持ち、神は正しい行いにより現実に介入してくれる、これらの要素を持つものが宗教。これは因果関係を解釈しようとする能力の副産物。世界の説明を与え、不安を解消し、人生に意味を与え、組織を作り遵法精神を育み、よそ者へも友好的に接するようにし、戦争を正当化し(伝統社会ではその正当化に宗教を必要としない!)、シグナルとなる。スキルを育んだり出産を奨励したり、あるいは他宗教からの改宗に成功したりする宗教が、結果的には普及することになる。

多くの言語は絶滅の危機に瀕している。多国語が話せると、ルールが頻繁に変わるような場合にも適切な行動が取れるようになる;老人になった際もアルツハイマーに罹る可能性が大きく減る。これらのメリットを考えると、言語を残そうとしてみてもいいかもしれない。

現代社会の死因の多くは非感染性の病気。塩の取り過ぎは高血圧など体の不調をもたらし、砂糖の取り過ぎは2型の糖尿病の原因となる。西洋式の生活は狩猟中心の生活に適したヒトには不都合。運動し、ゆっくり食べ、新鮮で脂肪分の低い食品を取ることが重要。

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(おまけ)
・中央集権というか西洋からの介入を示唆する危険な思想だとして伝統社会を重視する人たちからは総批判を浴びている模様;
http://www.livinganthropologically.com/2013/02/06/yanomami-science-violence-empirical-data-facts/

危険な地域に住みたければ住んでればいいんじゃないでしょうかね。伝統社会の方があぶねーよっていう指摘は他の人もするところで…;



・ジャレドダイアモンドが複数の社会を調べているのは、「歴史に対してそれぞれの社会は実験結果と見ることができる」という発想から。こんな本も編集している;



とはいえ対照群と実験群を分けるのは難しいよねえ…。

・国家建設に関しての議論はちょっと苦しいとの批判も;
http://www.democracyjournal.org/28/past-perfect.php

地理は繁栄の直接的原因だとするダイヤモンドに関し、いやいや全員参加型の制度があるときにのみ効いてくるよと言いたげ。

(感想)
・カントが「世界平和のために」で移動の自由が啓蒙には重要だとか言っていて当たり前じゃねとか昔思ったのだけど、彼の生きていた頃にしてみたらずいぶん先駆けた発想だったのかもしれない。

・遺伝子と文化は共進化するとの証拠もあるようだけど(たとえば乳糖を分解する酵素は酪農が盛んな地域生まれの人には備わっている)、友情という神経反応もそうだったりするんだろうか?私が友人を作れるのも、中央集権がなされて大規模人数からなる集団が1000年以上続いたおかげなのかなぁ、などと。

・ダイヤモンドの主張する「家畜化できる動物の分布やら植物の分布やらは繁栄の直接的原因」というのは先史時代〜産業革命には成り立つけど、産業革命以降はAcemogluらの主張するような「全員参加型の制度が繁栄の原因」という仮説が成り立つとして総括してはいかんのかな?(そりゃ後付けで科学的態度じゃねーよ、という声が自分の中からも聞こえてくるけど…)

・この本の最大の貢献は「制度比較する際のサンプルを増やした」ことかも。いかなる制度が発展に効いてくるか考慮したい際、国家や部族未満の集団で暮らす人たちのことってあんまり議論の俎上にのぼらなかったわけで。
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2013年02月04日

オーストラリアの繁栄

好きな経済史シリーズ(ココ:http://press.princeton.edu/catalogs/series/pehww.html)、オーストラリアの経済発展について調べた本が出版されていた。

"Why Australia Prospered: : The Shifting Sources of Economic Growth",by Ian Mclean



19世紀後半にイギリスを抜いてから第一次世界大戦後にアメリカに追い抜かれるまで世界一発展していたこと、そして150年もの長期間先進国の仲間で居続けていること、それらがこの地域の特性となっている。成長に適した地形とは言いにくいし、また「資源の呪い」ーー資源は為替相場や政治を悪化させて発展の妨げになるという理屈ーーからも例外となっている。歴史を比較し、その理由を考察するのが主な目的だ。

オーストラリアの盛衰は概ね世界経済の盛衰と軌を一にしてきた。例外は深刻な打撃をもたらした1890年から1904年までの期間くらいである。

アボリジニは狩猟採集民であり、イギリス人の入植時には広大な大陸の人口密度は非常に低かった。搾取の対象になるような蓄積された資本はなく、複製可能な資源はなかった。南米やインドで宗主国が現地の余剰を奪ったのとは対照的に、最初から自給をする必要にかられた。焼き畑農業が牧草地を提供したこととや、労働集約的な業務に適していたこと、またオーストラリアという地に詳しかったことが、その後の発展に寄与した。またニュージーランドのマオリは定住農耕民族であり対決姿勢をとったこととも対照的に、アボリジニは入植地の労働市場に参入した。
イギリスの流刑地として二つの経済をもっていた; 受刑者の強制労働と、それ以外の自由な経済活動だ。数々のインフラ建設に適した人材(=若い男)が選ばれた。文学の上では過酷な労働環境が多く描写されるもののそれは例外的。法的権利が全くない奴隷とは異なり、雇用者からの劣悪な扱いに抵抗する権利はあった。
入植後は英国政府の補助金によって発展を続けたが、羊毛業の進展に従い自力で成長するようになった。距離の近い地域で貿易がなされるという「重力モデル」の例外となっている。

羊毛業は、労働力と資本が少なく土地は豊富にあるというオーストラリアの条件に即して進展した。船に積み込みやすく、また羊は肉にもなった。遠隔地間の商売を仲介するため金融の発展も促した。
政治権力はオーストラリア総督から植民地へと移った。政治闘争には3つの主体がいた;イギリス政府とその代理人、不法または合法にオーストラリアに住み着いた大土地所有者たち、そして賃金労働者たちだ。大土地所有者は土地の自由な利用を合法化するのを求めた。賃金労働者たちは大土地所有者の土地の独占及び受刑者の受け入れに反対し続けた。

ゴールドラッシュには長期的な影響があった;移民、特に若者が非常に増えたのだ。これはたとえばメルボルンの急速な都市化を促し、また地方の産業も発展させた。セレクション(selection)と呼ばれる小区画農地を払い下げられた小農が増え、大牧場主(squatter)との対立が激化した。地方では羊毛が栄え、貿易により利益を得た。

1890年にはバブルがはじけ、長く続く深刻な打撃となった。海外投資が減り、消費は冷え込んだ。長期的な旱魃も打撃となった。債務の繰り延べができたし通貨の切り下げができたアルゼンチンとは異なり、オーストラリアでは1901年まで国家が存在しなかった。このように、対処に失敗したことも要因の一つ。大土地所有の農業が発展した南米とは異なり、オーストラリアの牧羊業では次第に人力の必要性が減っていった。

第二次大戦に至るまで、長期の不況に見舞われた。これはオーストラリアでグローバル化が進んでいた結果であり、戦争により貿易がなされなくなったため。また戦費調達の際に借り入れた分の返済にも苦しんでもいた。

太平洋戦争以降は1970年代に至るまで黄金期を迎えた。戦争により抑えられていた投資や消費が活性化し、朝鮮特需によりウールの価格が伸び、また東アジア各地(特に日本)が成長して需要が伸びていったのだ。東アジアは原料は少ないものの労働力は豊富であり、オーストラリアとは補完的な関係になっている。

70年代以降は他の先進国と同じく賃金上昇やインフレに苦しんだ。とはいえ更なる経済の自由化を目指して政策の転換がなされ、90年代以降の成長の土壌は育まれた。オーストラリアの歴史は、その時々の環境の変化に対し政策を適合させることの重要性を私たちに教えてくれる。

経済史や経済成長論に興味のある方は是非!

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(やっつけ整理)
・何で経済学者が歴史とか政治制度とか気にするの?
→単純なソローモデルを考えると経済成長率は収斂するはずで、発展途上国は先進国に追いついても良さそうなもの。ところがなかなかそうはならず、んじゃ何ででしょうという。本書の二章にも成長論の簡単なおさらいが載ってる。
乳児死亡率の高い地域では搾取するような制度ができて、それが低い地域では全員参加の政治制度ができ、その制度の差が経済発展の差になるみたいなお話(A,J&R AER2001)からの流れになってる。

概ね以下の3つの派閥がある;

1. 地理要因が成長に「直接」効くよ仮説
マラリアや海岸への距離が経済発展には効くかも。(Sachs JD, Malaney P. 2002. The economic and social burden of malaria. Nature. 415:680–85)

2. 政治制度が重要だよ仮説;地理要因は「制度を通じてのみ」発展に効いてくるよ
2-1. 参政権重視派
奴隷を使えない地域だと、各人に権利を持たせて発展するほかない。みんなが参加できる政治制度のときだけ、持続的な発展および成長に適した技術の導入が図られる。
http://whynationsfail.com/

2-2. 司法制度重視派
英米法の地域は市場参加者への保護が手厚く、より成長している。(La Porta R, Lopez-de-Silanes F, Shleifer A, Vishny R. 1997. Legal determinants of external finance. J. Financ. 52:1131–50)

3. 人が重要だよ仮説
「ヨーロッパからの植民が成長に効いているらしい(A,J&R 2001)」といっても、「ヨーロッパ人は既に技術やら教育やらの水準が高かった」からという可能性は排除できない。(Glaeser EL, La Porta R, Lopez-De-Silanes F, Shleifer A. 2004.Do institutions cause growth? J. Econ. Growth 9:271–303)
世代によって受け継がれていくナニカ(文化)が発展には効いているかもしれない。遺伝的に離れている集団には何らかの障壁があり、発展を阻害している。(Spolaore, Enrico and Romain Wacziarg. 2009. "The Di.usion of Development." Quarterly Journal of Economics 124 (2): 469-529.)
遺伝的多様性自体にトレードオフがあるかも。多様すぎると紛争の種、一様だとアイデアがない(Asraf, Galor AER 2013, The “Out of Africa” Hypothesis, Human Genetic Diversity, and Comparative Economic Development)
↑人類学者から批判が殺到しているようですが、、、;http://www.jstor.org/stable/10.1086/669034

あたかも実験しているかのような、うまい比較方法を考えたもん勝ちの世界ですね!

(感想)
*イギリス:初の経済発展
*日本:欧米以外で初の経済発展
*アフリカ:失敗国家
*南米:かつての先進国、でも落ちぶれた
*オーストラリア:「ずっと」先進国←New!
どこの地域も例外的に思えてきた!^O^

・本書は地理学派かな?時代によっては地理が直接成長に効くよという。特定地域を取り上げると、それなりに説明力があるように見えるのう・・・。

・不法占拠者に権利を認めれば発展が促されるというロジックにはよく出会うので、今回はそれが逆なので新鮮。なるほど牧草地の所有者は大土地利用になって不平等化が促進されてしまうからか。北米の不法占拠者とは状況が違ったようだ。

・白豪主義には潔いほど触れていない。発展には関係ないってことかな?
posted by Char-Freadman at 07:59| 北京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月03日

組織

現代人の多くは、愛しい家族と過ごすより仕事に費やす時間のほうが長い。それならより快適に働けるようにしたいもの。本書は、組織がどうしたら上手く動いてくれるか考察していく。

"The Org", by Raymond Fisman and Tim Sullivan



組織はそもそもどうして存在するのだろう?一人で原料調達から販売まで全ての行程をこなす売れっ子眼鏡アーティストを見ていると、組織をたてて事業を拡大すれば良いのにと思うかもしれない。市場を利用するにもコストがかかる。様々な業務のコーディネートを市場により行うか組織で行うか、適切なほうが選ばれると看破したのはロナルド・コースだった。パロアルトが今日知識の集積場となるのに貢献したヒューレット・パッカードでの働き方は、かつてHP wayとしてもてはやされたもの;従業員の自立性を重んじていた。とはいえ大企業になるにつれ、官僚的になっていってしまった。創造性を保ちたいために職人になることもありえる。

人は評価される軸では頑張るけれど、そうでなければだらけてしまうもの。賃金を業績に連動させるべきと言うは易し、けれどたとえば警察業務は広範に及ぶ。交通規制や薬物取り締まりや殺人事件など、どれも重要なのだ。課をわけて分業すれば良いと思うかもしれないけれど、それぞれの業務には関連性がある。

組織内で正しく動機付けするのは重要。衆生の救済を目指す教会ですら、牧師間で昇進競争させたり、金銭的に釣ったりする。米国の主な宗派であるメソジスト派では、新しく信徒を獲得したら月給が伸びたり、または同僚の牧師から信徒を奪ったりすると得になるように制度設計されているのだ(!)いわんや魂の救済ではなく利益第一な企業で正しく動機付けるのはなお大変。P&Gは成長を続ける成功企業ではあるけど、各人の利益衝突を減らすため事業形態は試行錯誤が続いている。

生死がかかる軍隊において、情報の素早い伝達はことに重要。上意下達は軍隊にあっては生存率を上げ、企業にあってはコスト減をなす。とはいえ創造性を潰すことにはなるので、バランスが重要。ときにはスカンクワークスのように特殊な部門を作るのもありかもしれない。

経営は本当に役に立っているのだろうか?この問いに真摯に向き合った研究がある(http://www.stanford.edu/~nbloom/DMM.pdf)。コンサル会社のアクセンチュアにインドの織物業者をランダムに選び経営指南させるという内容であり、その結果生産性が伸びたというものだ。

CEOの仕事は戦略策定に重要な情報を下部組織から抽出することであり、業務時間の大半は会議に出ることによって費やされている。情報技術は確かに伸びたものの、必要な情報を拾い上げ、また誤解なく意図が伝わるようにすることは、会議にしかできないことなのだ。CEO西化できないこと、それは全体像をつかむこと。彼らは同業他者より抜群に優れているわけではないものの、その両肩にかかっている利益は莫大なものなので、年俸はとても高くなる。CEOを株主のためにしっかり働かせるのは大変であり、よりよい経営者にバトンタッチしやすくさせるというメリットをもつゴールデンパラシュートもしばしば批判の的となっている。

右側通行から左側通行にいきなり変えるのは難しい。文化は経路依存性をもち、人々がどう予想するかの焦点となる。組織を変えるためにわざと危機を迎えることもある。

BPはコスト削減に重きを置くあまり、安全性を無視してしまった。その結果メキシコ湾原油流出事故に至った。FBIはそもそも組織犯罪に対抗するものであったが、9.11以降はテロリスト対策も行うようになっている。両方の目的を追うのは大変であり、トレードオフには気を配らねばならない。

組織を考察したい方はどうぞ!

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(感想)
・軍隊ネタ多いけど、ミリタリーオタクなのかなぁ・・・w
・著者のR.Fismanはネタ志向の経済学者として有名で、たとえば犯罪捜査に計量経済を利用できるんじゃないかって提唱している;武器売買が禁止されているはずのエリアで紛争が起きたとき、前もって軍事会社の株が伸びてたらおかしくねえ?とか。



あとは文化が腐敗に影響するかどうか検討する際、外交官特権を利用している;腐敗している国から来ている外交官ほど特権を行使して駐車し放題だったり。とにかく比較方法を考えだすのが上手く、頭の中がどうなってるのか気になる御仁。それだけに本書でも実験っぽいネタが面白かったかな。5章とか。

・組織の経済学、ハンドブックが出ていたようだ。



流行ってるのか、はたまたハンドブックが出るほど整理されてきていて参入するのは無謀なのか。さて。
posted by Char-Freadman at 01:40| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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