“Lean In”, by Sheryl Sandberg
男女差別は縮小傾向にあるとはいえ、まだまだ格差は大きい。自己主張は薄く、自己評価は低く、真の男女平等が達成されるにはいくつかの障害がある。著者は自身がキャリアを積んでいく上で重要だったことを述べていく。
女性は野心が欠けている。それは幼い頃から偏見を持たれてきているから;男は度胸、女は愛嬌。人は偏見にさらされると、そのとおりに行動してしまうもの。そうして「理数系の学問やら仕事ができないだろう」という考えが植え付けられてゆく。野心的に見えると嫌われてしまうことが多い。ワークライフバランスを迫られるのは女性ばかりーーでも、両親ともキャリアで成功している方がいいという証拠もある。恐れることなんて何も無く、もっと挑戦すると良いのだ。
偏見は根強く、インポスターシンドロームに陥ってしまう;自分の業績を自分の実力であると信じられないのだ。手を上げて発言することに消極的になり、機会を逃してしまう。女性が発言しやすいような環境を作ることが大事だし、女性自身ももっと自信を持ち積極的になることが肝要。
仕事での成功は、男性なら良いヤツと思われがちだけど、女性だと嫌なヤツだと思われがちという実験結果がある。誰からも好かれたいと思うのは自然な気持ちであり、嫌われたくないから交渉に臨みたくなくなってしまうのだ。この無意識の偏見を所与とするなら、自分のためではなく他の人のためでもあると強調したり、交渉の正当性を主張するといいだろう。
職歴はたとえるなら梯子ではなくジャングルジム;どんな方向にもいける。リスクを取り、成長する業界に飛び込み、笑顔で昇進機会をつかむといい。長期的な目標と、1年半でできる目標を持つこと。チームで出来る目標と、自分が学べるスキルは何かを考えるとよい。
相談相手がいることは重要であり、昇進に結びつく。 でも、眠れる森の美女のごとく相談相手が現れるのを待つのは間違い。仕事に打ち込むほど、良い指導者を見つけられるもの。とはいえ年長の男性と若い女性とが談話しているとあらぬ勘ぐりを受けることが多い。正規の相談プログラムを設けたりするとよいだろう。同僚も助けになる。
真実を知ったり告げたりするのは学ぶのには不可欠だけど、苦痛を伴う。公私の生活は曖昧で、たとえ仕事場でも感情を出すようにしても良いかも。
職歴を積むことを諦めるのが早すぎる。育児にかかるコストは確かに高いけれど、給与は働くほど高まるから、離れるのがあまりに早いともったいない。
職場で女性が偏見を持たれがちなのと同様、家庭では男性に偏見がもたれる。でも育児に夫が参加していた場合のほうが、カップルの幸福感も増えるし、子どもも発育がよい。対等な分担を望むなら関係の最初からそうするとよいだろう。
全部完璧にこなそうとしなくていい。仕事でも育児でも本当に重要なことに時間と労力をしぼるとよい。育児にかかりきりなほうが子どもが優秀になるという傾向は見られないし、家庭を離れるからといって罪悪感を覚える必要はないのだ。達成可能な目標を持ち、そこそこにやっていけばいい。
男女には行動やその認識のされ方で性差があり、現状を追認して男性のやり方に合わせているようでは社会は変わらない。70年代にフェミニストが終わらせた過去の問題と見るのは間違いで、依然として性差別は残っている。オープンに話せる環境を作るといいだろうーーセクハラを気にしすぎると、結婚や育児等のジェンダーの問題を職場で話すのもためらわれることになるからさじ加減は難しいけれど。
「ワークライフバランス」を考える人にお勧めですね。
(感想)
・本書を読み終わった人にはぜひhttp://leanin.org/およびhttp://www.facebook.com/leanincommunityを訪れてほしいとのこと。
・著者はLarry Summersの秘蔵っ子、ずっと華やかなキャリアを歩んできた人だ。自慢に満ちた啓発本かなぁ、と思ってたらとんでもない!「アカデミックな業績に基づいた主張→自身の経験を話す」という形になっており、意外にも社会科学に敬意が払われている。上記まとめだと省いちゃったけどユーモアに満ちた文体だった。
・TEDでスピーチしていたみたい;
http://www.ted.com/talks/sheryl_sandberg_why_we_have_too_few_women_leaders.html
日本語字幕がついてる!!!
・彼氏探しでも、「支えになってくれる人を探せ」とか言ってるけどそれはあんまうまくいく気がしないナァ。
・また役に立てようが無い知識が増えてしまった……。