Turnaround: Third World Lessons for First World Growth, by Peter Blair Henry
ある政策が効くか否かの評価は確かに難しい。とはいえ、投資家はたいてい合理的な判断を下すから、当該国の株式市場が政策変化に対しいかに反応したかを見ていこうというのが本書を特徴付ける主な手法だ。
たとえばカリブ諸国が財政破綻にあたり固定為替の維持とともに賃下げを選んだときも、ブラジルがインフレ対策で物価連動型の賃金体制を捨てたときも、中位所得国が従属理論を捨て輸出志向型工業化を目指したときも、株式市場は短期のコストより長期の便益を予期して株価は上昇した。そこでキーとなったのは「政策が規律付けられていた」ことで、各国が直面する状況は違えど規律は先進国にとっても重要であるとみている。
資本の自由化はしばしば非難の的になるけど、よくみてみれば、株式市場の開放は外資の導入に繋がり好影響をもたらす。債務超過になってしまうのは、必要な資本を外債でまかなうようにしたときなのだ。
ある国が債務超過に陥った場合、救うべきかそれとも見捨てるべきかは、それぞれ理論的には正当化しうる;貸し手が協調して債務を減免してあげればその後ちゃんと成長するかもしれないし、はたまたその後のモラルハザードを助長するかもしれない。さて事例をみてみると、中位所得国に関しては救ってあげた方が良さそうだ。とはいえより発展の度合いの低い国ではそうではない。債務減免以外の手法、たとえばバナジーやデュフロが主張するようなthinking smallが必要になるだろう。
もちろん先進国たる日本でも規律は重要でしょうね!
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(感想)
・途中までみんな知ってることばっかで投げようかと思ったけど、後半はよくできていた。特に株式の自由化はよくって負債はダメってところは意外で新鮮。
・負債のGDP比が9割を超えると低成長に繋がるという論文に瑕疵が見つかったという最近の事件を思い出した;
http://www.bloomberg.com/news/2013-04-28/refereeing-the-reinhart-rogoff-debate.html