2013年05月20日

新しい金ぴか時代

所得格差の拡大が指摘されて久しい。いま、世界は二つの「金ぴか時代」を迎えているーー発展途上国も先進国も、ともに。19世紀末に泥棒男爵が経済を席巻していたのと似たような状況なのが前者であり、グローバル化による低賃金労働力との競争と機械化による人員削減に曝されているのが後者だ。本書は古今の実務家がいかなる生態であるのかを描写してゆく。

Crystia Freeland, "Plutocrats: The Rise of the New Global Super-Rich and the Fall of Everyone Else"



かつて所得階層の最上段を占めたのは大地主だったが、現在では高い報酬を受け取る労働者だ。ウォールストリートのトップたちは、その社内の働き手と比べても遥かに高い給与を受け取っている。トップ1%内部でも競争は激しく、トップ0.1%との差は拡大していっている。教育への熱は高く大学入学への競争は激しい。技術やアイデアが利益の源泉だ。その資金を活かして政治的に影響も持っている。

デジタル技術が進化し商品を広めるのが容易になった現在では、スーパースター現象が生じやすくなっている。かつての歌姫、エリザベス・ビリントンが不可能だったほどたくさんの人に歌を聴いてもらうことが可能になっているのだ。ほんの少しの能力の差が大きな収入の差を生み出してしまっている。

大きな社会変革の波に乗ることも重要だ;ロシアの新興財閥はみなソビエト崩壊時のバウチャーにより富を成した。彼らは数物系の専攻のエリートではあるものの、ソビエト社会主義の本流からは離れていた人たちだった。中国の自由化でも、経済特区にいち早く駆け込んだ人が財を成している。

社会の流動性が失われつつある危険を指摘し、結語としている。

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(感想)
・ジャーナリストだけあって経済学の論文と実務家の逸話を同時に語るのがうまい。学術ネタに聞き飽きてる人は逸話を、創業者の偉そうな話にウンザリしてる人は学術で大きな流れを、といった別種の楽しみ方ができそうだ。
・本書は2013年度のライオネル・ゲルバー賞を受賞しているみたい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E8%B3%9E
他にも面白そうな本がたくさん!
posted by Char-Freadman at 19:45| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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