2020年05月19日

最近の差別の経済学

最近の差別の経済学

Race Discrimination: An Economic Perspective
Kevin Lang, Ariella Kahn-Lang Spitzer
Journal of Economic Perspectives
vol. 34, no. 2, Spring 2020 (pp. 68-89)
https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/jep.34.2.68

労働市場で白人と黒人の格差は大きく、黒人は白人より28%収入が少ない。伝統的には回帰式で年齢や教育と人種を変数にして賃金を説明しようとしてきたが、これだと人種の係数は説明できない差としか意味しない。またいくつかの変数は過去の差別の表れでもある、例えば親の収入を調整すれば人種格差を縮めるが、低い水準の黒人親の収入はその世代での差別の表れだろう。統計的に綺麗に扱うため細かく状況を分けて調べられている。
雇用者からの差別の調査には監査研究というものがある。似たような履歴を持つ白人と黒人を比較すると芋のだ。でもこれは完全には似たような経歴を揃えきれないので差別以外のものを拾ってしまう恐れがある。この問題を避けるために応対研究というものが行われている。名前を黒人にしてそれ以外は架空の履歴書を送りつけ面接に呼ばれるか見るというものだ。とはいえ名前は社会階層を示している可能性がある。生誕地を調整すると黒人ぽい名前とそうでない名前に差が生まれないという結果がある。同一企業内での差を見るという方針もある。小売業のアウトレットで白人の管理職は黒人の管理職と比べ特に南部で白人を雇い黒人を雇わないという傾向がある。これは管理職による差別か、管理職と労働者が同じ人種だとシナジーが起きているということか、雇用ネットワークに差があることか、労働者が同じ人種の管理職を求めているという可能性ができそうだ。後者三つの効果は見当たらない。
黒人は同僚から差別を受けている。同僚が同じ人種だと辞めにくいという結果がある。同じ人種と働けるなら8%まで時給を下げていいという結果がある。
顧客からも差別を受ける。架空のスポーツゲームだと白人も非白人もドラフトやトレードで選ばれるが、客と従業員が相対する場合は違う結果が起きる。薄い肌の黒人と白人の売春婦にはプレミアがつき、シンガポールでは黒い肌の顧客に対し差別がある。黒人のタクシー運転手にはチップが減る。白人が多い地域で黒人が雇われると小売の売り上げが減るがヒスパニックが増えると少し売り上げは増える。アジア系言語しか喋れない人が多い地域でアジア系を雇うと売り上げは増える。黒人が営業しているとipodナノは購入されない。商品の信頼度を人種や民族から推測しているのだろう。
以上の研究は統計上の利便性からどれも限定された環境を調べている。どれくらい労働市場一般において影響をもたらしているかは不明だ。
刑事においても黒人は差別を受けている。黒人は白人より警官に呼び止められやすい。犯罪は黒人コミュニティで多く生じているが場所を調整しても黒人は職質を受けやすい。アウトカムモデルという調べ方がある。差別がなければ、呼び止められた運転手は白人でも黒人でも同じくらいの確率で間違っていることが判明するはずだ。もし差があれば差別があるということになる。でもこれはギリギリ呼び止められた人に関してしか通用しない考え方であり、例えばマリファナを持っている平均的な確率を単純に比較することはできない。黒人とヒスパニックについては呼び止める敷居は低い。夕闇のベールという考え方もある。夜になると人種がわかりにくくなるので差別があるなら日中に生じているという発想だ。道が明るいと黒人は白人に比べ呼び止められやすい。関連する特徴を調整すると射殺される確率には差がないという結果もあるが記録のつき方にバイアスがあるという意見もある。
法廷でも黒人は差別を受けており、保釈金なしで保釈されるより保釈金を支払ってから保釈される可能性が高い。ただこれは被疑者の特徴を捉えきれていないだけなのかもしれず、また黒人は弁護士に頼れずうまく法システムを利用できていないからかもしれない。法廷調査でもアウトカムモデルは利用されていて、ギリギリ保釈された黒人の被疑者は白人のそれに比べ不行跡の確率が低い。懲役の長さについての証拠は少ない。
好みによる偏見は市場が駆逐するという考え方がある。偏見がない方が比較的低賃金で生産的な労働者を雇用でき、どんどん拡大するから黒人への需要は上がり賃金も上がるという話だ。賃金の格差は、偏見を持っている雇用者がどれだけいるかと、市場が黒人労働者の配分についてどれだけ柔軟性があるかにかかってくることになる。市場に摩擦があり賃金が競争的に設定されないなら生産的な黒人労働者は平等に支払われる職に就けず偏見のある企業は利潤が低いわけではないということになり差別は消えないということになる。
調査で人種差別の度合いが高いところは賃金格差が見られる。暗黙の連想テストを行い偏見の度合いを確かめると、偏見のある管理職に配置されると北アフリカ人は時間外勤務を命じられにくかった。またのんびり働きサボりがちとなった。速度超過の運転手は警官が見逃してくれるとき罰則が跳ね上がる敷居のちょっと下として記録されることになるが、黒人運転手は白人に比べそういう記録は少ない。
統計的差別は合理的差別と呼ばれる。これは自己実現的になることもある。投資して鍛えても企業から報われないと思っていればそうはしなくなる。黒人の生産性が低いと間違って思っている場合は好みに基づく差別と同様の状況が生じる。しかし情報を与えると反応は異なる。人種に相関する特徴の情報を与えると差別を減らすことができる。犯罪歴を雇用にあたり聞いてはならないという規制ができると、企業は黒人を潜在的な犯罪者だと思うようになり雇わなくなった。ただし情報を与えると、雇われていない人たちのプールは品質が下がることになるので長期的な影響としてはどうなるかわからない。アルゴリズムは意思決定のバイアスを減らせると言われているが人のバイアスをそのまま示すこともある。
色々な段階で差別は生じシステムと化しているので全体としての理解を深めるのが重要なのだ。接触をすることでそれが減らせるなど明るい話もある。
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2020年05月14日

困難な時期にこそ良質な経済学的分析をしよう!

Good Economics for Hard Times
Abhijit Banerjee, Esther Duflo

Good Economics for Hard Times - Banerjee, Abhijit V., Duflo, Esther
Good Economics for Hard Times - Banerjee, Abhijit V., Duflo, Esther

アメリカでも経済学者はあまり信用されていない。間違えることもあるけど、最新の知見の考え方の筋道を共有しようというのが本書の狙いだ。
移民に関する一般人の認識は間違いだらけだ。そもそもあまりおらず、欧州でも数%に過ぎない。働かず政府の負担となっているわけでもない。移民は国際的に見ればそこまで貧しくはない中東やメキシコから来ているがこれは経済的な繁栄を求めているわけではなく、紛争で故郷が耐えられない状況になっているから。移住くじを当てた人はかなり収入を伸ばす。噴火の影響で家が破壊された例をみるとそういう人はむしろ収入が伸びている。移民が受け入れ国の労働者の賃金に与える影響は小さい。これは移民がカネを落とし需要が増し、機械化を遅らせ、新しい雇用先が生まれ、競合しない職に就くため。同僚とうまくやれるかなど色々な色々な点を考慮しなくてはならないので採用活動は難しい。すでに雇われている労働者は移民に対して有利となる。移民はネットワークを持っていて職の斡旋等も行うが、それに参加できない人は悪質だと思われてしまうという逆選択が生じてしまう。インフラが足りず高層建築が禁止される都市では移住者にはスラムしか選択肢がない。家族農業が都市移住を損なう可能性もある。地方の人は移住先での賃金と死亡リスクのどちらも過大評価している。アメリカはどんどん成功しづらくなってきており、ブームが起きている都市もゾーニングで地価が高騰しすぎ貧しい人には住める場所ではなくなっている。移住の問題はそれが多すぎることではなく少なすぎることで、正しい情報を与えたり失敗した場合の保険を作ったり職とマッチさせたり育児補助をして社会に溶け込むのを援助すべきだろう。
自由貿易のもとでは労働が豊富な国は労働集約的なものを作り、資本が豊富な国は資本集約的なものを作って取引が起きるだろう。パイは大きくなるが貧しい国の労働者は得をして富んだ国の労働者は損をすることになる。国際間比較ではこの理論をうまく示せていない。この理論は労働者が移動を自由に行うから賃金が一国内では一つに定まると仮定しているが実際には労働も資本も硬直的だ。銀行家は恐れて新規に貸さない。インドで国内比較をすると貿易に晒された場所ほど貧困率の削減が起きず児童労働の現象も起きなかったとわかる。企業も反応が遅く創造的破壊は起きない。商売ではたとえ安くてもよく知らない相手から買うことはなく評判がものをいうので、国際貿易で安さを売りにしてもなかなか頭角を現せない。企業は集積するのでその産業が悪化した際も急激に打撃を受ける。中国との競争にさらされた地域は雇用が落ち障害者給付に頼る人が増えてしまった。貿易論が仮定するようには政府からの失業補償は十分ではない。アメリカのような大国にとっては貿易は経済の2.3%を占めるにすぎないが小国にとっては大きな存在だ。鉄道網の整備は国内市場の統合を果たし大きな効果があった。米中貿易戦争では米国の農家が敗者になろう。中国がたくさん買っているからだ。貿易を辞めるのは現実的な解決策ではない。労働市場の硬直性を減らし、貿易で打撃を受けた企業を特定し特に老人のために雇用を続けている企業に補助金を与えるのがいいだろう。
人の選好は安定しているのでなぜそうなっているのかを問うても意義があまりないというのが経済学者の標準的な考え方だ。貧者は一見非合理的に動いているように思えても実は理由がある。選好は個人を取り巻く社会の影響を受けないという仮定を起き分析がなされる。集団所有にも理があるしカーストの規範は個人の合理的な反応で長続きしてしまう。好みによる差別や統計的差別が起き、自己充足的な差別も起きる。黒人は学術に秀でていないと思われていたらそのとおり振る舞う。勉強すると白人らしく振舞っていると思われてしまう。人の行動は環境や歴史に左右されるとした方が良さそうだ。人はすぐ敵と味方に境界線を引くし似た者同士でつるむしSNSは同じ意見を持った者同士でしか絡まない。分極化が進んでいる。ジャーナリストは減っている。人は情報源が歪んでいるとわかっていれば意見を矯正できるがアルゴリズムで無自覚のうちに与えられるとそうはならない。接触により人は仲良くなる。アファーマティブアクションへの嫌悪は高まっている。無理に統合しようとしても意味が薄い。インドで実験すると自分以外のカーストと戦った人は違うカーストと仲良くならなかった。誰と戦うかが重要なのだ。アメリカの都市では黒人の率が12-15%ほどになると白人の逃避が起きて分離が進む。これを防ぐには全ての地域に低所得者向け公営住宅を作るのがいいだろう。偏見は世界に良くないことが起きているとか世間から見捨てられていると思っている場合に自分の心を守る反応だ。だから人種差別的発言をしている人を見下してもむしろ世間から尊敬されていないという疑いを確信させ差別感情を助長してしまうだろう。偏見は絶対的な選好ではなく他のことも気にしている。人種や宗教を気にしているように見えても実際はただ政治に興味がないだけだったりするのだ。公的な議論の信憑性がどれだけあるか明らかにしていくのがいいだろう。
戦後30年間、欧米は輝かしい経済成長を遂げた。でもその後は鈍化した。3Dプリンタや機械学習など現在の革新は大して影響がないと見る人もいれば脳の老化の抑制に希望を見出す人もいる。GDPは市場で価格がつくものについて計算するので見落としがあるのかもしれない。facebookは中断すると価値をそれまでのようには感じなくなるという調査があるが価値があることには変わりない。成長理論だと均斉成長経路では労働と資本が同じ率で成長することになるが実際には貧しい国が富んだ国より早く成長し収斂するということは見られない。経済の最先端を走る国は政策ではその成長率を変えられない。企業は収穫逓減であったとしても知識は波及するので経済全体としては収穫逓減を避けうる。知識の集約が大事ということになると減税が重要に思えるが実際には減税しても経済成長は生じない。貧困は減っていて途上国に目を向け始めた人が増えている。でもどういう指針を取ればいいのかはわかっていない。新技術を導入すればいいというものではない。資源を一番うまく利用できるものに行き渡らないという誤配分の問題が大きいのが途上国だ。携帯電話の普及まで買い手と売り手がうまく繋がっていなかった。親類に経営を任せてしまいあまり競争圧力を感じていないのもその例だ。政府の職を求め何年も無為に過ごす若者もいる。年齢制限を厳しくしたり試験を受ける回数に制限をかけて教育のある労働者が私企業で働くよう後押しをすると良さそうだ。経済成長は必ずいつか鈍化し中位所得の罠にはまる国がある。よくわからないものを追いかけるより教育や健康面などわかりやすい目標を掲げて進歩するのがいいのだろう。
二酸化炭素の排出量が多いのは圧倒的に先進国だが気候変動は貧しい国に大打撃を与える。暑いと学習効果が下がり生産性も下がる。途上国はエアコンを買う余裕もない。エネルギー効率性の向上は工学者が楽観視してきたがそうは進展していない。エネルギー消費は習慣なので高い税がかかれば行動が変容するだろう。インドと中国では大気汚染で数百万人が亡くなっている。環境インフラを整備することで雇用を生み気候変動と戦うグリーンニューディールでは、再分配に使うなど炭素税は貧者を苦しめるものではなくエネルギー利用を適正にするものだと明らかにする必要があろう。
多くの産業で機械化が進展しているが新しい職を作り出すほどの生産性の向上があるわけではなく、ロボットが増えるほど失業者が増えている。どこまでが人かどこからがロボットかを見極めるのは難しく、ロボット税はこの状況を改善できないだろう。1980年代以降の英米では不平等化が進展したがこれは政治のせいというより経済の構造変化のためだろう。ネットワーク外部性を利用したスーパースター企業が勝者総取りしているという説もあるがデンマークや日本はそこまで不平等化が進んでいない。金融業にレントが発生して社長たちの給料もそれに引きずられて高騰している。税率は下がり勝ち組を讃える文化が広まった。パナマ文書が明らかにしたところによるとトップ0.01%の富豪は納税義務額の25~30%を脱税している。国際的に金融資産登録を行うという提案がなされている。富裕税や高い累進課税への支持が増えてきている。アメリカ人は欧州人に比べ所得の移動性について現実より過大評価している。自殺や薬やうつなど絶望の国になってしまっている。白人の負け組中年は人生がうまくいかなくても国のシステムではなくヒスパニックや黒人や中国人労働者を叩くようになっている。政府が信じられていない。
アメリカはOECDの中ではGDPに税収が占める割合がかなり低い方だ。実際には税率が高くても働き続けるのは金持ちも中間層も同じだが、有権者はもし税率が高いと人は働かなくなると信じている。政府のサービスは替えがきかず無駄を減らすのは困難だ。汚職はそれゆえ起きる。イタリアでは政府の調達のためにコンシップという組織が立ち上がったが市場より高い費用でしか調達できないにもかかわらず利用され続けた。これはこの組織と取引している限り政府は汚職の糾弾から逃れることができたからだ。透明性を重視しすぎると法の文面にこだわり意図をないがしろにする可能性があるのだ。役人を罵倒しても以下の理由から逆効果。政府の役割を拡大しようとしても必ず反対に遭うだろう、なぜなら信頼できない人には任せないからだ。政府に勤める人の質が下がるだろう。また意思決定を奪い創造性のない人ばかりが集まることにもなる。そして汚職に慣れきってしまう。不平等の象徴だったラテンアメリカ諸国は近年改善してきている。条件付き現金給付が教育水準の改善に役立っている。
一様所得保障(UBI)の導入の可能性は近年多くの国で論じられている。予算がかかるのが最大の欠点だ。貧者への福祉は目の敵にされてきたが、給付を受けると働かなくなるという証拠はない。負の所得税の社会実験でも労働が歪む効果は薄い。人は何がしか目的を持って行動していたいものなのだ。途上国では最低限必要な所得保障と教育水準向上のための条件付き現金給付を導入するのが妥当だろう。少し手間をかけて給付者が取りに来るようにするといい。先進国では解雇を柔軟に行えるようにすると同時に手厚い補償を与え、また再教育のできない老人を引き取って雇用してくれる企業を援助するのもいいだろう。ロボットには不向きな社交やケアが重要になろう。良い場所に住んだ子は教育水準が上がる。早期の教育は重要だ。働く貧困層のために児童のデイケアを援助したり老人をケアするのが良いだろう。人は適切な条件が揃えば生産的に働けるものだ。問題を解決してから働くというものではなく、労働自体が回復の一環でもある。人は尊厳を持つ存在なのだ。

・「移民は地元の労働者の経済状況を悪化させない」「自由貿易に晒された地域ほど苦しんでいる」「AI化が進展している地域ほど苦しんでいる」「給付で働かなくなるわけではない」などいくつか引っかかる主張があったので全部引用文献に目を通してたらめちゃくちゃ時間かかった〜!!!でも納得しました。
・とはいえ苦しい地域に補償金を与えるとか老人雇用支援で補助とかは頷けないかな。失われた20年で日本がやってたことでは?あんま効果なかったように言われてると思うのだけど。東芝みたいにゾンビ化するだけのような。
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2020年05月13日

課税と移住の関係

Taxation and Migration: Evidence and Policy Implications
Henrik Kleven, Camille Landais, Mathilde Muñoz, Stefanie Stantcheva
Journal of Economic Perspectives vol. 34, no. 2, Spring 2020 (pp. 119-42)

https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/jep.34.2.119

国や地域により税率と公共財の提供水準は異なり、人は移住に際しそれを考慮するだろう。ただデータは少なく実証が難しい。一つの方法としては賃金など手に入るものだけ使うというものがある。税率が上がった場所では賃金が上がらないといけないはずだ、なぜならそうでないとそこから人が逃げ出すからだ。実際税率と賃金の関係を見ると弾力性が-1でないとは言えない。ただし0でないとも言えない。近年は特定の人々を調べるという方針もある。サッカーや発明家は追跡しやすい。また移民データの詳しいスカンジナビア諸国が調べられている。移住は限界税率ではなく平均税率を考慮して行われるのでこれを計算し、またその他社会保険についても考慮する必要がある。また地元の労働市場の状況や公共財供給などその他の移住要素とは無関係に税率が変化している時期を見つける必要がある。所得上位層は限界税率と平均税率が一致しまた様々な税改革の対象となってきたので調べやすい。
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北欧は税率が高く外国人は優遇され優遇度合いにもばらつきがあるのだ。
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とはいえ所得トップに外人がいる国はトップに高い税率を課す国であり、移住を決めるのは各国特有の環境であるのがわかる。
DenDID.png
デンマークは1992年に外人優遇税制を導入したので前後でDIDが行えて、影響下にある高所得者の外人の移動性はそうでない層に比べ倍になとわかる。
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この移動性は産業ごとに異なる。自国民は動かない。
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アメリカのような大国でも合成コントロール法により同様に調査でき、1986年の税改正前後を見るとスター発明家の移動の弾力性が3にもなる。富や不動産についてのデータは少なく、フォーブズ400を見ると不動産税に反応するのは富の分布のトップ層であることがわかる。課税可能な富の弾力性も調べられている。パナマ文書で明らかになったのは富の上位0.01%は租税回避地に富を移動させるということだ。人よりカネの方が移動しやすい。各国が協調しない場合、生産性への波及や混雑を無視するなら最適な課税率は1/(1+η)でこれが税収を最大化する。ここでηは外国人の税と移動の弾力性を示す。弾力性はわかっているので様々な社会保障税を補正した上でこれで推計するとデンマークの実際の外国人への税率は最適課税率より高く、税収を上げるという目的のためだけでも正当化しうることがわかる。とはいえこの弾力性は制度が違えば変わりうるし近隣窮乏化政策になってしまう点にも留意する必要があろう。またある国が税を下げれば他の国も下げるという可能性も考慮せねばならない。また自国民は動かないのでこの最適税率は1になるが、あくまで以上の議論は外国人へ取り扱いを変える場合において関係する話である。政府間で協調できるなら、どのレベルでやるのかそしてどの財政政策に関して行うのかという点が重要だ。地区レベルだと国レベルより移動から受ける影響は大きく、国レベルだと公共財提供のために税収を増やす必要がある。また多様性のある地区だと累進課税が困難になる。近隣窮乏化策をやめ財政の外部性を内部化し住民の移動性が課す制約内において再分配の選好に基づき累進課税率を差別化することになろう。ある地域が大きく、制度間で税の協調があり、ビザ発給のしやすさやその他社会保障が寛大なら移動の弾力性は低くなる。
現状の研究は調べている対象が限られておりまた移動の弾力性は固定されたものではないので、より多くの人についてまた集積や公共財提供について移住がどう起きるか調べると良さそうだ。
posted by Char-Freadman at 11:06| 北京 | Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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