Income Segregation and Intergenerational Mobility Across Colleges in the United States
Raj Chetty, John N Friedman, Emmanuel Saez, Nicholas Turner, Danny Yagan
The Quarterly Journal of Economics,
https://academic.oup.com/qje/advance-article/doi/10.1093/qje/qjaa005/5741707
1980年から1991年生まれの子供につき社会保障番号と納税番号を把握し人種と親の納税額と郵便番号を把握する。またSATとACTの得点も利用する。大学は先行文献に従いアイビーリーグ+スタンフォード・MIT・シカゴ・デューク(以下アイビー+と呼ぶ)を頂点に5段階に分ける。

ハーバードの学生のうち所得下位20%家庭から来ているのは3%、所得上位20%家庭から来ているのは70%でこれはエリート私立に典型的な分布。

所得上位1%の家庭の子はアイビー+に入学する確率は所得下位のそれと比べ77倍になる。低所得の家庭の子は最強公立校のバークレー校より私立校のハーバード大に通う確率が低い。低所得者は授業料をあまり払わないでいいことを考えると低中位所得層がエリート私立校に通わない理由は授業料ではない。バークレー校も半分の学生は所得上位20%から来ている。所得による分離は、大学の名門度が上がるほど強く起きている。低所得家庭の子は入学する年齢が遅い。

住所と同じように大学入学についても所得により分離が起きている。アイビー+の学生は特に高所得に囲まれて育っている。アイビー+の低所得出身者は子供時代に比べより高所得な人に囲まれることになる。これは単に自分の近所の大学に通うから生じているわけではない。

親と子の所得階層の関係は大学に通うと薄くなる。高所得の家庭の子が所得上位20%に入る可能性は低所得家庭の子のそれと比べ40pp高いが大学に通うことを調整するとこの格差は20ppに縮まる。

同じ大学卒の低所得と高所得の家庭の子の収入差は学業成績では説明がつかない。高所得出身の人は働きがちで結婚しやすい。同じ大学卒だとそこまで差がないが大学間で比較すると差がある。低所得の人は低収入になる大学に通う。

貧困出身でも上位20%になる移動性が最も高いのはカリフォルニア州立大学ロサンゼルス校だ。公立大学では移動性が高い。

同じような特徴、例えば同じ立地でも移動性は大学によりばらつく。

所得上位1%になりやすいのはアイビー+の卒業生だ。人数が少なく寄付が多くSTEMの割合が高いのが特徴で、多様な移動性の高い大学と比べ同質的だ。低所得でSATやACTで高得点をあげる生徒は5%ほど。

地理要因と人種構成を所与として親の収入に中立で試験結果だけを元に学生を再分配すると所得での分離は63.9%薄まる。試験結果・地理要因・人種構成で生じる所得分離は36.1%で、出願方式や審査や親の収入での入学審査で生じる所得分離は63.9%ということ。アイビー+での分離も38%ほど縮まるが全体よりは小さい。

収入中立的な入学審査にしてもアイビー+に占める低所得層の割合は変わらないが中所得層の割合は27.8%から37.9%へ増す。現状では中流家庭が割りを食っている。分離を消すためには低所得層がSATで160点高い点を取る必要がある。現状行われているような卒業生の子弟優遇を低所得層出身者に行うと所得の分離は消えアイビー+ではより低所得層の学生が増すだろう。

収入プレミアの8割が優秀な学生の選抜ではなく大学進学によるものという仮定を置くと、SATやACTのみを基準にし入学審査が行われていれば世代間の所得持続性は15%減る。現状のような黒人や卒業生子弟優遇を低所得層に行うと所得の世代間持続性は25%減る。
既存の教育計画を変えなくても学生の分配を変えれば世代間の所得移動性は変えうるのだ。