2011年07月16日

財産権と経済発展

本書は途上国における法的障害の多さを初めて指摘したことで知られている。Acemoglu, Rodrick, Dixitなどがしばしば引用するので、所有権と経済発展という文脈ではたぶん定番の書籍と思われる。



資本主義が発展しているのは西側の諸国だけで、その他の国々は置いて行かれているように思える。自由貿易を行い国内通貨を安定させ債務を減らすというマクロ経済指標の改善を行ってきたラテンアメリカは、依然として発展しきれていない。この本では発展を阻害する要因を公的な財産権制度の欠如にみている。
たいてい人々は生産に必要な資産は持っている。しかしそれは死蔵されている。資産が資本となり拡大再生産を始めるためには、公的な財産制度が必要なのだ。たとえばハイチでは政府所有の土地に住んでから賃貸することが認められるまで5年かかる。合法になるにも、合法で居続けるにもコストがかかるようでは政府の保護の外で暮らすことを選ぶのも頷けるというもの。資産を資本(=拡大再生産可能なもの)にすることができ、社会に広がった情報を一つに統合でき、所有者の説明責任を果たさせ、資産を分割・統合・移動可能なものにし、人々のネットワークを育て(分業が行いうるようになる)、取引を守る。このような法的保護のメリットを受けられない闇市場は潜在的にとても大きいのだ。
役所は治安や衛生、ダムといったそれぞれの職務を抱えている。そのため所有権制度の欠如という総合的なものの見方をすることができなかった。
アメリカの歴史は示唆的だ。Green vs Biddleやゴールドラッシュなどの事例で、先占権(※)、占有権の判例法が生じていった。事実上生じていた権利関係を尊重し、公的に保護することが重要であると何度も何度も繰り返される。
もちろん途上国は公法・私法の欠如に気付いていなかったわけではない。しかし現実の関係を無視して書類上で権利を与えるだけで、効果を生まなかった。たとえば犬が土地の境界線を知っているなら、任せてしまえばいいのだ。事実を重視すべきという姿勢がまた繰り返される。

法学用語は直訳できないし、マルクス経済学や哲学の抽象的議論は多いしと読むのには骨が折れたけど、死蔵されている資産は驚くほど大きいと知れてよかった!

うーん、現地での法的関係を尊重しろとは言うんだけど、ローカルな取り決めの全部が全部経済発展をもたらすようなものとは限らないんじゃないかなーという気もしなくはない。どうなんでしょうね。

※preemptionは手持ちの辞書では「先取特権」と載っていたんだけど、「正当な権利は持たない土地に建物をたてたとしたら、その付加価値の分だけは補償されうるようになった」という文脈になっていたので「先占権」と訳してみました。

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posted by Char-Freadman at 05:31| 北京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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