2011年07月19日

おそロシア

「汚職の経済学者(※)」、ロシアの民営化を語る!



1991年、英雄エゴール・ガイダル(※※)とアナトリー・チュバイスはロシア企業の民営化に着手した。夢のまた夢と思われていた改革が着実に進んだことは、ロシアですらインセンティブが働くことを示している。
本書では、ソビエト崩壊から民営化に至った経緯を簡単に触れ、所有権の分析でソ連時代の企業の非効率性を説明する。キャッシュフロー権(資産から得る利益を確保しコストを支払う権利)は国民にある一方、コントロール権(資産をどのように使うか決定する権利)は政治家と経営者にあった。正しく権利を守れるならコースの定理が教えるように効率的な意思決定になるけど、ロシアではそんな適切な制度は存在しなかった。経営者の役割は省庁により設定された計画を実行することだけであり、企業の効率性を高めるよりもいかにして政府から補助金その他の援助を得るかに気を配っていた。
改革者はコーポレートガバナンスの問題をひとまずおき、脱政治化を目指した。キャッシュフローとコントロール権を政治家から奪い、一つにまとめようとしたのだ。しかし政治家・労働者・地方政府の反対に遭った。そこで民有化において市民を味方につけることにした。ポーランドのように現金売却という手もあったけど、外国資本に渡ることを嫌う感情があるし時間もかかることから、チェコのようにバウチャーを全国民に配るという方式を選んだ。バウチャーは交換可能なもので、ロシア初の証券として機能した。脱政治下を目指し効率性は多少犠牲になったものの、民営化は進み外国資本が参入するようになり商法も発展し始めたことから概ね成功であったとみている。海外援助は改革者の支援をするように政治色を帯びるべきとのこと。
ベラルーシやウクライナなど徐々に改革を進めようとした東欧は失敗したけど、ショック療法をしたことでロシアは動き始めたそうな。準備できるまで待ってたら何も進まねーよと。

どうだロシアを正しい方向に導いてやったぜ!という著者の態度はどうにも気にくわないし、ガイダルやチュバイスを支持する政治的意図を持った本であるけれど、分析自体の面白さは損なわれない。民営化に興味のある人はオススメ。

(※)アンドレイ・シュライファーは賄賂の分析や行動ファイナンスの分野でよく知られた、JBCメダル保持者。ここ数年で最も引用されている偉大な研究者だけど、ロシア投資をしたかどで司法省の訴追を受けて巨額の賠償金を支払うこととなった。主要業績をまたいで悪事を働いたのかしら…なんともすごいバイタリティの持ち主だ。

もちろん論文の洞察の美しさは著者が何をやっていようと関係ないです、念のため。悪党が優れた分析を残したっていいじゃない。学者は聖職者ではない。

(※※)50代で亡くなっている。毒を盛られた経験もあるから、友愛されたのかな…

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シュライファーはその後もロシアの民営化に関する著作を数冊上梓している。時間を作って読みたい。時系列順に挙げてみた。







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posted by Char-Freadman at 00:59| 北京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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