2011年10月26日

カトリックの経済的起源

皆さんこんばんは、【油を注がれた者】ことCharです。今回はキリスト教の経済的起源を分析した本を紹介してみます。



西洋世界を理解するには、2000年続くカトリックの分析は欠かせない。その特色は二点ある。単なる分派に過ぎない状態から、ローマの国教として受け入れられ拡大していくのがとても早いこと。そして、ローマ帝国の没落をものともせず中世までにヨーロッパと英国の信仰において独占的地位を確保したこと。
本書の目的は、独占に至る過渡期での教会の行動を、ミクロ経済学を用いて分析することにある。その地位を活かしてどういう行動をしたかは""に詳しい。もちろん他の学術の価値を貶めるものではない。宗教の多様なあり方のうち経済学という手法を用いて明らかにできる側面はたくさんあるよというのが著者たちのスタンスだ。競合他者を追い落としたいという組織の願望をを理解するのは重要なのだ。教団の進化に焦点を当てているため、教説の内容にまでは深く踏み込まない。

教団の発展はこのようにまとめられる。

初期の拡大は、起業精神に富んだパウロやその他の弟子によってなされた。
ローマ帝国が国教にした。
ニケーア公会議で教義が一元化された。
世俗の政治権力と繋がって西欧に広がり、教会は垂直的に統合された。
東西協会の分裂。
ローマ教会は税源を拡充し、政治権力と教会との権力の分離を確立した。
最上位にローマ聖庁、下位に地方教会という組織が確立され、信徒の一様性がもたらされた。

2章で他の文献紹介をして研究を位置づけたのち、3章で基本モデルを提示する。そこでは宗教が「死後の永遠の救済を約束する」製品を売る独占企業として捉えられる。そのサービスは購入後にその質を確かめることができない究極の信頼材だ。不確実性下の効用最大化問題として描かれる。
そして4章で、初期のキリスト教が広まったのは、パウロやディアスポラといった弟子の伝道に起業精神とネットワーク効果があったからと結論する。
5章ではキリスト教というカルテルの成立をみ、秩序と安定を統治下にもたらす=エージェンシーコストを低下させるという効率性の観点から、ローマはキリスト教を受け入れたとする。
6・7章では垂直的統合が中心的テーマだ。6章ではコンスタンチンからシャルルマーニュの戴冠までを扱う。コンスタンチンによる合法化とテオドシウスによる国教化は、ローマカトリックの垂直的統合の始まりに過ぎなかった。上流は下流を所有し、ローマ聖庁のもとで教会の収入は保証され各種の方針が調整されることとなった。6章は東方の皇帝の反対にどう対処したかが分析されている。フランク王国の手を借りたのだ。こうしてキリスト教は異教徒を改宗させ、ローマ教皇の正当性を認識させ保護させることに成功した。7章では世俗政治や東方正教との抗争の分析がなされる。
8章ではローマカトリックが中世までに独占的地位を占めたとし、その影響を見ていく。歴史的に重要なだけではなく、独占組織の傾向を見る上で普遍的に重要な示唆が得られるとのこと。そして現代のキリスト教会の行動を考察する。

産業組織論、宗教組織といったキーワードにピンときた人にお勧め。ただ、価格理論を使ってちょちょっと料理してみました系の爽やかな本ではない。気負ったタイトルからしてガッツリ専門書ですので、あしからず。

Christian.jpg

画像はイメージです。キリスト教の歴史は血塗られた闘争の歴史とはなんともよくいったもの。
posted by Char-Freadman at 00:50| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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