2011年11月28日

災害になる貿易政策

1930年代には貿易制限が顕著に行われていた。本書はそこで何が起きていたかを分析していく。



国際金融論ではよく知られた開放経済のトリレンマというお話がある。独立した金融政策・固定為替制度・自由貿易という三つの望ましい目的のうち、二つしか同時には達成できないというものだ。デフレに陥っていた1930年代の世界経済は本来独立した金融政策で景気刺激を取れたはず。しかし金本位制(=固定為替)に固執したため、支払いバランスの必要から高い関税や輸入制限をかける羽目に陥ったとみる。

一章では1930年代初頭のヨーロッパでの保護主義の起源とその拡大をみていく。
金本位制の下でアメリカとフランスはルール破りをしていた;金の流入を不胎化していたのだ。そのため金を流出していた国はデフレ圧力を受けるようになった。しかし米仏の金流入国はインフレを回避できたため、金流出国は返済のために政策の変更を余儀なくされた。また戦債や賠償金も、第一次大戦後の不安定さの要因となった。ドイツは英仏に借りがあり、英仏はアメリカに借りがあった。このためアメリカからのカネの流れが滞れば、国際金融システム全体が悪影響を受ける状態となっていた。しかしFRBは株式市場の熱狂を抑えるため、緊縮的な金融政策を採ることにしたのだ。金本位制から離脱した国の貨幣は直ちに減価した。そのためそれに止まった国の貨幣は割高となり、輸出品は高騰し輸入品は安価になった。支払いの必要を抑えるために高い関税や数量制限が設けられる結果となった。その後は報復措置としてその他の国も同様の保護主義をとるようになっていった。悪名高いスムート・ホーレー法は特定利益集団が政治力を行使したために決まったものではなく、輸入を減らし金の流出を抑える目的でなされた。激烈なインフレを過去に経験した国は、金本位制に止まりがちだった。世界の国々は金本位制を廃止したグループ、金本位制に止まり互換性を維持したグループ、金本位制に止まり互換性を放棄し為替コントロールを行ったグループに大別できる。

二章では様々な国がこのトリレンマをどう解決していったかを分析する。
イギリスの政策担当者は、金本位制・自由貿易・均衡予算・小さな政府という「ビクトリア・コンセンサス」をもっていた。そして金本位制からの離脱は信任に関わるとみ、輸入制限に踏み切った。結局はそれを手放したものの、どこまでポンドが減価するかわからなかったため、輸出制限によって支払い問題を解決しようとしたのだ。金本位制からの離脱によりインフレを懸念したイングランド銀行は当初利子率を上げたがすぐに下げることにし、拡張的な金融政策はデフレを解消することになった。
ドイツや中欧ではトリレンマがより厳しい問題となっていた。貨幣の減価を避けるためには、貿易制限に繋がるような為替コントロールを行わざるをえなかった。財政悪化により資本がどんどん逃げていき、金準備が底を尽きかけていたのだ。賠償金は金によって固定されていたため、マルクの減価は支払いを困難にすることを意味した。またインフレの苦い記憶もあった。そこであらゆる外国為替取引を政府が規制することにし、マルクの先物取引を禁止した。ポンドの減価により負債の支払いは楽になったものの輸出はダメージを受け、支払うための外貨の獲得はしづらくなった。デフレにより他国よりも賃金と物価を下げれば貿易のバランスを改善できると期待したが、経済を悪化させるだけの結果となった。再武装の狙いから、消費財ではなく工業品が輸入されるようになっていった。また二国間協定により、外貨準備抜きで貿易をできるようにした。
フランス及び金本位制へ留まった国々は増価に苦しむこととなった。

三章ではこれらの貿易制限政策が世界貿易の崩壊にどう繋がったかを論じる。支払い問題の解決としては、輸入制限と通貨下落は同じ意味を持つ。しかし両者には違いがある、それは為替減価が近隣窮乏化政策には必ずしもならないことだ。各国が協調して金融緩和を行っているだけとなる。世界の貿易量はこの時期を通じて25%減ったが、その半分ほどがこの間違いによるものだったと見ている。金本位制から離脱した国はその後の景気回復を容易に行えたようだ。

四章は総括として1930年代の貿易政策から3つの問題に関する教訓をみる;為替と貿易政策、保護主義と重商主義、大恐慌下と同じく近年の金融危機で保護主義が行われない理由だ。2008年の経済危機は1930年代のような崩壊には結びつかなかった。外国投資が果たす役割が大きくなり、中間財が貿易に占めるシェアが上がり保護主義がやりにくくなり、WTOなど国際規約を結ぶことで各国政府は保護主義圧力に対抗できるようになってきた。どうも自由貿易の利益が理解されてきたようだ。

貿易と金融とに興味ある人におすすめ!

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posted by Char-Freadman at 13:15| 北京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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