2011年11月28日

貿易と暴力

貧富の差は何故生じるのだろう?この疑問に行き当たったとき、歴史が教えてくれることは大きい。国際貿易が果たした役割を述べるのが本書の目的となる。

Ronald Findlay, Kevin H. O'Rourke, "Power and Plenty: Trade, War, and the World Economy in the Second Millenium"



内容を一言でまとめてしまえば、「貿易パターンは、軍事的・政治的紛争の結果としてのみ理解することができる」ということ。『大量のマキシム式機関銃、シミターの刃、凶悪な流浪の騎馬民によって決められる貿易の流れによって』ここ1000年の歴史を理解しようとする。多くの歴史家は中国や欧州など特定地域からの視点に寄りかかりがちだけど、本書の特色はバランスよく世界各地を眺めていること。(ただその欠点として細部の説明が冗長になり読む楽しさは減っている。)政治が経済を形作るのであってその逆ではないという信念をもち、地政学的要因に目を向ける。また思想、信仰や制度の伝播にも焦点を当てている。そこでは、中世のムスリム世界と、中東がいかに東洋と西洋を結び付けたかについての検証がなされる。

技術革新が可能になるまで、生活水準を上げるには貿易か侵略かをせねばならなかった。チンギスハンによるパクスモンゴリカ、その帝国は西ヨーロッパから日本海に至るまでの巨大な統一市場を初めて作り上げた。その結果収入増と人口増をもたらした。そして帝国の衰亡と分裂により、ヨーロッパ人はアジアに至る別の道を探す必要に駆られるようになった。そして新大陸を発見し、アフリカとアジアの更なる探検に乗り出した。この1500年から1650年に至るまでは重商主義の時代と呼ばれる。ヨーロッパの植民政策・商業政策に対抗するためにアジアが採用した政治的・軍事的戦略について焦点を当てている。
またこの騎馬民族はヨーロッパに黒死病となって現れる病原菌を連れてきた。人口の急減は賃金の急増をもたらし、欧州とアジア間のみならず欧州の南北でも大きな差となって現れた。この点は経済史家がしばしば見落とす点だという。

工業革命も重要だ。18世紀の分析に当たり、欧州とヨーロッパ間で一般均衡論を使っていく。綿花や砂糖その他の豊富な原材料と奴隷とは、織物の輸出に利益をもたらした。植民を通じて貿易を拡大していくことで、イギリスの輸出市場は育っていった。輸送コストは低下し、海賊は減り、アジアにも浸透した。海外市場の成長は、技術進歩を利益のあるものとした。この議論は、貿易によって需給の弾力性が高まるという事実を前提にしている。
北部イングランドから始まった技術革新に現代が負うところは大きく、格差の原因ともなっている。ナポレオン戦争、パクスブリタニカを経て第一次・第二次大戦、そしてパクスアメリカナへと影響を及ぼしていった。「西洋の勃興」を、西洋以外の世界との関係を無視して制度や文化といった国内的発展のみで説明しようとするのはとんでもない間違いであるとしている。なぜイギリス/なぜヨーロッパだったかーー敵を市場から排除する英国海軍の役割が強調されている。

本書を通じて、帝国主義や紛争の結果として貿易が生まれているように著述されていく。新しい時代には新しい地勢的関係が生じ、流れが変わる。力をつけてきた現代の中国やインドへの対応に関しても教訓が得られればと期待して結んでいる。

経済史に興味のある人にオススメ。辞書代わりにどうぞw
posted by Char-Freadman at 15:38| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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