2012年02月18日

柔軟な政治議論を求めて

これ、経済の本かと思ったら政治の本でビックリした;"The Darwin Economy" by Robert H. Frank
顕示的消費とか累進消費税とか感情が持つ経済的帰結とかで有名な著者だけど、それらのアイデアの丁寧な解説は前の本を当たったほうがよさそう。本書は純粋な経済学的アイデアとしては特に目新しいものはない。



アメリカにはリバタリアン運動/Tea partyという困った人たちがいる。原理主義的に自由を主張し、いかなる課税にも反対しており、政治の硬直化を招いている。本書はそんな彼らの議論の穴をひとつひとつ指摘していく、たとえばこんな具合だ;

全ての税は窃盗だ→所有権を守ったり社会インフラを供給するには税収が必要だよ。あとピグー税なら税収確保できる上によろしくない行動を防ぐこともできる、たとえば環境税やタバコ税、アルコール税などね。
累進課税は不正だ→一律な課税だと公共財の供給ができなくなるかもしれないよ、それよりは支払い能力がある人がより多く負担したほうが彼にとっても良い結果になる。実際労働市場では、社会の中で相対的に低い地位を受け入れるために賃金補償を受け取ったりしているよ。
市場での成功は才能と努力によるんだ→運も重要、才能だって遺伝や環境要因に影響されるし。
金持ちへの課税は金の卵を産むガチョウを殺すようなもの→残念、経済理論も実証データも支持しません。
政府は無駄遣いするから税を払わなければ良いんだ→有効なインフラも失われるし、実際税収を制限したカリフォルニアは失敗している。私的消費もムダがあるよね?パーティや屋敷といった消費は、他の人よりスゴイものを見せつけたいという動機で買っていて、結果として皆が損をしている。累進的消費税を導入したほうがみんなの得になるんじゃない?
自由権は何が何でも守られねばならない→費用便益分析を使おう。パイをまずでかくして、それから直接的補償やらをしたほうが得になる。「取引費用が低いとき、所有権を設定すれば交渉が効率的な結果を生む」と主張した市場派の聖人ことロナルド・コースですら、費用負担が軽微なほうに支払いをさせたほうがよいとしている。
アダムスミスは、各人が自分の利益を追及すれば効率的になると言ってる→ダーウィンは各人にとっての得と社会にとっての得が乖離する状況を指摘している。各ホッケー選手は上手に滑れることを主張したいからヘルメットをかぶりたくないかもしれないけど、皆が同じように考えてノーヘルになるよりは、ヘルメットを被っていたほうが望ましい。クジャクの派手すぎる尾、牡鹿の大きすぎる角など例を挙げればキリがない。そんな囚人のジレンマ状況のときは、そもそも規制してしまったほうが、皆にとって得な結果になるよね。

一人でも多くの残念なリバタリアンを説得したいとのことです。

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(感想)
・思考停止な人はたぶんこの本読まないだろうナァ・・・w
・日本だったら、「キュウジョウガー」「ガイコクジンサンセイケンガー」とか、原理主義的発想はむしろ左派のほうに多そう。
・ポルノ規制とか馬肉規制(@加州;http://kuznets.fas.harvard.edu/~aroth/alroth.html#Repugnant)とか臓器移植とか、嫌悪感に基づいた規制に対しては依然として結構有効なレトリックじゃないかなぁ、消極的自由の主張って。
・アホな政治運動にもまともに相手してあげる老教授が居て、アメリカの経済学者の層は厚くて羨ましい。
posted by Char-Freadman at 04:50| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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