2012年02月19日

アメリカの大躍進

「潜在生産量は大恐慌時代(1929~41)に劇的に伸びた」と主張する本を紹介してみる。題は"A great leap forward: 1930s depression and U.S. economic growth"、著者はこの時代の研究で知られる経済史家のAlexander. J. Fieldだ。主な要因は道路建設だそうで。



え、二次大戦が大不況を救ったんじゃないの?とか、もし戦間期に生産能力が伸びていたんなら、栄えていたのは20年代だったはずじゃないの?とか、それなら48~73のアメリカの黄金成長時代はどうなのとか、20世紀末の情報化時代に関してはどうなの?といった疑問が浮かぶだろう。本書はこれに答えていく。

20年代の伸びは、金属のシャフトや革のベルトが電線や電動のモーターに替わっただけで、製造業以外に進歩は無かった。
一方30年代には道路のネットワークの建設がなされた。それにより、卸売りや小売りといった、組織や運輸・配給の変化がもたらされた。ゴム製のタイヤで運びやすいよう、インフラが整備されていったのだ。これは全部の産業を巻き込んだとのこと。
戦中は戦争に全てが費やされ、その後通常の経済に戻ったけど、成長には悪影響があった。黄金時代の成長の伸びは普通に資本蓄積によりもたらされた。1973~95のTFPの落下は謎だけど、インフラ投資のメリットが薄れたからかもしれない。ITブームは確かに生活を一変させたけど、歴史的にみたらそう大きなものではなく、コンピューターや携帯電話や証券といった産業に限られているとのこと。

一部はアメリカの経済の伸びを年代順にみていく。19世紀の成長と20世紀のそれとは技術進歩において質的に違うと通来言われていたけど、長期のデータをとってみるとそうではない。20世紀後半のTFPの伸びは19世紀末の伸びよりも低い。
二部はさらに細かく検討する。TFPは1890~2004の間procyclical(景気のいいときに伸びる)な傾向を持っていた。また設備投資仮説、すなわち建築物ではなく耐久財は技術変化の担い手となり設備投資の社会的リターンは詩的リターンを上回るから補助金を与えられるべき、という見解に疑念を呈している。設備投資のシェアが伸びていてもTFPの伸びは薄いからだ。また、汎用目的技術という考え方を抜きに経済史を考察できるかも検討されていく。
三部では現在と大恐慌時代を比較する。財政危機の遠因がレーガン時代に溯れる。20年代の不動産のブームは、自動車によって新しい機会が生まれたから。戦間期の経験から何を学べるか考察し、鉄道に関して不況が長期的な生産性の成長に好影響があったかをみる。

(方法)
資本や労働の伸びで捉えられない経済の伸びはTFP(Total Factor Productivity)と呼ばれる。1929~41年ではどちらの要因もあまり伸びていないにもかかわらず33~40%の生産物の伸びを経験しているというのが、著者の中心的発見だ。
政府と農業部門を除いたPNE(Private Nonfarm Economy)を生産量として考えている。それは、政府部門の生産は市場に出ずコストで測られ、農業部門は転校に大きく影響を受けるからとのこと。
また最新のマクロ経済学を用い、景気循環のピークを同定し、それらを比べている;景気の底と天井を比べないようにするため。

すげー意外!
道路族には必読書かも?

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(感想)
・そういえば日本には車社会嫌いの高名な経済学者がいますね。数学に強くても年老いるとSAN値が下がるのかしら。
・上からの改革を目指した毛沢東の大躍進政策はコケたけど、下からの需要に応えたアメリカは文字通り躍進したというのが解題だそうで。うううん、加州の経済史家のくせに中国嫌いなのかなーw
・著者の師匠アブラモビッツや著者も認めるとおり、残査分析は推測に過ぎない。ただ、この時代が他の時代と比べて特徴があることは確かに思えるので、他の要因の指摘も待ちたいところ。特にITの影響が限られたものという見方は胡散臭さが残る。だって全ての産業に影響してるもん、コンピュータの導入。ただ変化がわかるようになるには50年くらいかかりそうだ。。。
・道路建設が顕著な時期を国際比較するって手もあるのか?
・バーナンキが珍しく褒められている!
・著者が使ったデータは読者も使えるようになっていた。素晴らしい。
(ご参考)
1948年以前のデータ;http://www.nber.org/books/kend61-1
それ以降; http://www.bls.gov, http://www.bea.gov
・ハコモノ建設は役立たずと言われるようになってきたけど(cf. Ed Glaeser)、まだまだアメリカはインフラ不足じゃないかなぁ。鉄道網もネット整備もショボショボ=希望があるような気がする。
posted by Char-Freadman at 23:34| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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