2012年02月26日

ロシア経済での政治戦略

ロシア経済での政治戦略に興味が湧いたので目を通してみた。

"Without a Map: Political Tactics and Economic Reform in Russia", by Andrei Shleifer , Daniel Treisman



「ショック療法」の批判は、その当時のロシアで政治的に可能だった手段が限られていることを見落としている。民営化、マクロ経済の安定化、税改革に関して、以下の三つの戦術を当てはめていく。
☆圧迫;利害関係者の一部に権力を与えて他の関係者を収用させること。
☆離間;政策の反対者の一部に利益を与えることで味方につけ、一枚岩を切り崩すこと。
☆削減;味方にするために必要な利益を、コストがより低いものに乗り換えること。

2章は民営化について。キーとなったのは、(1)経営者を選ぶことの出来る産業担当大臣、(2)経営者、(3)労働者、(4)地方政府だった。資源その他の産業は民営化しないことで(1)に譲歩し、(2)と(3)には安価でバウチャーを配布し、中小企業の監督を認めることで(4)に譲歩した。過半数のシェアを経営者と労働者で分けるというオプションが主に使われた。そして民営化された企業のほうが活発なことが示されている。
3章はインフレについて。ソ連崩壊後のロシアでは税収が伸びず、農業その他の部門から補助金の要請に応えるにはインフレ税をとることになりがちだった。ともあれ1995年にはインフレは収束した。まず商業銀行で準備要求を上げ、次に外貨準備の要求を上げ、そしてその他の貨幣の要求を上げていった。新しい政体になるとインフレ鎮圧しやすいとか、党派対立があると安定するとか、危機のせいだとか、統一された政府のもとなら安定するとか、中央銀行の独立性といった見解を批判的に検討している。
4章ではインフレ収束の政治戦略をみる。中央銀行、贔屓された商業銀行、補助金の与えられた企業と農家は他の国民を犠牲にしながらもインフレによって得をしていた。中央銀行は貸し付けから利子を得ていた。またいくつかの商業銀行は信用を与える権利をもっており、また預金者に負の利子をつけることで得をしていた。政府証券(GKO)の発行は、企業と農家にとっては信用を得ることができ、また銀行にとっては政府に「貸し付ける」ことになるのでインフレに反対するインセンティブを生むことになった。
5章では予算の伸びが低迷し、経済成長も進まなかったことが示されている。一人当たり収入は低く、連邦制で、民主制にも自由貿易にもなれていないこと、これらが汚職の蔓延の原因となった。特にロシアが特別というわけではないのだ。
6章は連邦の税制について。連邦、地域、地方といった政府全てが独立の予算を組む権限を持っていた。そして税収はそれらにより共有された。また地域政府はどのようにシェアをするか決めて良いことになっていた。地域政府も地方政府も新しい税を導入して良いことになっていた。税務署は連邦に属していたが、地域からの支援が必要になっていた。このため税の取り合いが生じ、地下経済に逃げたり物々交換が蔓延ることになってしまった。
7章は税制改革の失敗について。連邦政府、地方の首長と立法府、市区の市長と区議会、ガスプロムやルコイルといった大企業、税務署といったプレーヤーのインセンティブを無視した改革は全て失敗に終わった。やる気が無かったわけではなく、大企業や地方政府からの妨害に遭ってしまったのだ。
8章は税制改革の提言。(1)連邦にも地域にも地方にもそれぞれ税務署を作る。(2)地方には小さな企業に税を課したり所得税の税率を決めたりする権限を与える。(3)地域政府には大企業に法人税を課す権利を認める。(4)連邦政府は付加価値税および関税を課す権利を得る。(5)税源がかぶらないように法律で定める。これらは完全には効率的ではないが、政治的な支持を得ることはできる。
9章はまとめ。ロシアの指導者はこれからも政治目標の達成のためには戦術を組まないとならない。道無き道を往く。

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(感想)
・民営化されたほうが国有化された企業よりマシな経営をしているそうだけど、さて東電の運命やいかに?放漫経営だから国が監督するとか、理屈の面からも実態の面からも狂気の沙汰に見えるよなー。
・文化で説明を付けようとしたら負けみたいなのって、いいよね。一見傲慢だけど、文化だからしかたないやという無気力に抗ってて、前向きで。
・しかし共産主義といいショック療法といい、いつもやることが過激だなこの国。体を張ったギャグ。。。
posted by Char-Freadman at 03:04| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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