2012年03月30日

公正と自由

ニュージーランドとアメリカを比較し、公正さの歴史を辿る。

"Fairness and Freedom: A History of Two Open Societies, New Zealand and the United States", by David Hackett Fischer



アメリカの政治家は自由(liberty, freedom)を強調するけど、NZの政治家は公正(fairness)を強調する。この差はどこから来るのか?NZではfairnessに関する語彙も豊富だ。語源を辿り、似て非なる意味が示されている。

fairness; 競争する人たちがいるとき、どちらかが不当な扱いを受けること無く勝負できるようになる、手続き上の正しさに関する概念。(例)fair play
equity;全てのものを同じように扱うこと。
justice;法の支配。

アメリカ移住には4つの波があった。ピューリタンは自由を求め、ヴァージニア移民は身分に応じた自由を求め、クエーカーは互酬的自由を求め、その他スコットランド移民は軍隊経験を持ち介入されない自由を求めた。ニュージーランド移住にもいくつかの波がある。19世紀以降のNZの支配者の経歴が綴られ、概ね公正を重んじていたことが示されている。イギリスが最初に植民した地域はイギリスへの服従を強いられたため自由の獲得が最大の目標となったが、次に植民した地域(NZやオーストラリア)では既に自由権は認められており公正や不平等が問題になったとのこと。

アメリカ先住民とマオリの比較がなされる。大きな差は、アメリカ先住民の言語は多様だけどマオリのそれは一元的なこと。マオリの支配が比較的暴力沙汰にならなかったことについて、啓蒙思想の影響と、ジェームズ・クックがポリネシアで雇った人物がマオリの言語に通じていたため交渉が可能であった点に原因を求めている。

入植にあたり、アメリカは荒れた土地を開墾していくという形をとったが、NZでは肥沃な土地からまず使われていくという形をとった。このためアメリカでは自由に土地を使えるかどうかが焦点となったのに対し、NZでは公平な分配が政治の焦点となった。
また移民の基準に関しても異なる。アメリカよりNZのほうが厳しく、NZに合いそうなヨーロッパ系の人が募集された。アメリカでは自活がモットーとされ、入植した民族は集住しがちでアイデンティティを持ち続けていった。いっぽうNZではイギリスとマオリを除けば他の民族は同化していった。

アメリカでもNZでも次第に参政権は拡大した。女性の参政権が初めて認められたのはNZであり、当地の運動家はアメリカに比して協力的な姿勢で運動を進めた。原住民への対応はアメリカはより過酷であった。進歩的な政権でも原住民の利益をかなえる動きはみられなかった。

外交方針については、アメリカは(1)国益をかなえ(2)世界の自由を実現するという傾向がある。NZは国益と地域における優位性・独立性・正義や公平性を重視するという傾向がある。

恐慌に対応した政策も比較される。アメリカのニューディール政策は信じられているような「大きな政府」の勝利ではない、というのもNZと比較したら政府部門の人数も税率も低いし、経済を刺激したあともみられないからだ。むしろ自由に参入できる経済を促進したという面が強い。いっぽうNZの第一次労働内閣は、社会正義の実現を目指し、多くの産業を国有化した。

軍事にあっては、閉じた社会は電撃策に優れ、開かれた社会は総力動員に優れている。アメリカもNZもともに自国の兵を大事にする。NZの歩兵は優秀であることで有名。また大戦後の経済は、改革に当たるのが左派から右派に移るという傾向が両国で見られた。政治制度の改善も進んだ。

自由を重視する姿勢には義務や責任を無視しがちという悪癖があり、公正を重視する姿勢には能力のあるものをやっかむ(tall pappy)という悪癖がある。両者はともに学ぶべき点があると結ぶ。

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(感想)
・独語にも仏語にもfairにあたる語は無いそうだ。日本語だと「公正」が近いかな?

・思想が政治や経済に与える影響って、どういう機構を通じて起きるかねえ。自分の持ってる思想が他人の持ってる思想と整合的なときなんだろうけど。各人が同じように考えて自分も同じように考えるのが有利ーースタグハントゲームみたいな感じか。

・英語は何ら得意ではないので、歴史や哲学系の人は風景描写をしたがるため読むのがしんどくなる。うう、、、余計なこと書くなよ読み取りにくくなるじゃん。。。(ロジックを眺めるのには修練を積むけど文章から風景を読み取る訓練はしないわけで。。。)
posted by Char-Freadman at 18:39| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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