2012年04月19日

金融でイイ国を作ろう

Financeはラテン語の語源からして目標という意味がある。目標を達成するにあたり手助けをするのが金融であり、インセンティブを調整したり価値を発見したり、効能は大きい。2008年の金融危機以来、金融業の発展を制限しろと声高に叫ぶ輩は多い。でも、良い社会を作るために本当に必要なのは、さらなるイノベーションでより多くの人が金融に参加できるようにすることだと説くのが本書の目的だ。



一部は今日の金融資本主義を概観する。金融業を取り巻く人々の役割と責任について述べる。
CEOは意思決定者であり、会社の価値を高めるような行動をするよう動機付けがなされる。ボーナスよりもstock optionのほうが長期を見据えた経営をするようになる。問題はある; 大きすぎて潰せないから政府が救済するであろうことを見越して過大なリスクを取ったり、給料をもらうまでは都合の悪い情報を隠しておいたりする。規制をかけるべき対象は、給料の水準ではなくその構造。たとえば給与の支払いを5年くらい伸ばしたり、政府救済が起きたら給与を奪ったりすべき。
様々な組織の描写がなされる。改善するにはいかにしたらいいかが考察される。また敵意はどこから来るのかも理解される。
投資マネージャーもまたいかに資金を運用するかを決める。市場を打ち負かすことはできないものの、IQや能力の高い人は実際に高いパフォーマンスを上げる可能性がある。シャープ比もまた実情とはかけ離れた数値に操作される可能性があるため、必ずしも信用できない。
銀行は一般人の預金をプールし、企業に貸し付ける。情報を収集してモラルハザードを防ぎ、個人にとって貯蓄は優れた運用方法であるものの、口座を持たない人はまだかなりの数いる。より多くの人が利用できるようになると良い。
投資銀行は企業がシェアを発行するのを手助けする。企業がうまく軌道に乗るよう、金融面から動機付けを行う。
不動産ローン業者は、家を買いたい人の手助けをする。不動産が永遠に値上がりするとの非現実的な仮定を置いてしまったため失敗したものの、モートゲージの発券でリスクを下げるという発想自体は間違っていない。誤解されがちだがAAAの格付けになっていたサブプライム証券の0.17%しか損失を経験していないのだ。ただ貸し付ける側と借り入れる側に情報の非対称はあるのでその解消は今後の課題。
トレーダーは価格が真の価値を表すようになるまで奔走する。脳の構造に似ており、新しい情報を瞬時に価格に反映するのだ。技術の発展により、早くかつ多様な取引を行えるようになってきた。もしかしたら不動産のデリバティブが一般的に行われ、将来の家の価格が評価されるようになっていたら、バブルは起きなかったかもしれない。新しい取引が生まれるようにするため、課税で動機付けしてはどうかという提言がなされる。
保険は事故が起きた際の損失を回避する。幾世紀にもわたるその歴史は、より多くの人を参加させてリスクをシェアするよう方向付けられてきた。長期のリスクはカバーされていないものが多く、たとえば生計はそのうちの一つ。いかなるキャリアを歩むかに関して保険をかけてはどうかとしている。
マーケットデザイナー・金融工学者はよりよい暮らしに向けて取引が行われるよう理論を発展させている。たとえば臓器移植の市場が生まれ、より体に馴染む臓器が提供されるようになった。排出権取引や、政府による安価な薬の購買と分配なども提言されてきた。ゲール・シャプレーのマッチングアルゴリズムも紹介されている。
デリバティブ業者は財の将来の取引に関して市場を作る。起源は古代ギリシャまで遡ることができ、オリーブについて取引がなされていた。天然資源の利用、婚約などオプションのようなものは多い。
弁護士や金融アドバイザーは、より多くの人が正しく金融という機会に恵まれるために必要。依頼人の利益を守るように制度を構築すべき。
ロビイストは公共心を持った人がやりがち。全ての人に発言権を与えるように政治制度を改革するとよい。
規制主体は必ずしも業界団体に取り込まれるとは限らない。
会計士や教育者はよりよい情報の伝達に必要な職。
マクロ経済を自動安定化させるような政策も必要。

二部は改善する各種の提案が述べられる。人間心理の描写が多くなされるのが特徴だろう。
射幸心も保守主義もまた人間の心の一部。金融用語は人々の反発を食らわないようなものになるとよいかもしれない。効率市場仮説はしばしば議論の的になる;我々は無関係な証拠に影響され、都合のいいお話にも影響され、自信過剰だし、周りに影響を受けるもの。こういった心理状況がバブルを引き起こすのだ。とはいえ金融がない世界、たとえばソ連の計画や中共の大躍進政策もまたバブルといえる。株式市場は全体としてみては予測がつかないけど、個々の株式をみていくとそれなりにファンダメンタルを表している;これはサミュエルソンの二分法といわれる。また配当を払わない会社のほうがキャピタルゲインが大きい。
不平等度に基づく所得税が提案されている。不平等が生じる前に税制を構築するのがよい。
農地・住宅地・会社などの所有権は各種の改革により、多くの人が恩恵に与れるようになった。金融もまた多くの人に利便をもたらすようになるべき。

冗長なものの、一般読者に語りかける平易な書き方になっています。金融の嫌いな人にオススメ!

-----------------------------------------
(感想)
・嫌われがちな職を擁護するのもまた経済学者の仕事のうちなのかもね。そういえば学部を卒業するとき当時の経済学部長が「堂々と金儲けをしてください、価値があると胸を張って良いのです」という趣旨の発言をしていた記憶がある。

・保険屋にみんなムカついてるのはそのビジネスモデルを理解していないからじゃなくて、支払うべきときに支払わないで渋るからじゃないのかな。お金に愛を込めることは事前にはやってもらって結構ですが事後には保証されません^q^

・後半部だけ読めばいいような気がしなくはない。金融の話のはずなのに税制やら寄付やらに脱線しているし。。。

・まあぶっちゃけ、金融嫌いな人は、ビジネススクールの教員が書いているというだけで読まないだろうなーw

・シラー先生は不動産価格のデータを構築したありがたいお人。前著でもそのまた前著でも心理的要因を指摘している。

・経済だけじゃ説明付かない→心理的要因に飛びつくというのは何とも不満がががが。。。アニマルスピリットって要は経済学の敗北宣言だよね。

・悪徳商人から改心して慈善家になった人としてカーネギーが紹介されていた。日本だったら笹川良一かなあ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%B9%E5%B7%9D%E8%89%AF%E4%B8%80
posted by Char-Freadman at 07:46| 北京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/265482013
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。