2012年04月25日

創業者の苦悩

テクノロジーと生命科学を焦点にしたケーススタディおよび10000のデータベースに基づき、創業者の直面する各種のジレンマを明らかにしていくのが本書の目的。必ずしも富を追うのと権力を追うのとは一致しない。他の職に就いていたほうが稼ぎは大きかったかもしれないのに、なぜ創業するのか。一見、不思議な人たちではある。

"The Founder's Dilemmas", by Noam Wasserman



【職業選択】創業者になるべきか、早めになるか経験を積んでからするか、公平にアイデアを評価できているか、判断せねばならない。創業に適した年齢はない。若い創業者は他に立ち上げ人が必要かもしれないが、老いた創業者は一人で立ち上げられるかもしれない。
親友や両親が自営業だと、より創業者になりがち。創業というキャリアを選ぶ大きな動機は、男女を問わず支配欲と金銭面だ。
技能・知識・専門を深められる。教育を受けるとより創業しがち。どうやら未経験の分野で立ち上げると、資本が少なく、失敗率も高くなるようだ。大きな会社で働くより、小さな会社で働いた人のほうが創業しやすい。大きな会社でも、新製品の開発や外国でオフィスを立ち上げた経験などは、創業の準備になる。優先順位を正しく付けるのはより重要。年をとればコネもカネもでき、立ち上げやすくなる。
経験のしすぎもダメで、25年以内だと成功率は高い。心理的にも金銭的にも法的にも離れづらくなる。またヨメもガキもジャマだ。雇用ショックがあったり、雇い主の方針が変わったりする人は創業しがちとなろう。楽観はアイデアを生み出すもととなるものの、リスクを正しく図れなくなったりする; 需要や競争者の存在を常に意識すべき。

【誰とともに立ち上げるか】一人でやるなら関係・役割・報酬のジレンマは回避できるものの、人的・社会的・金融資本を得られない。仕事の好み・やり方などの基準がある。大きい集団はより多くの情報を得たり、間違いを訂正したり、多くの解決策を考え出したりできるため成長率も生存率も高くなる。

【関係のジレンマ】共同創業者の経験は、チームの問題解決緑野技能の多様性に影響する。
均一であるべきか異質性を持つべきか; 同一であればコミュニケーションが成り立ちやすく、またアイデンティティの構築もたやすい。一方、同じような弱点を持つ人ばかりにもなるし、ネットワークも広がらない。
家族や親友に頼むか否か; よく知ったもの同士でつるむと失敗しがち。関係性が壊れるのを恐れて大事な問題を議論しなくなる。関係を分け、うまくいかないときのことを予見してその際の策を練り、よく議論すべき。

【役割のジレンマ】分業は紛争のもととなる。より創業にコミットし、アイデアを持ち、人的・社会的・金融資本をより多く持つ人がCEOになりやすい。重要なのは、摩擦を避けようとしないこと、CEOの重要性を無視しないこと、地位のインフレを避けること、取締役会に味方を置こうとしないこと、共同事業者間の異なる動機を無視しないこと。

【報酬のジレンマ】 利益を調整するような報酬構造が必要となる。創業時に株式の分配を決める場合、やる気のある人を引き寄せることができるものの、モチベーションを下げたりフリーライドを助長する。いっぽう創業後に決める場合はその逆となる。過去の貢献(アイデア、資本)、機会費用(創業にあたりどれだけ犠牲にしたか)、未来への貢献(経験、コミット、地位)、モチベーションなどが勘案されているようだ。
動的に分配を決めるなら、このトレードオフを回避できる; その後の貢献によって権利を分配するのだ。

関係・役割・報酬は相互に関連する。たとえば家族や親友と立ち上げた場合は役割も報酬も平等になり、職業を通じての知己同士で立ち上げたなら階層的な組織構成・貢献に応じた報酬となる。議論を避けたり、変化を見落としたりしてはならない。

【雇用のジレンマ】立ち上げ後も、技能を持った人を集め、役割・報酬を決めねばならない。CEOは自らのネットワークを駆使して人材を獲得してくるが、投資家もまた雇用に口を出す; たとえば多くの場合CFOを任命する。どうなるかわからない初期段階では何でも屋を雇い、何をやるか決まった後は専門家を雇うとよい。営業マンは業績給を好み、エンジニアは固定給を好む。

【投資のジレンマ】さまざまな資本が必要となるものの、友人や家族から投資してもらうか、エンジェル投資家に頼むか、ベンチャーキャピタルに頼むか決めねばならない。友人や家族に頼むと失敗したときに全てを失う大きなリスクがある。エンジェル投資家の場合は規律は緩やかでよい。VCなら大きな額を借りられる。

【譲渡】創業者が退陣するときが重要な転換点。

出てくる創業者はみな魅力に満ちている。BloggerやTwitterで知られるエヴァン・ウィリアムズ、輝かしい野球経歴をもったカート・シリング、Zipcarを立ち上げたロビン・チェースなど、豊富な事例が楽しい。また手際よくまとめられていて読みやすい。創業に興味のある人にオススメ!

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(感想)
・色々意外だった。ビルゲイツみたいに、若いうちに創業してずっと辣腕を震い続けるのは稀な例なのね。あとこの種の本には珍しく、危機が生じた事例も扱っていたので面白かった。元カノと創業したからトラブった、みたいな。

・MBA生と遭うと、以下のような二種類の値踏みする視線が返ってくる;
a. 小難しくてビジネスには使えなさそうなネタを追ってるんだろうな、ネットワークもしょぼそうだ
b. もしかしたらネタに結びつくかもしれない、(駄目元でも)専門何やってるか聞いてみよっと
もちろん後者が好きなのでそんな人は全力で応援したいところ。

・スタンフォードGSBはホント起業が好きだナァ…w
posted by Char-Freadman at 06:04| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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