2012年04月29日

よくわかる新興国

今後の世界経済の予測に興味がある人は本書を読むとよいかも?

"Breakout nations", by Ruchir Sharma



ここ数年、金融危機に至るまでは、世界的な低利子により溢れたカネが新興国に流れ込んでいた。今後はどうなるかは不明瞭とのことで、現状分析がなされている。

【中国】最も大きな影響力を持つだろう。農村から都会への安価な労働力移動はやみつつあり、賃金は上昇気味。鉄道やネットや住宅などインフラも整備され、中位所得国になりつつあることから今後の成長は伸び悩む。国内負債は高く、高齢化の急激な進展という懸念材料もある。輸出産業の伸びはこれまで堅調であり、成長が遅れても各国との摩擦が減るからそう悪くもないかもしれない。
【インド】シン首相のもとで経済自由化が進んできたものの、彼の政治的基盤は弱く、今後も改革が続くかは疑わしい。輸出中心で国内は資金不足になっている。ハイコンテクストな多様な社会であり、汚職が蔓延している。多すぎる億万長者は政府関係者と繋がりをもっている。若い平均人口は労働力の源となりうるかもしれないが、それは農村から都市への移住がなされるときだけだろう。民主的な制度には希望がもてるかもしれない。
【ブラジル】インフレ懸念から常に高利子になっていたため、資金が集まり通貨高になっている。政府がGDPに占める割合は高すぎる。税が高く訓練や新技術に投資できなくなり、発展が阻害されている。空港や道路は古いままだし、教育水準の高い労働者が不足しているのだ。コモディティにも依存しているため通貨高に悩まされ、輸出業が発展しないというオランダ病にもなっている。
【メキシコ】寡占企業が政治も握っている。寡占企業は非効率だし実際に経済活動している多くの企業が上場されていないため、当地の株式市場は活気がない。アメリカに輸出を依存しているため、中国の伸びにより脅かされている。金融危機以前は資金を借りる格好の契機だったのにチャンスを逃した。麻薬組織の暗躍や誘拐も多発しており治安は保たれていない。未来があるとしたら工業部門くらいだろう。
【ロシア】90年の一人当たりGDPは$1500だったが、いまあや$13000になった。プーチン政権は、当初は改革路線だったものの、次第に変化した。規律に基づいていた政府支出は年金給付を伸ばしたために増大してGDPの半分を占めるようになった。金融セクターは貧弱で資金調達はおぼつかず、石油以外の産業を必要としている。高齢化も著しい。
【ヨーロッパ】旧共産圏のうち、ハンガリーはかつてソ連の介入が緩やかだったために比較的成長していたが市場改革は遅れた。いっぽうチェコとポーランドではEUへの参加のために制度改革が進み、海外直接投資の多くを受け取るようになっている。両国での金融部門の整備を見込んで多くのカネが流れ込んでいるようだ。共通通貨を導入すると、貨幣価値による調整がきかなくなるので、輸出が下がったり賃金が下がったりしてしまう。このため両国はユーロの導入に躊躇している。自由市場に任せるという方策をとった国々のほうが回復は早い。
【トルコ】アタテュルクから西洋化の流れは続き、イスラムの党派は政治参加が認められてこなかった。沿岸部の都市による党が支配したが、どの内閣も短命に終わった。このため支出のしすぎにより混乱が生まれることが多かった。エルドガンは反革命の典型政権であり、イスラム国としてのトルコを復権させようとしている。財政を規律付けてインフレを解決し、GDPの伸びは年に5%となっている。経常収支の赤字はネックだったものの、通貨安を受けて輸出には追い風になっている。イスラムとはいえ穏健派といえそうだ。
【東南アジア】スハルトの支配を脱し、インドネシアは好調だ。大企業の改革は進み、政府負債は減り、地方分権が進んでいる。フィリピンはノイノイ・アキノのもとで改革が進められており、人口は若く都市部の居住者が多い。また英語が母語という強みもある。タイは都市部と農村の対立が続き、経済成長が阻害されている。政治的不安が取り除かれるかどうかがキー。マレーシアはむしろパーム油などのコモディティに依存する経済へと逆行しつつあり、政策は次々と打ち出されるものの効力はあまりない。
【東アジア】台湾と韓国は輸出志向で延び続けてきた。特に韓国の工業部門は依然として国の中心を占めており、サムソンやヒュンダイの活躍は著しい。新興国への進出にも欧米や日本に先駆けている。いっぽうサービス部門への認識は甘く、銀行はあまり発達していない。台湾は賃金の優位性を失い、世界シェアを下げてきている。
【南アフリカ】マンデラ以降、政府支出を規律付け、物価を安定化させてきた。民主的ではあるものの格差を示すジニ係数は高く、黒人の失業率は白人のそれに比して高い。金融市場は発展しているもののアパルトヘイトの影響で閉じた社会となっており、カネは国内に留まっている。格差の縮小は止まったが、アフリカ諸国へ投資が乗り出しつつあり、商機はそこにありそう。
【第四世界】新興国になろうとしている国は法秩序が不安定なためより変動が大きい。ウガンダ、モザンビーク、イラクは紛争終結を受けて成長しだしたが、平和の恩恵を受けるのはスリランカも同じだろう。中国と同じくベトナムも専制的だがカネの使い道に失敗し、港も道路も古い。インフレになってしまった。アフリカのなかには高成長を続ける国もあり、たとえばナイジェリアはグッドラックジョナサンのもとで政治が安定した。映画産業は盛んになり、確かにインフラは不足しているものの、成長のための条件は揃いつつある。湾岸諸国は無税の国家であり、アラブの春を受けて国民に大盤振る舞いをしている。

賞味期限の短そうな本なので読むならお早めに!

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(感想)
・各国経済の描写としては大変読みやすいんだけど、「国々が競争している」「中国は企業に似ている」みたいなレトリックはなんだかな〜。著者は投資銀行マンなので彼の金をどこに使おうかという発想で書いているのだろうけど。。。馬鹿ホイホイな表現なのはいただけません

・この本で扱ってる国々の多くに行ったことあるんだけど、著者はどうも高級ホテルに泊まっているらしく、描写がなんともバブリー。そうですか道路がデコボコだったらヘリで飛ぶんですか。物価比較のものさしにフォーシーズンズホテルーー友人に言わせるとあくまでビジネス用であって華美なブランドではないらしいがーーの一泊料金使ってるし。これが格差社会。許せん(#^ω^)ピキピキ

・韓国が世界に向けて音楽・映画を発信しているという文があるけどこれも強く違和感が。自演だとか指摘されてないかしらwヨーロッパやアメリカでホントに売れてるの〜???

・中国は著者が述べるよりリスキーだと思うけどナァ。アホみたいに軍事費伸ばしてるし。

・メキシコから米への移民は減っているという記事を見かけたような気がする;

・エリツィンの民営化で経済が混乱したけどプーチンが安定させたという書き方には強く違和感がががが; たまたま原油価格が乱高下したせいじゃないっけ。

・韓国褒めすぎじゃない?R&Dが盛んとは書いてあるもののノーベル賞を取るようなサラリーマンがいるとは聞かないし。あと歴史認識がおかしくて、日帝は台湾と同じくらい韓国にもインフラ投資をしたはず。

・日本の音楽市場って世界第二位の規模なのね、随分大きいんだな。

・「2位の都市が1位の都市に比べて1/3の経済規模なら政治制度が安定している」とか「現地の有力投資家、現地の中小企業や政府企業、そして海外投資家の順に資本逃避が起きる」とか「企業が多国籍化するのは必ずしも喜ばしくない、その国から逃げているだけかも」、わかりやすいお話ではあるもののちょっと胡散臭いような^^;
posted by Char-Freadman at 11:46| 北京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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