2012年05月01日

ご飯の美味しい経済学

ご飯だって需要と供給のもとに成り立ってるんだから、経済学を使えばもっと効率的に食事ができるのだ。新鮮かつ創造的な供給者は誰で、需要者に情報が行き渡っているのはどんなときかを考えていくとよい。本書は「食事は大事」「安くても良い食事にはなる」「賢い消費者であろう」という信念を伝えるために著されている。

"An Economist Gets Lunch" by Tyler Cowen



アメリカの食事が残念になったのは商業化のせいではない; 禁酒法の時期に良いレストランが潰れ、二次大戦で質より量という流れが生まれ、移民排斥がなされたため。レストランはワインで利潤を得るので、アルコールを売れないと大打撃を被る。ワインを供するフレンチは特に深刻だった。また大戦では女性労働が必要となり、便利に食事の出来る缶の文化が広まった; 翻って欧州ではそもそも農業自体が困難となっており、自給自足の生活を強いられたため皮肉にも食事の質は保たれた。またアメリカでの育児では子どもの望むものを与えがち; しかし子どもは甘いものや菓子が大好きで、ファストフードの餌食となる。テレビは夕食時に面白い番組を配信していたため、時間をかけて準備することへのコストが高まった。

エスニックのスーパーのほうが食の流通に気を遣っているからいいかもしれない。試してみると、安上がりで健康的な食生活になる。最初に時間はかかるものの慣れてしまえばすぐ気に入るだろう。緑のものが欲しければ中華食材店に行けばいい。自分の食生活をちょっと変えるだけで優れた食品を発見できるかも。

良い外食をするには以下の点を覚えておくといい。原料集約的ではなく構成に集約的な食べ物を選ぶこと。補完性(ご飯があるとより楽しくなるもの)のある店のレストラン、たとえばカジノの経営するレストランを選ぶこと。郊外や大通りから外れたところに立地している店、顧客が家にいるかのようにけたたましく振る舞っている店、店員がブサイクな店なども狙い目。
アメリカのバーベキューは多様かつ伝統がある。古典的な店や機械に頼る店もあれば、開店時間もまちまち。ソースも添え物も美味しい。
ベトナム料理店は美味しい。タイやインド料理は人気を博したがゆえに質は低下気味。日本は高賃金な国なため低価格な良い日本料理を見つけるのは至難の業。韓国料理なら野菜。Hunan(湖南)やCanton(広東)と表記のある中華は避け、Sichuan(四川)とある店を選ぶとよい。とにかく、あんまり聞いたことのないものを選ぶとよい。それを真に必要としている顧客層があるから。
品種改良により農業の生産性が伸びたことは緑の革命と呼ばれる。肥満や飢餓を解決するのは、100年前の農業に戻るのではなく、新しい技術を採り入れること。近年農業の生産性は伸び悩んでおり危機が生じているが、遺伝子組み換え食品は栄養価も高く収穫量も多いので、アジアやアフリカでの飢饉を解決する方策となろう。
不買運動は必ずしも環境に優しくない。環境税で市場を利用したほうがより効果的。ゾーン規制を撤廃して都市化したほうがエネルギーは効率的になるし、安価な味の食品を楽しんだり、環境によくない食品は高値にし、精製された砂糖の利用は避け、皿は手洗いし、無駄な食品の購入や車の運転を減らすとよい。
アメリカの「メキシコ料理」と本場のそれとは異なる; 安全面に課される基準と、一般家庭が可能な調理方法が両国で異なるためだ。豚・牛・鳥・チーズやラードに課されるFDAの基準は重い。
旅行では現地の食事を目一杯楽しむべし!東京では、有名なところに降りて歩き回ったり、地下鉄の正しい駅・正しい出口を使い、タクシーの運ちゃんに頼むとよい。本場のエスニックを楽しめる。安上がりなので日本料理以外に金を使ってもイイかも。居酒屋もお勧め。シンガポールなら屋台(ホーカー); 安いし衛生面の心配もない。インドならホテルの料理。パリにいるなら、お金をかけない限りロクなものは食べられない。ミシュランを使うなら安い店に焦点をあてるべき。イギリスならエスニックに行っとけ。ドイツやシチリア島やイスタンブールは安いし美味しい。イタリアにいるなら、ベネチア・フィレンツェ・ローマなどの観光客向けの店は避けるべし。
有名店のシェフによる料理本はしばしば役立たず。自炊に使う器具を自省し、よく使うものは質のいいものを選ぶべき。料理は敵ではない;自炊に電子レンジや冷凍食品を利用したってよいのだ。

アメリカ(特にNYとDC)在住でご飯がまずいとお嘆きの貴方に!

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(感想)
・外食探しに経済学を使うというのは普段からやってるので、その点は目新しくなかった。ただ、規制が食文化にもたらす側面が大きいかもと言うのは面白い。料理って結構変遷するんだよね。たとえば四川料理はかつて辛くなかったし。

・町外れに行って買い物やら外食やらするにはアシが必要なはずなので、「車を持つこと」という前提の指摘が欠けてないかな。まあ著者にとってはあまりにも当たり前のことだからかw

・(先進国での)ファストフードのメイン顧客ってガキなのかー。言われてみれば中高生がたむろしてて客層よくないね。ただ途上国ではちょっとしたブランド品みたいな店にも見える。

・アメリカのメシがマズイのは女性労働が進出している裏返しでもあるのね。あんま罵倒するのやめることにしようっと。不満はあるけど。あるけど。。。;;

・空港のご飯が美味しくなったというのは納得できないw成田のご飯は高くてマズイ。

・中国人が食を気にする???段ボール肉まんやら髪醤油という都市伝説の発祥地では^^;

・アメリカで食べるエスニック料理がまずい理由を供給面から語ってる(9章はエル・パソとシウダー・フアレスという米墨の隣接地区を比べているので、同じ需要があることが暗黙の前提になっている)けど、需要面のほうが大きいんじゃないかナァwびっくりするくらい味覚がおかしいと思うけど。。。

・アメリカでもご飯の美味しいエリアってあります。参考までに↓(※ネタバレです)


・学術に興味があって世界の大学ランキングを眺めると愕然とする;
http://www.topuniversities.com/university-rankings/world-university-rankings/2011
うわっ……私のご飯、マズすぎ……
留学を考えている人は料理の腕を上げることを強くオススメします^w^

・東京に関する著述はきわめて精確だった!w
「英語を話せる人は多くないし、日本語は難しい。通りの名前は秩序立ってないし、新宿駅は難解。(略)名店は地下とかに隠れてる。」
$5でまともなもんが食べられるのは驚異ですね。食道楽にとって天国だのう。

・イギリス観光で「エスニック行け」って、イギリス料理自体はアレってことだよなw明示的に書かれてはいないけどw
posted by Char-Freadman at 19:35| 北京 🌁| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
面白いまとめでした。m(_ _)m

>アメリカのメシがマズイのは女性労働が進出している裏返し

日本で女性の社会進出が進むほど、飯がまずく…。どう考えてもメリケン人の味覚の問題です(笑)。

日本の食事の良コスパは労働環境がアレだからではありませんか^q^。労働者をしばき上げて高品質低価格を実現するイノベーション。新宿駅は迷路です。

近所に開店したカレー屋が若くて容姿端麗な女性を使って客引きしてました。繁盛しているようには見えないのに食●●グでのレビュー実績も強調し始めました。本当にありがとうございました。
Posted by k at 2012年05月01日 21:26
日本の場合なら和食の味を日清が頑張って守ってくれると期待できますよね、たとえ冷凍であろうとw

外食産業はしばしば叩かれますね。労働法がおかしいと居直る始末。

可愛い子と食べたければデートにでも誘えばいいわけですし、店員さんよりは味に優先順位を付けるのが普通だと思うんですけどねーw
Posted by Char at 2012年05月02日 10:58
>労働法がおかしいと居直る始末。

どうやら同じインタビュー記事を読んだようです(笑)。オフィスに来させる仕事で業務委嘱契約を使っている会社はブラック臭がプンプンしますね…おっと誰かきt…
Posted by k at 2012年05月05日 19:51
あっ…。業務委嘱契約⇒業務委託契約、です。
Posted by k at 2012年05月05日 19:53
(ま、まあ実際に競争環境がどうなっているか統計的にデータをみるまでは痛罵するのは控えるのがマイジャスティスです。。。^^;)
Posted by Char at 2012年05月08日 01:13
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