2012年05月08日

中世国家の財布事情

中世〜近世の国家財政に興味が湧いたので目を通してみた本↓

"States of Credit: Size, Power, and the Development of European Polities", by David Stasavage



都市国家と領域国家と、中世には二種類の国家があった。前者には小さい地理的規模という優位と流動的な資産を持ったエリート層の存在があり、内包的な議会をうみ信用借りができるようになったことを示していくのが本書の目的。

2章は都市国家と領域国家の財政の違いについて。都市国家も領域国家も傭兵への賃金を支払う必要があった。都市国家は領域国家より早く長期国債の発行が可能になった。また1500年以降に領域国歌も発行するようになると、それらより低利率での支払いを可能とした。
3章はヨーロッパでの代表制の進化について。何らかのグループが王からの承認を得るという形か、または王が財政のために開くという形で議会が生まれてきた。都市国家は規模が小さいために会議の頻度が高く、代表者が働いていることを確認することが容易だった。また都市国家は商人によって議会の椅子が占められており、国債の発行の認証も議会が担っていた。領域国家の議会は、新しい税に関して合意を得るために開かれていた。
4章は負債発行と政治制度の関係について。国家が支払いを果たせないリスクがあり、貸し手には履行を果たすことを監視する代表者を選ぶことができ、国のトップはデフォルトのリスクを下げることは監視抜きには嫌がるとする。このとき監視コストが低ければ、より監視するようになり、借りるコストも下がり、より借りることが出来るようになる。都市国家内でも差があり、より商人により運営されているほど信用借りがしやすくなることが示されている。
5章は都市国家の起源について。843年、カロリング朝はヴェルダン条約により三分割された。その中で特に中王国の分裂は早かった。その後西には西フランク王国、東にはバヴァリア(バイエルン)を中心とするオットー朝(神聖ローマ帝国)が現れたが、ロタリンギア地方は政治的にずっとばらばらであった。このエリアの都市が自律を保てたのはこのため。メルセン条約の国境線からの距離を操作変数にし、都市の発展をみている。
6章はケルン・ジェノバ・シエナを具体的に取り上げる。どの都市でも、商人の議会での存在感が信用借りのしやすさと関係している。
7章は都市国家が信用借りの出来なかった理由を探るため、フランス・カスティリャ・オランダを取り上げる。フランスにも一応は議会があったものの王の介入する余地は大きく、またパリ以外から資金を調達する権限もなかった。土地の広大さと、議会がしっかり利益を代表していなかったのだ。カスティリャは絶対王制、オランダはそうではないという違いはあれど、双方の財布事情は同じように地方の商人に握られていた; しかしカスティリャは広大なため契約の履行の確認が困難であり、資金調達がしづらくなってしまった。
8章はまとめ。戦争は支配者にとって課税のための交渉を可能にする議会を必要とさせた。情報獲得のためのコストが大きいと、コミットメント問題を解決するのは困難。革命を避けるために民主化するという議論は、一度権力の地位に就いたらその特権をコスト無くふるえることを暗黙の前提にしている。商人による寡占は、財政上は優位だったものの、結局は新規技術をもつ人の参入を阻害したり、高リスクなビジネスから低リスクなビジネスへと移行したりするのかもしれない。

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(感想)
・大量の回帰分析が出てきて頑健性のチェックに辟易するものの論旨は分かりやすく、大変読みやすかった。

・堺や今井町などの都市国家が、伊賀・甲賀・雑賀・根来などの傭兵で名高い地域の近くにあるのも、同様の理由かしらん。

・「経済成長の決定要因は地理じゃない?」
→「いや、政治制度じゃない?」
→「政治制度を決定するのは地理じゃない?」(イマココ)
混乱してきた。

・このプリンストンの経済史シリーズいいなあ、全部邦訳されないかな〜
http://press.princeton.edu/catalogs/series/pehww.html
posted by Char-Freadman at 00:56| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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