2012年05月17日

南米の失敗

母を訪ねて三千里というお話をご存知だろうか。主人公の母親は、イタリアからブエノスアイレスに出稼ぎに行った。そう、南米はかつて先進国だったのだ。

ではなぜ今日北米と南米に差がついたのだろう?そんな興味の湧いた人には本書がオススメ。

"Economic Development in the Americas since 1500", by Stanley Engerman & Kenneth Sokoloff



2章は新大陸の初期条件について。北米と比べて南米では、白人は相対的に少なく、富は不平等であり、経済発展に全員が参加できるような政治・経済の制度は整えられなかった。人口が同質的なほど、機会の平等が保たれるような制度が発達していた。
3章は制度の役割について。富と人的資本と政治力の不平等は制度によって保たれていったが、その源泉は土壌かもしれない。砂糖その他の商品作物が栽培されたエリアは特に不平等であった。それらの作物は奴隷による大量の労働が必要となったのだ。いっぽう北米で可能だった農業は家族経営によるものだった。参政権・移民法・教育といった分野で、この差は維持されていった。
4章は選挙権について。人口が同質的であり、より平等な地域であるほど選挙権は広がった。南米では識字能力によって選挙権は制限されることとなったが、北米では白人については選挙権が次第に認められていった。合衆国にあっては、より労働力を必要とした西部の開拓地は選挙権を認めやすくなっていた。
5章は初等教育について。アメリカでは草の根運動で公立の学校教育がひろまることとなったが、南米の多くの国ではそうではなく私立の学校や大学のみが創設された。これは(1)富が一部に集中していたので、公立校を建てるメリットがなかった(2)人口が異質であり集合行為問題を解決するのが困難だったため。とはいえアルゼンチンやチリやコロンビアの高地では移民を引き寄せるため、教育に投資することになった。北米では地方が教育方針を握ったが、南米では中央政府が決めていった。
6章は税制について。途上国では所得の把握は困難なため、関税や消費税や物品税に収入を頼るようになる。とはいえ、北米と南米の差は19世紀半ばには既に存在した。南米では政府支出が抑えられ、課税もまたされなかった。北米では地方と中央政府とが両方財源をもち、より累進的になり、政府の規模もまた大きくなっていった。国有企業からの収入も南米では重要だった。
7章は土地・移民法について。北米では不法居住者にも土地が認められ、来るものは拒まずという方針だった。南米では移民は制限された。
8章は銀行の発達。ブラジルやメキシコでは政治権力者が銀行とグルになり、少数の銀行による寡占が生じてしまった。アメリカでもそのような結託はあったものの、次第にそれに抵抗する勢力があらわれ、多くの銀行が設立されることとなった。信用借りするには議会が必要だ。
9章は植民政策について。植民地の人口構成を変化させたのが最大の影響とみている。不平等を長続きさせるような制度が維持されていってしまった。
10章は制度的要因と非制度的要因について。異なる制度がどちらも成長に適していたり、制度もまた内生的たりうる。成長に不可欠の制度というものは、歴史を見る限りなさそうとのこと。
11章はまとめ。社会が取りうる制度のありようは多様。古典派経済学に対抗した制度学派のときから制度への関心はあり、近年さらにその傾向は増している。これからもその分析は実りのあるものとなろう。

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(感想)
・地理要因は政治制度の発展に効いてくるからやっぱり重要じゃないかーAJRのばかやろー。
・砂糖やコーヒーが大規模に向いてて、小麦が小規模に向いてるってのは、当時の技術を反映しているわけだよね。
→技術が根源的理由なんじゃない?
→技術が進展するのは政治制度が発達していて特に所有権が守られているときだとか
→以下∞ループ
頭がおかしくなりそう!!!
「生産様式が制度を決める」「階級間で闘争する」というマルクスの思考方式はまだまだ息づいてるのね。
posted by Char-Freadman at 12:57| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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