2012年05月18日

新興国と新しい貿易パターン

今号のJournal of Economic Perspectivesは100号記念ということで、編集者が気合いを入れてきている。なんとKindleやNookに対応するようになったとのこと。
http://www.aeaweb.org/jep/mobile.php

読みやすいしブログのネタに丁度良いので、学習のコミットメントとして適宜とりあげていってみます(宣言)

ということでさっそく第1段、"The Rise of Middle Kingdoms: Emerging Economies in Global Trade", by Gordon H. Hanson
Journal of Economic Perspectives, Volume 26, Number 2, Spring 2012, pp41-64

近年、先進国はふるわない一方、中位所得国の伸びは著しい。本稿は貿易パターンが変化してきたことを示していく。1950年代から1980年代までは、先進国間の北北貿易が顕著だったが、南南貿易や南北貿易といった形が増えてきている。85年には先進国間の貿易は世界の8割だったが、ここ10年では半減しているのだ。

☆南南貿易
・1994-2008で途上国でのGDPに占める貿易額の割合が高まった
・途上国での輸出入の相手は途上国になった
→貿易障壁がなくなったから?; 実証的には影響は薄い
→国際的な生産ネットワークが拡大したから?; 加工貿易という形が進化したというデータは乏しい
⇒より国際的な特化が進んでいるからかも!!!

☆比較優位説への回帰
80年代にはリカードモデルの受けは悪かった。国のサイズや距離でだいたい説明がついた(重力モデル)からだ。しかし近年は比較優位説に再度注目が集まっている。Eaton and Kortum(2002)はリカードの比較優位説が重力モデルと整合的であることを示した; 技術の性能と配達にかかる貿易コストによって相手国の市場のシェアを獲得すると見ていったのだ。またFeenstra(2010)は国際的な生産ネットワークのなかでの中間財の供給における比較優位の存在を強調している。
また、資源の少ない途上国が資源の多い途上国(中印)から原料を輸入するというパターンが観察されている。

●特化
中位所得国では、アルゼンチンやブラジルが農業を、ロシアと韓国と南アフリカが鉱業を、韓国とマレーシアとタイとフィリピンが電機産業の輸出を伸ばしている。中国とインドは特徴的で、高所得の国々に輸出品を送っている。
北から南への海外直接投資も、またその逆も伸びている。

●特化の変遷
衣服や靴を輸出していた国が、電器を輸出するようになってきた。中国は携帯電話やコンピュータを組み立てて輸出してきている。コンピュータへの特化と、依然として低価格品を輸出することが中国の特徴といえる。とはいえ高品質のものを作り上げる能力はある。

●超特化というナゾ
少数の製品だけに特化するということが多くの国で見られる。低所得国では石油・アルミニウム・茶・コーヒー・ナッツ・木綿・ダイアモンド・銅・織物、中位所得国では石油・半導体・自動車・織物・冷凍魚・サトウキビ・アルミニウム鉱石・鉄の合金・銅・船などを輸出している。両者の差は教育程度と使う機械にある。
なぜか?
→企業の生産性の違いのせい?相手国の規模が小さい割に貿易障壁が大きい場合、それでも輸出がペイするほど高い生産性がある企業がなくなってしまう。このため何も取引されない財が存在することになる。各種のMelitzモデルでは輸入国のサイズが小さい場合に取引が無くなることが予見されるが、実際には取引は行われている。
→Eaton-Kortumで説明はできるか?技能の差が貿易パターンを導くことになるが、取引がないという状況はモデルからは出てこないはず。超特化までは説明し切れない。
→輸出品は生産に外部性があるから?ある企業が生産を拡大すると、知識や金銭のスピルオーバーにより他の企業のコストも下げることになる。でも、低所得・中位所得国で輸出されるのは多くが一次産品で、外部性があるような製品とは言えなさそう。

☆まとめ
中国の成長の原因や、国際的な厚生、高所得国にもたらす影響といった点が研究されてきている。
・近年の取引増は付加価値の真の量をどれだけ表しているか; どれくらい特化が輸出シェアの伸びをもたらしているのだろう
・輸出への高い特化の理由はなんだろう
・中国政府は工業政策をとっているんだろうか?
・コモディティのブームはどれくらい低所得国の生活水準に影響するんだろう
国際経済学はこれらの疑問に答えていきそうだ。

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(感想)
・各時代の貿易パターンを受けて貿易論が発展しているのが面白いところ。

・今号は貿易特集になっているようだ。寄稿者が豪華すぎるw

・半導体を輸出するのは「中位」所得国です。ちなみに日本は「高」所得国です。

・そういえば工場が先進国に回帰しているという記事もあるね;
http://www.economist.com/node/21552901
貿易パターンはホントに豊かだな〜。
posted by Char-Freadman at 13:02| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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