"Unequal Democracy: The Politial Economy of the New Gilded Age", by Larry Bartels
1章は不平等に関する基本的なデータを示す。80年代以降不平等は拡大した。技能偏重型成長が指摘されるものの、コンピュータ科学者の賃金はさほど伸びておらず、政治要因も寄与しているだろうとみている。平均的には、民主党政権では共和党政権に比べて、中位所得者の収入は2倍伸びており、また低所得者の収入は6倍伸びている。
2章は二次大戦後の各大統領を比較している。低所得者の伸びや所得の不平等は、共和党政権において一貫して悪化していた。インフレの度合いは両政権で同じ程度なものの、共和党政権での失業率は高くGNPの伸びも低い。民主党政権は2年目に予算を拡大し、その後縮小する。共和党政権はその逆が見られる。(政治循環)この章以降、なぜ多くの人のためにならないにもかかわらず共和党が勝つのかについての分析がなされていく。
3章は階級ごとの政治行動について。南部は民主党の基盤だったが、次第に共和党化していった。所得分布の層ごとに階級をわけた後、言われているようには保守化していないし、文化や価値観や宗教といった点より経済的観点が重視されていることがわかる。
4章は投票者の心理について。民衆は視野狭窄であり、選挙直前の年の経済状況しか考慮しない。共和党はイデオロギーのとおりに2年目に予算を縮小させ、選挙になると拡大するため、生活が良くなったと錯覚するのだろう。またどの所得層も「高所得層が得をしているかどうか」を考慮していることがわかる。また高所得層ほど選挙で寄付をしている。
5章は不平等について。概ね機会の平等が与えられるべきという立場にはみな納得する。富者より貧者のほうが共感をもってみられる。不平等の度合いは、実際にはそれが低くなりつつあった時期は高かったと誤解され、市民はあまり精確に平等度を測れていないことがわかる。政治への理解が高まるほど、不平等に関する認識が分極化し、事実の理解にすら影響を与える。
6章はブッシュ減税について。強きを助け弱きを挫く減税だったが、概ね支持されていた。政治的価値観や自分の経済的負担に関して減税がどう影響するかあまりよく考えない人が多かったようだ。
7章は相続税について。影響を受ける人はあまり居ないにも関わらず、相続税の廃止は常に大衆の好むところだった。民主党の頑張りにより維持されてきたとみなせる。
8章は最低賃金について。インフレ調整後の賃金は、ここ40年で40%も減額してしまった。賃上げをしても概ね悪影響は少ないだろうという推定や、大衆からの好意的な反応にもかかわらず賃上げはなされてこなかった。これは共和党政権が反対したため。
9章は政治家の行動について。民主党も共和党も同じように低所得層にはあまり関心を払わない。民主党は中所得層に、共和党は高所得層により注意を払う。高い所得の層は直接・間接に政治家へ影響を与えることができる。政治家は大衆の望むものより自分のイデオロギーに忠実に政策を選ぶ。
10章はまとめ。政党間競争があっても必ずしも貧者のためにはならない。ハリケーンカトリーナは貧者が見捨てられてしまう例であるが、政治に出来ることは多く、改善していくべき。
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(感想)
・はっきりと共和党批判にまで踏み込んでいた。狂愚漫や捨愚律の批判も的外れではない…のか…。
・共和党の政策は低所得・中位所得の人には損、この事実の指摘だけでなく、「それでもなお政権を取れるのはなぜか」も考察しているのが面白かった。不平等の文脈でよく引用されるのもわかるというもの。まあでもデータが少なくいくつかの統計分析がビミョウなのはご愛嬌、、、^^;
・本書が執筆されたのは2007年なので、スーパーPACに関する記述は見られない。ますます高い所得の人に有利な政策が取られそうね。
(cf; http://whynationsfail.com/blog/2012/3/20/whos-afraid-of-super-pacs.html )
・経済学者は不平等を経済活動の影響から説明しようとするけど、政治学者は政治から説明しようとするな〜w経済要因だけからじゃ説明付かないよね→多分政治のせいじゃね?と。
・はて、市民が視野狭窄なのなら、それを前提にした行動を民主党がとらなかったのは何故かという疑問が湧いてくるなあ。
訂正いたしました。