2012年06月06日

資本主義化した中国

毛沢東死後の中国経済の歩みをまとめた本がこちら。

"How China Became Capitalist", by Ronald Coase & Ning Wang



なんと著者の一人はロナルド・コース、102歳!
1章は毛沢東の政策について。農業の発展を目指した大躍進はむしろ大飢饉を引き起こし、文化大革命では知識人階層や官僚が犠牲となった。毛沢東のもとでは地方分権が進められた。
2章は毛の死後について。華国峰は四人組を逮捕し、イデオロギーから離れた政策を採るようになった。「大後退」と揶揄されたものの、一定の成果が上がった。外交も開始し、ケ小平は各国を視察した。
3章は市場改革について。農地は次第に私有化され、農業が発展した。国有企業が相変わらず非効率な一方で、郷鎮企業も勃興した。労働力は都市に戻った。複数の都市が経済特区として指定され、市場競争が行われるようになり、また外国投資も行われるようになった。国有企業は一定程度のノルマを納めたら市場を利用していいという二重の路線(dual track)のもとで市場に馴れていくことになった。ケ小平は「語るな。やれ。試せ。」という実践的な思考の持ち主であり、毛とは正反対であった。
4章は社会主義化の市場改革について。陳雲は鳥籠理論を提唱した; 経済は鳥であり、政府は鳥籠としてその大きさを変えるとした。国有企業は主要な地位を占め、私企業により補完されるものとみていた。各種銀行が建ち、地方政府は資本の獲得のために競争するようになった。また法の改革も進んだ。
5章は社会主義からの離脱について。学生運動にも温情的であった胡耀邦と趙紫陽が追放された80年代末期は危機であった。ケ小平は南巡講話して改革の遂行を促し、保守派に圧力をかけた。市場以外にも人々の行動を調整する「組織」というメカニズムがあり、それは中国にあっては地方政府だった。各地方で重複するような投資は行われたものの、市場において様々な挑戦がなされるのは普通のことであり、問題視するには当たらないとされた。各地方の競争により海外資本が誘致されるようになった。
6章は資本主義化について。国有企業の再建は進んだものの、コモディティ部門その他ではまだまだ残っている。また大学の自治はなく、アイデアは政府に独占されており、まともな科学者を輩出することがない。これらは大きな弱点となっている。

近年の中国に興味のある人はどうぞ!

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(感想)
・はじめタイトルをみたとき「えー中国が資本主義とか。コースもぼけちゃったか;;」とか思ったけど、人民公社とか毛沢東思想とかが流行ってた頃と比較すれば断然資本主義化してますね。

・華国峰、ケ小平(胡耀邦&趙紫陽)、江沢民と危機がありながらも市場改革が続いて発展したという点は特に面白みはない。でもコースらしく、『市場以外にも人々の行動を調整する「組織」というメカニズムがあり、それは中国にあっては地方政府だった』という点は興味を惹かれた。あと近年の中国の弱点も面白い点かな。

・でも政治家のインセンティブにあんまり注意を払ってない感じなのは残念。
(i)そりゃアイデアが百花繚乱なら経済伸びるだろうけどさー、既存の政治体制を脅かすんだったら妨害されるぜ。政治家の妥協を引きだすような変化を望まないと。
(ii)政治家が経済の発展を望んでいることが前提にされているけど、違うんじゃないかなー。あくまで政権を維持することが政治家の目的。政敵を糾弾するための理由としてイデオロギーが使われているだけ。文革で走資派とされたのは毛の批判者だけど、共産主義者は多いし。毛沢東にとって国民生活とかはどうでもよくて、権力にしがみつくことのみには長けていたとみたほうがしっくりくる。ケ小平も学生運動自体には反対だったわけで、実際何人か六四天安門事件で死んでるしね。語録で何を言っていようと単なるリップサービスで、真に受けるのはバカというもの。彼らが実際に何をやったか見ないと。
(iii)なので「次第に国民生活が豊かになったのはなぜか」を考察するには、「なぜ政治家は国民に力を与えることに妥協するようになったのか」という視点で語って欲しいナァ。

・二重の路線ってよく称賛されるけど、もっと過激に市場開放できてたらどうなってたんでしょうね。とにかく政治家の手から力を奪うのが先決みたいなアドバイスもあるよね。
http://www.voxeu.org/index.php?q=node/7593

・もはや共産主義ではないそうだけど、55年体制下の日本のように発展できるかな〜。民主化しないと成長はどこかで止まるとみるむきもあるけど、どうでしょう。
http://www.huffingtonpost.com/daron-acemoglu/china-superpower_b_1369424.html
posted by Char-Freadman at 08:52| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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