2012年10月10日

真似と革新との共存

知財権を巡る議論はかまびすしい。9月にはAppleとサムスンの訴訟合戦があったし、10月1日から違法ダウンロードは刑事罰が課されることとなった。その基本的ロジックは、以下のとおり;

知識は生み出すのは大変だけど、生み出されたものを手に入れるのはタダでできる。そこでアイデアに権利を与えて他人が勝手に使えないようにして守らねば、

けれど、本当にそうだろうか?ひょっとしたら真似するのが簡単「だからこそ」、業界が活性化するんじゃないかーーそう語る本がこちらだ。

"The Knockoff Economy: How Imitation Sparks Innovation", by Kal Raustiala & Christopher Sprigman



1章はファッションについて。
まずその歴史が概観される。もとは上流階級がオーダーメイドしており、パリが中心だった。そのうち衣服も大量生産の時代に移り、最先端はオーダーメイドの服ではあるものの、利益の中心はアメリカになった。
かつてないほど服飾産業は繁栄しているが、これは知的財産権が守られているからではない。確かに商標権(trademark)は適用され、紛らわしいブランドロゴは規制の対象となる。しかし著作権(copyright)はまず適用されない、なぜなら「実用的なものは複製してかまわない」ことになっているためだ。特許(patent)は真に新しいものにしか認められず、また手間もかかる。このためデザインの真似が蔓延ることとなっている。
ファッションの本質は「他人と区別するシグナルを送ること」にある。このため、デザインは広まりすぎると陳腐化する。コピーがしやすければその盛衰のサイクルが早まることになるのだ。またそれほど流行を追わない消費者にとっても安価に手に入れられ、得となる。複製行為によって何が流行となっているのかがわかるようになり、その商品を買うようになっていく。アイデアが生まれてから広がるまで時間差があるのがキーなのだ。
2章は料理について。まず、外食産業が発展するに至る歴史が概観される。材料や調理過程自体は法的には保護されないが、消費者が他の店と混同しないように、店の内装や外装が似すぎないようには規制されている。一応料理人の間には規範がある; 完全なコピーはしないこと、教わったレシピを他人には教えないこと、誰から学んだか明記することだ。とはいえ料理の完全なるコピーはその性質から不可能で、実際には拘束力はあまりない。それでも外食産業が栄えているのは、コピーが当該料理人の名声を高めるため。料理人同士の評判のみならず一般大衆からの評判も大事なのだ。またコピーは不可能なため、原物と競合するというよりその宣伝となる。
3章はお笑いについて。一行ジョークが主流だったとき、ジョークを真似ることは普通のことだった。しかし産業が発展して、ピン芸人の個性が売りということになると、人のジョークを真似ることは罪だと考えられるようになっていった。とはいえ各種の法でジョークを保護することはできないので、芸人間での規範があるのみとなっている。
4章はフットボール、フォント、ファイナンス、データベースについて。これらの分野ではやはり権利は保護されないものの、業界は繁栄している。技術の進歩に必要とされるのは、先駆者のみならず、改善する人たちだ。フットボールではパスがゲーム自体を複雑化し、追随する監督たちはそれぞれ工夫して戦術を定着させた。フォントでも、新聞やらディスプレイやらに適した字形が生まれていった。インデックスファンドを考案した会社は今でも最大の発行者となっており、先行者利益は十分大きい。データベースの利用を阻むような保護をした欧州ではなく、データの編集方針自体のみを保護した米国にあって、データ産業は発展した。工夫を促すような制度が必要なのだ。コピーしやすいことでコストが下がることがある。
5章はまとめ。流行り廃りを作り「故意に陳腐化させる」ことでiTunesは音楽で利益を生もうとしている。経験自体はコピーできないので、たとえば雰囲気の良いレストランやらライブやらが人気になりつつある。オープンソースの特徴は、他の人が改善しやすくしていること。競争・コピー・繁栄は、共存できるのだ。

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(感想)
・とはいえ「知的財産権が守られている世界」を比べているわけではないのがロジックとしては弱味。
・ファションのサイクルには実に迷惑を被っている; 1~2年保てばいいため、メーカーが財の耐久性を意識しなくなるからだ。
・漫画やラノベについても似たような分析するならこんな感じかな。
(i)主人公にも流行り廃りがある。熱血→無気力→難聴系/俺tueeee(イマココ?)
(ii)タイトルでどんな内容なのか読者が予想しやすくさせている。VIPのスレタイみたいなのなら非リアからみた日常風景、『○○○○!』とかならキャッキャウフフ、とか。コピーがオリジナルの良い宣伝媒体になってると言えそう。(帯にコピー元から推薦載ってたりするし!)
※俺妹もはがないもはまちも好きです、念のため。
(iii)消費者により盗作検証がなされる。(好きな作品名)+パクりでググると気分を害すること請け合いである。むしろ漫画創作を害してるよね。
(iv)二次創作が盛ん。有明の熱気といったら・・・。法的にはグレーとよく言われますね。
(v)ミステリーものはピン芸人やマジックと同じく、トリックを真似るのは御法度となってそう。ミステリーを漫画化すること自体に価値があるから「以下の作品を参考にさせていただきました」と載せていれば金田一少年は叩かれなかったのかも。
・この本の著作権自体はどうなってるのか気になるところw
posted by Char-Freadman at 04:36| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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