2012年11月11日

王様は裸だ

アメリカの大学では一般に、入学審査の際に黒人が優遇されている。このアファーマティブアクション、一見すると黒人にとって恩恵になりそうだけど、むしろ悪影響をもたらしていると主張するのがこちらの本だ。

"Mismatch: How Affirmative Action Hurts Students It's Intended to Help, and Why Universities Won't Admit It", by Richard Sander, Stuart Taylor Jr.


まず以下のように、この問題に関する概ね合意事項が述べられる。
・高等教育でのアファーマティブアクションは人種選好にみられる
・人種には「学力が拮抗している候補者間でどちらを選ぶか決める最後の手段」と呼べるより多くの比重がかかっている。
・人種選好をもつほとんどの大学で、暗黙または明確な比重が人種に置かれている。
・人種選好は「ドミノ倒し」;良い大学がマシなマイノリティを得ると、悪い大学にはますます悪い候補しか残らなくなる
・追いつくのは難しく、落ちこぼれてしまう
・ドミノ倒しはかなり下のレベルの大学まで続くかもしれない
・アスリートや卒業生の子弟といった点でも同じようなミスマッチが生じているかも
・真に困窮しているマイノリティを救えているだろうか
・アジア系の学生が割を食っているのか
・人種選好を撤廃しても学力以外の点を入学審査で重視したら現状は改善されないかも

優遇されて入学してくる多くの黒人は、当該校で学ぶ準備をしっかりできていない。エリート校でなければ十分についていけたはずなのに、落ちこぼれてしまう。著者はこの「学力に不相応な学校に入ってしまい落ちこぼれる」仮説をミスマッチと呼び、本書の多くをその検証に当てていく。黒人は仮にエリート校を卒業できても、優遇を受けていたから大したことないのだろうと思われてしまったりするのだ。

Sanderは研究で様々な妨害に遭っている;アファーマティブアクションにまつわる不都合な真実を語らせないため、大学当局はデータの開示をしぶり、また見当違いの論難を浴びたり要職から遠のけたりする。人種主義者と思われたくないというタブーがあったり、各種団体から突き上げにあったり、この問題を語ること自体が困難になっているのだ。

では仮にアファーマティブアクションがなかったとしたらどうなるか?カリフォルニアでは大学入試における人種選好が禁止された;前後を比べると、黒人やヒスパニックの入学者は減ったものの、学位取得者の数は変わらなかった。これはおのおの身の丈にあった大学に進学するようになったからだ。
でも、この状況は悪化しつつある;司法の手に隠れたやり方で人種選好をするようになってしまった。ミスマッチは続きそうとのこと。最高裁判事は人種選好を黙認していると受け止められており、状況の改善には結びついていない。

学習環境に関する研究にふれた後、最後に提言もなされている;調査の透明性をあげてデータを使いやすくすること、人種ではなく所得階層によって下駄を履かせること、人種に基づく奨学金は廃止すること。

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(感想)
・ぶっちゃけ日本人にとっては「ふーん」というテーマではあるかも。女性枠を設けようなどとトチ狂った提言がなされることもあるけど・・・。
キング牧師の時代から数十年も過ぎてんのに「人種は学力に関係ない」とか当たり前すぎることを一応書かないといけないアメリカのリベラルの閉鎖性には唖然としますね。開かれた社会とはほど遠いなこりゃ。

・妨害に遭ってるとはいえ、本書の主張を支えるのが唯一カリフォルニアでの事例というのはちょっと弱いかも。

・「アファーマティブアクションは悪影響」という空気を読まない発言をしているのが経済学者ばかりでほっこり^q^
(統計学者のイアン・エアーズは名指しで批判されてたけど・・・w)
経済学部以外の人はテニュア取るまでこのテーマに触れないほうが良さそうですね!

・「アファーマティブアクションが逆効果というのに気付いていない」というより、気付いているからこそデータの開示を拒むのでしょうね。医者やら弁護士やらに頼むとき、黒人は避けたほうが良さげか(統計的差別)。

・そもそも「大学」が「多様性の維持」すべきとも思わねーけどなー。研究すんのがエリート校の本質じゃないの?黒人やヒスパニックならではの知的多様性がこの方法で保護されるとも考えにくいし。他の組織にやらせりゃいいよ。
posted by Char-Freadman at 09:35| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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