2012年11月26日

コスト病

教育や医療の生産性の上昇は低い。生活に占めるそれらの出費のシェアは伸び続けるだろう。ではどんな未来が待っているだろう?正しく理解すれば恐るるに足らずと主張する本がこちらだ。

"The Cost Disease: Why Computers Get Cheaper and Health Care Doesn't", by William J. Baumol, Monte Malach, Ariel Pablos-Mendez, Lillian Gomory Wu, David de Ferranti, Hilary Tabish



議論をまとめるとこうなる;
・経済は生産性が伸びる"進展"部門と、そうでない"停滞"部門とに分かれる。
・"停滞"部門の製品は"進展"部門の製品に比して高額になっていく。
・とはいえ社会全体にとっては"停滞"部門の製品を消費することは常に可能;生産性の上昇は購買力を上げ続け、生活水準を改善するため
・購買力の上昇は武器や環境汚染なども買いやすくなることを意味する。
・停滞部門の製品が買いにくくなることは政治的な不安を生み出すかもしれないが、社会にとって脅威となるのはむしろ進展部門の製品があまりに買いやすくなることだろう。

ヘルスケアと教育産業の相対的コストの伸びはどの国でも観察されており、特定の国の制度が非効率というわけではない。医療事故は減り続けているし、医者間に競争はあるし、賃金の伸びはさほどでもない。

これまで多くの産業では労働の節約がなされるようになり、たとえば家事炊事は自分でやるようになったし、維持管理するのではなく大量生産品を捨てるようになった。でも教育や医療や芸術といった分野は、標準化できず、質を落とさずには労働を減らすことができない。それはこれら生産性の上昇の低い産業の製品の特性となっている。

便益は伸びているからコスト病には罹っていないという主張は誤り;一人が払っている負担はあくまで伸び続けている。経済成長を考えるならサービスや商品の質を考慮したデータを眺める必要があるけれど、ここで取り上げているのはコスト。適切な指標を使う必要がある。

ビジネスサービスにイノベーションが生じると、それを利用する他の産業も生産性が上昇する。実際医療の分野でもそれはみられる。コストを下げようと規制してもあまり効果はない。しっかり理解する必要があるのだ。

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(感想)
・一番面白かったのは測定に関する議論をしていた六章。いつも経済成長論でお目にかかるのは質を考慮したデータだけど、質を考慮してないデータも有益な指標になりえるって指摘は新鮮だった。

・ボーモル先生は90歳。経済学者は、不死身だ。
posted by Char-Freadman at 10:38| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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