2013年01月15日

女性の開発

オバマ政権で国際開発審議会の委員として指名を受けたDuflo先生( http://web.mit.edu/newsoffice/2013/obama-duflo-global-development-council.html )、JELの今季号で女性の地位向上と経済発展の関連についてサーベイを出している。どうもそれらは補完的な関係にあるようだ。

センの指摘した"Missing Women"という論題はとても有名;女性の比率は不自然に低いーー女性を産んでも得をしないと考えられたり、女児が十分にケアを受けなかったりするために。経済発展すれば女性の権利は向上するだろうし、またその逆も然り。

*経済発展→女性の地位向上
・旱魃、飢饉、疾病の際女性の扱いは悪くなる。そもそもそれらが生じなくなれば不平等度は低くなる。
・妊娠及び出産は危険な行為で、死ぬとわかっている相手には教育投資をしない。
・女性にはロクな職が無いから投資していないのかも。経済発展すれば就きうる職の選択肢が広がる。たとえば商品作物の栽培が盛んな地域でのmissing womenの数は減っている。
・家事に時間を取られて労働市場に出る暇がない。経済発展すれば、たとえば電化により時間に余裕ができる。
・女性のほうが子どもに投資するとわかっているなら、経済発展により人的資本の価値が高まるほど女性に権利を与えるほうが得になる。というのも自分の子どもがよりよい生活を送れるようになるから。
・男は、夫としては妻に権利は認めたくないけど、自分の娘が義理の息子に虐待される世界は望まない。出生率が下がるほど後者の効果が大きくなる。
・とはいえ先進国でもまだ性差は残り、たとえば女性はリーダーとしてうまくいかないとか理系科目はダメだろうとかいった偏見がある。発展だけではどうも性差の平等は達成されなさそうだ。

*女性の地位向上→経済発展
・これまで、実証では「女性への教育投資のほうが男性へのそれより重要」という論題は支持されていない。乳幼児の健康状態にとってはどちらも大事。
・家計内は一枚岩ではなく、夫と妻とで求めるものが異なる。たとえばインドでは、女性は飲料水の質の向上を求めるが、男性は教育投資を求めるという具合に。法的または労働市場の改善などにより女性の権利が向上すると家計内での交渉力が上昇するため、より女性が望むものを消費するようになる。
・とはいえ女性の権利向上は「銀の弾丸」ではない。たとえば、女性の経営する企業にお金を貸し付けても大きな影響は無い。途上国における女性はいくつもの制約を抱えているため、どれか一つの制約だけを取り除いても効果は薄いのだ。職務経験の無い人にトレーニングをしてもあまり意味は無い。

(参考)
"Women Empowerment and Economic Development", by Esther Duflo, Journal of Economic Literature 2012, 50(4), 1051–1079
http://dx.doi.org/10.1257/jel.50.4.1051

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(感想)
・地位向上→発展のほうはページ数少ないけどより面白い。各種ランダム対照実験の簡潔なまとめにもなっている。実験で調べやすいネタだからか。
・不平等、すわアファーマティブアクションの出番!と論理を飛躍させないのが素晴らしいところです。
・逆の因果や補完性を考えるのはリサーチクエスチョンをひねり出す上で有益なテクニックかも・・・?
・より一般的に性差ネタ全部を扱ってる人はこちら;
http://scholar.harvard.edu/goldin
なぜか邦訳は無いけど偉大な経済史家・労働経済学者ですね。
posted by Char-Freadman at 08:05| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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