2013年02月03日

組織

現代人の多くは、愛しい家族と過ごすより仕事に費やす時間のほうが長い。それならより快適に働けるようにしたいもの。本書は、組織がどうしたら上手く動いてくれるか考察していく。

"The Org", by Raymond Fisman and Tim Sullivan



組織はそもそもどうして存在するのだろう?一人で原料調達から販売まで全ての行程をこなす売れっ子眼鏡アーティストを見ていると、組織をたてて事業を拡大すれば良いのにと思うかもしれない。市場を利用するにもコストがかかる。様々な業務のコーディネートを市場により行うか組織で行うか、適切なほうが選ばれると看破したのはロナルド・コースだった。パロアルトが今日知識の集積場となるのに貢献したヒューレット・パッカードでの働き方は、かつてHP wayとしてもてはやされたもの;従業員の自立性を重んじていた。とはいえ大企業になるにつれ、官僚的になっていってしまった。創造性を保ちたいために職人になることもありえる。

人は評価される軸では頑張るけれど、そうでなければだらけてしまうもの。賃金を業績に連動させるべきと言うは易し、けれどたとえば警察業務は広範に及ぶ。交通規制や薬物取り締まりや殺人事件など、どれも重要なのだ。課をわけて分業すれば良いと思うかもしれないけれど、それぞれの業務には関連性がある。

組織内で正しく動機付けするのは重要。衆生の救済を目指す教会ですら、牧師間で昇進競争させたり、金銭的に釣ったりする。米国の主な宗派であるメソジスト派では、新しく信徒を獲得したら月給が伸びたり、または同僚の牧師から信徒を奪ったりすると得になるように制度設計されているのだ(!)いわんや魂の救済ではなく利益第一な企業で正しく動機付けるのはなお大変。P&Gは成長を続ける成功企業ではあるけど、各人の利益衝突を減らすため事業形態は試行錯誤が続いている。

生死がかかる軍隊において、情報の素早い伝達はことに重要。上意下達は軍隊にあっては生存率を上げ、企業にあってはコスト減をなす。とはいえ創造性を潰すことにはなるので、バランスが重要。ときにはスカンクワークスのように特殊な部門を作るのもありかもしれない。

経営は本当に役に立っているのだろうか?この問いに真摯に向き合った研究がある(http://www.stanford.edu/~nbloom/DMM.pdf)。コンサル会社のアクセンチュアにインドの織物業者をランダムに選び経営指南させるという内容であり、その結果生産性が伸びたというものだ。

CEOの仕事は戦略策定に重要な情報を下部組織から抽出することであり、業務時間の大半は会議に出ることによって費やされている。情報技術は確かに伸びたものの、必要な情報を拾い上げ、また誤解なく意図が伝わるようにすることは、会議にしかできないことなのだ。CEO西化できないこと、それは全体像をつかむこと。彼らは同業他者より抜群に優れているわけではないものの、その両肩にかかっている利益は莫大なものなので、年俸はとても高くなる。CEOを株主のためにしっかり働かせるのは大変であり、よりよい経営者にバトンタッチしやすくさせるというメリットをもつゴールデンパラシュートもしばしば批判の的となっている。

右側通行から左側通行にいきなり変えるのは難しい。文化は経路依存性をもち、人々がどう予想するかの焦点となる。組織を変えるためにわざと危機を迎えることもある。

BPはコスト削減に重きを置くあまり、安全性を無視してしまった。その結果メキシコ湾原油流出事故に至った。FBIはそもそも組織犯罪に対抗するものであったが、9.11以降はテロリスト対策も行うようになっている。両方の目的を追うのは大変であり、トレードオフには気を配らねばならない。

組織を考察したい方はどうぞ!

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(感想)
・軍隊ネタ多いけど、ミリタリーオタクなのかなぁ・・・w
・著者のR.Fismanはネタ志向の経済学者として有名で、たとえば犯罪捜査に計量経済を利用できるんじゃないかって提唱している;武器売買が禁止されているはずのエリアで紛争が起きたとき、前もって軍事会社の株が伸びてたらおかしくねえ?とか。



あとは文化が腐敗に影響するかどうか検討する際、外交官特権を利用している;腐敗している国から来ている外交官ほど特権を行使して駐車し放題だったり。とにかく比較方法を考えだすのが上手く、頭の中がどうなってるのか気になる御仁。それだけに本書でも実験っぽいネタが面白かったかな。5章とか。

・組織の経済学、ハンドブックが出ていたようだ。



流行ってるのか、はたまたハンドブックが出るほど整理されてきていて参入するのは無謀なのか。さて。
posted by Char-Freadman at 01:40| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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