2022年03月18日

起業家研究のまとめ:神話を砕く!

「倉庫で若いプログラマーが仕事をして、陽気な共同創業者が投資家に対して営業トークをする」という起業にまつわる単一神話がある。でもこういうイメージはFacebookやTeslaやMicrosoftといった一部のスターに引きずられているにすぎない。起業研究のデータをよく見ていこうというのがこの本。

The Unicorn's Shadow, Ethan Mollick
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若い方が賢いなどと言われることがある。確かに野心的な決断は下せるから特殊な分野に関してはそうかもしれない。でもちゃんと寝てオンオフを切り替えているような人はよりクリエイティブで前向きであり、仕事中毒である必要はない。歳をとっていればそれだけ社会的金銭的資本がありうまくいく可能性がある。米国の全ての起業家の平均は42歳であり、急成長している企業のそれは45~59歳。起業家に向いている性格というものはない。(過剰な自信家は起業しがちではある。)共同創業者が必要というわけではない。これは、仲間がいると助けにはなるが摩擦も生じるから。一緒に働いたことのない友人と起業してはダメ。家族はアリ。報酬は摩擦にならないよう対処すべきものの、株式の割り当てについては先行きの不透明さを盛り込んだ契約を結ぶべきで、等分すればいいわけではない。

アイデアを生むのに決まった方法はない。よく寝てコーヒーを飲もう。酒も有効だが倫理的でない行動に繋がる恐れがある。多様な背景のある人を集めよう。でも考えるときは自分だけでやること。アイデアを書き出し、次の人に渡してさらにアイデアを書き足させるという方法がある。拡大している市場を探すより、自分が持っている強みを活かそう。自分が何者で、何を知っていて、誰を知っているかを問う「遂行的質問」をしよう。問題のフレーミングを変えるために、全ての制約を取り払ったり、あるいは制約を加えたりして考察してみるのも手。Twitterでフォローする既知の分野と未知の分野の割合を7:3にするのもあり。どの案がうまくいくのか科学的な手法で実験しよう。すぐに動けというリーンスタートアップは優れた方法だけど改善の視野が狭すぎたりインタビューを重視しすぎるという悪癖がある。顧客にどんな価値を生みどのように管理しどのように売りどのように儲けているかという点を掘り下げていくべし。検証可能で可謬性のある仮説を立てよう。

現状に即した投資家を選ぶべき。初期は友人や家族やクラウドファンドでいい。目標額を低くしすぎると少額の金なのに客に対する義務だらけとなってしまう。最低限いくら必要なのか現実的に見積もろう。需要がありコミュニティを形成するためにクラウドファンドを使おう。クラウド投資家は専門家と同じくらいいいものを見抜く。エンジェル投資家が見極めているのは信頼できるかどうか。加速器投資集団は格が高いものから低いものまであり、可能なら高いものにすべき。ベンチャー投資家は事業を見抜くのが上手いわけではなく、上手くいった起業をたまたま支えることができたものが割安で投資できているにすぎない。紹介されないとVCには会えない。どうにかしてコンタクトをとったら、完全に社交的なわけではないようなやり取りをし続けて順々に信頼を築いていくといい。女性や黒人などは投資を受けにくい。

聴衆によって売り込みの仕方を変えよう。プロの投資家は情熱より中身を重視し、現実的か準備万端かどうかを見ている。アマチュア投資家は情熱を重視する。創業者は合理的に見えなくてはならない(「正統性」)一方で特徴的である必要もある。エレベーターの中にいるような短時間で売り込むなら、アナロジーが役に立つ。エイリアンなら宇宙のジョーズといった具合。売り込みは非常に形式的。会社の目的を述べ、お話で聴衆を惹きつける。そして問題を提起し、いかに解決するかを語る。そして自分だけがなぜそれにふさわしいかを説明し、市場規模と競争について話し、財政面での見通しにふれる。聴衆に何をしてほしいか最後に語ろう。名前や何を着るかも象徴操作として重要。

成長は必須ではない。組織を整える必要がある。多様な人材を抱える方が革新的になれる。必要とする技能と特徴を書き出し、構造化面接で応募者全員に同じ検査記録を用いて比較可能な環境にしよう。過去の実績を聞くといい。そして組織図を描こう。戦略に合う顧客を選び、候補を絞ってテストをしてどれが適切かを決めよう。長期的な競争優位があるかを確かめよう文化はトップが去っても残る。人間関係によって適切なものを作ろう。勝利が全てというものでも生き残れるが、家族のような関係の文化でも効果的。

起業は一部の人だけが行えるというものではない。神話と戦おう。

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・起業の研究ここまで進んでるんだ〜って素直に思った。神話を砕くみたいな路線で書かれると興味湧いちゃう。これ系の話で常ではあるけど「統計データとして出てくるような企業自体が特殊なのでは」とはついつい思うけど、まあおもろかったからヨシ!
・投資家にもいろんな種類があるって知らなかった〜。一見さんお断りな中どうやってコネを辿っていくかみたいな話が具体的で面白かった。
・セラノス、事業だけ聞くと金出す気になれないから不思議に思ってたのだけど謎が解明された。名門中退、ジョブズみたいな黒タートル、キッシンジャーほかの有力なコネってあったら騙されても仕方ないかも。
posted by Char-Freadman at 19:39| 北京 ☀| Comment(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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