2012年03月08日

家賃

アメリカで家賃をいまいましく思っている人には朗報。そのとおりだ。

"The Rent Is Too Damn High", by Matthew Yglesias

http://www.amazon.com/Rent-Too-Damn-High-ebook/dp/B0078XGJXO/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1330356230&sr=8-1

アメリカでは、NYや西海岸の家賃はやたらと高い。なぜかといったら、人口密度を高めないようにする規制があるからだ。
この問題は、家賃規制で効果的に解決できると思うかもしれない。確かに既存の居住者は払う家賃が減るから得をするけど、住居の新規建設はなされなくなる。つまり、もしかしたら住めたかもしれない人が損をするのだ。
アメリカの都市で近年人口増加が著しいのは、生活費のかからない地域。職ーーチャンスーーのありそうなところをめがけて人が殺到するというアメリカの伝統は消えてしまったかのよう。これも規制のせいで、高い家賃によって実質賃金は打撃を受けている。
古典派経済学者は農業の特徴を捉えた。土地は限られているため、新しい居住者は連とを払わねばならない。でもけんせつはしない。工業革命はこの状況を一変し、土地を持つことにそれほど利益は生まれなくなった。しかし、更にサービス産業の発展によって今度は「人々の近くに住む」ことにメリットが生まれた。再び土地に価値が生まれたのだ。
投機されてるのは家ではなく、土地である。それは供給が限られているからだ。
密集についてはメリットがある。まず環境に優しい。通勤に使うガソリンが減るため。次に冷暖房効率も上がる。なぜなら、隣の部屋の室温は自室のそれに影響するから。
ジェントリフィケーションによって家賃が高額になり追い出されたという批判は外れ;もっと供給を増やせば家賃は低下するのだ。インフラ改善を人口増に伴ってのみ行うようにするとよいとしている。

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(感想)
・タイトルはこの演説からとったらしいw
http://www.youtube.com/watch?v=x4o-TeMHys0
『家賃高過ぎ党』とでもなるか。キャラが強烈w
http://en.wikipedia.org/wiki/Rent_Is_Too_Damn_High_Party
アメリカらしいネタですね。

・ちなみに私の住むAnn Arborではstudioでひと月$700くらいが相場。(もちろんファカルティはもっと高くて良い物件に住んでいるw)

・東京でも家賃と治安のトレードオフがあるね。実家のあたりはリアル北斗の拳とか言われていて、多分最も安い地域。

・密集のデメリットはあんまふれられてないなあ。
防災;消防車は早く着くようになるけど、延焼も早まる
防疫;救急車は早く着くようになるけど、感染も早まる
どの程度のバランスが適しているんだろう。現状の規制はやりすぎな気はするけど。
posted by Char-Freadman at 13:37| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月06日

文明の対価

Sachsがアメリカに関してボヤいているようだ。

"The Price of Civilization: Reawakening American Virtue and Prosperity ", by Jeffrey Sachs



アメリカの価値観は崩壊しつつある。儲け過ぎなCEOや学者は社会的責任を果たしていない。富の追求にいそしむだけで、あとはどうでもいいという態度だ。税を公平にし、社会の要求に応えるように教育を行い、将来にわたり社会の連帯を維持するという管理義務を果たす、つまり「文明への対価」を支払わねばならないーーこれが著者の問題意識だ。アメリカの現状に興味のある人はどうぞ。

政府への信頼は薄く、幸福指数は伸び悩み、中位所得は横ばいで、失業率は高く、貯蓄率は低く、CEOは儲け過ぎ、政治も機能していない。経済、社会、政治、心理といった点から分析を進めていく。

市場だけでは効率性も公平も維持可能性も保証されず、政府の助けは必要。ニューディール以降、道路やダムなどのインフラ建設・地域振興・社会保障といったサービスを政府は供給するようになった。成長の守護者として信頼を積み、60年代半ばには貧困との戦いを打ち出し絶頂期となった。しかし、金本位制の崩壊・赤字予算・オイルショックといったマクロ経済的要因によってその信頼は失われ、「政府こそが問題」と言われるようになってしまった。レーガン政権は高所得者への減税・民間予算の削減・規制緩和・政府サービスの民営化といった特色がある。研究開発の資金は削られ、ウォールストリートで不届きものが私腹を肥やすようになってしまった。

市民権運動、ヒスパニックの増加、サンベルトの勃興と都市の空洞化により、アメリカは分裂してしまった。とはいえ、平等に機会が与えられるべきこと、最大限努力すること、不運な人は救うべきことといった点に関しては、概ね同意がある。ただ、誰が税負担をしているのかに大きな誤解が生じている。重い税負担をする金持ちはカリフォルニアなどの「青い州(※)」に住んでいるけれど、むしろ高い税率によって利益を得る州は民主党に反対してしまっているのだ。

グローバル経済はアメリカの立ち位置を変えた。中国その他途上国からは低賃金労働力が大量に供給されるようになったため、技能の低い労働者の賃金は低下した。いっぽう資本は移動性が高いため、各国は税率を低くして誘致している。したがってアメリカ国内では、会社は勝ち、労働者は失うものが多いという状況だ。国際協調で税率を設定し、天然資源が失われないようにせねばならない。

アメリカでは政党が弱く、各地区の代表が強い。また産業界のロビイングが強い。会社のカネが選挙キャンペーンに影響する。民主党も共和党も同じカネを目当てに、似たような政策(right-center)を打ち出すようになってしまった。軍産複合体、ウォールストリートとワシントン、石油、健康といった産業がアメリカ政治を蝕んでいる。外交も中東の石油を目的に組まれている。気候変動は人によりもたらされたという多くの科学的業績があるのに、エネルギー産業とグルになったメディアはそれに不当な疑問を投げる。

アメリカ人はメディアを過剰に使っている。平均すると、TVの前に8時間半も座っているのだ。心理学が明らかにする所によると、人の心には展性があり、衝動的になったり、無意識に行動したり中毒になったりする。過剰消費や借り過ぎといったマクロ経済要因にもなっている。インターネットは発達したものの、基本的な知識を持っている人の割合はだんだん低下しつつある。

過剰消費をそそのかすメディアからは目を背け、自分自身と向き合い社会のことを考えるべき。ワークライフバランス、教育、協調、生態系の保護、貯蓄、多様性の認識、といった点に関して、"mindfulness"(=注意深く考えること)を持つべし。教育効果の高い0~6歳児が貧困の犠牲になるのを食い止め、化石燃料には課税する一方で低炭素なエネルギーに補助金を与え、無駄な防衛費を削減し、幸福指数や発達指数を使いながら真の厚生に向けて国を改革する。人的資本にスピルオーバーがあるとき、地区ごとに競争があると望ましくないことが生じる;税率を低くして住民を誘致したり、金持ち同士でつるんで貧乏人が住めないような高い地価になったりする。公共財の提供は各地で行い、収入の担保は中央政府が行うべき。さしあたってはガソリン税を上げたり、付加価値税を導入したり、とにかくなんとしても税収を増やす。そして政府は明確な目標を持ち、専門家を駆使し、政策は長期的展望から描き、金権政治を廃止し、地方分権を推進するべきとする。新しい世代はより進歩的で、真の福利を推進する第三の政党が芽生えるかもしれないとみている。

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(感想)

・サックスは「偉大なる踏み台」として認識している。
「地理的要因が経済発展に効く」→「地理は効きません、効くのは制度です」by Acemoglu, Johnson, and Robinson
「ガンガン援助しようぜ」→「もっと丁寧にみましょう」by Duflo
というわけで彼とは逆の解釈を示しておこう;政府はあくまで脇役で、邪悪な鉄道王が改心したり、パソコン長者が福祉に目覚めたり、とにかくエネルギーの有り余ったヤツが牽引するのがアメリカ社会。山積する難題はすべて科学やカネーー物質的なモノーーで解決してやるぜという姿勢でいいんじゃなかろうか?

・まとめると「持てる者にじゃんじゃんカネを使わせよう」との提言なわけだ。
まったくもってブレない!!!wインフラや貧困家庭など、効果があがりそうなターゲットを探してくるのに長けているのが経済学者というもの。

・「〜べき」論をすぐにぶつからあんまり好きじゃないんだよナァ。価値観が崩壊とか、米国のかつての一流経済学者にしては使用する語彙が杜撰すぎる。。。とはいえ、「救いの手」を主張する左派の経済学者だけどハイエクやフリードマンへの理解も示している!凡百の論客とは異なり、流石。

・「真実はなかなか明らかにならない。ハ大の同僚がインサイダー取引で罰を受けたとき、大学当局は懲罰に抵抗しようとした。(中略)サマーズは規制緩和を進め、アカデミアでもウォールストリートでも栄光ある地位を占めている(2章)」「ウォールストリートとワシントンの繋がりは深い。(中略)オバマのもとではサマーズ(後略)(7章)」サマーズ・シュライファーの師弟コンビに敵意むき出しでワロタw

・(※)民主党を支持する傾向がある州のこと。

・税の国際協調についてふれており、あたかも他国の競争に巻き込まれているように書いている。でもさあ、「条約で決定された事項を議会であとからひっくり返せるようになっている国」はアメリカくらいのもんなんだけど・・・w

・「いまや海外のことではなくアメリカに興味がある」と前書きに高々と掲げているんだけど、世銀のトップの候補として出馬してるねえ。まあしっかり仕事してくれるぶんにはかまわないけど。

・Christina Romerも「要職から降りたあとに」増税を主張したとしてdisられていてワロタw経済学者に容赦ないw

・CEOの給料が高すぎるかどうかって結構議論の余地があるんだけど;

・ネットサーフィンは読書と違うって意見だけどさぁ、それSachsが老人だからじゃない?小さい頃からPCやタブレットで読み書きしてきた人だったら、普通にPCのスクリーンを通しても「読書」できるんじゃないかな。(データ求む;30年くらいかかりそうだけど。。。)

・宗教家やケネディの発言を持ち上げたり、レーガンをことあるごとに非難するSachsの書き方をナイーブだと捉える人がいるかもしれない。でも彼は若くして正教授に上り詰めた秀才で、長年にわたり要職に就いていた重要人物もある。ケネディの短所もレーガンの長所も知っているだろうし、何より政界での生存戦略に長けているだろう。「アメリカ政治を改革しよう!」という本を出版するウラには何らかの優れた意図があるんじゃないだろうか?

・たぶんほとんどの日本の読者は「多様性の認識(笑)」と聞いてもあんまりピンとこないと思う。アメリカの黒人やヒスパニックや原理主義的宗教はやることが過激で、それでもなお認めようと言っているわけです。

・読みながら結構イラつくこともあったけど、若い世代に希望をみていたのは素晴らしいの一言。自分たちの世代より開放的・多様・繋がりが多く・教育も受けているなんて、なかなか発言できるものではない。

・ちなみに「文明の対価」とはオリバー・ウェンデル・ホームズの言葉で、税金を支払うときには安全な地域に住めることに対して支払っているという意味。
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2012年02月19日

アメリカの大躍進

「潜在生産量は大恐慌時代(1929~41)に劇的に伸びた」と主張する本を紹介してみる。題は"A great leap forward: 1930s depression and U.S. economic growth"、著者はこの時代の研究で知られる経済史家のAlexander. J. Fieldだ。主な要因は道路建設だそうで。



え、二次大戦が大不況を救ったんじゃないの?とか、もし戦間期に生産能力が伸びていたんなら、栄えていたのは20年代だったはずじゃないの?とか、それなら48~73のアメリカの黄金成長時代はどうなのとか、20世紀末の情報化時代に関してはどうなの?といった疑問が浮かぶだろう。本書はこれに答えていく。

20年代の伸びは、金属のシャフトや革のベルトが電線や電動のモーターに替わっただけで、製造業以外に進歩は無かった。
一方30年代には道路のネットワークの建設がなされた。それにより、卸売りや小売りといった、組織や運輸・配給の変化がもたらされた。ゴム製のタイヤで運びやすいよう、インフラが整備されていったのだ。これは全部の産業を巻き込んだとのこと。
戦中は戦争に全てが費やされ、その後通常の経済に戻ったけど、成長には悪影響があった。黄金時代の成長の伸びは普通に資本蓄積によりもたらされた。1973~95のTFPの落下は謎だけど、インフラ投資のメリットが薄れたからかもしれない。ITブームは確かに生活を一変させたけど、歴史的にみたらそう大きなものではなく、コンピューターや携帯電話や証券といった産業に限られているとのこと。

一部はアメリカの経済の伸びを年代順にみていく。19世紀の成長と20世紀のそれとは技術進歩において質的に違うと通来言われていたけど、長期のデータをとってみるとそうではない。20世紀後半のTFPの伸びは19世紀末の伸びよりも低い。
二部はさらに細かく検討する。TFPは1890~2004の間procyclical(景気のいいときに伸びる)な傾向を持っていた。また設備投資仮説、すなわち建築物ではなく耐久財は技術変化の担い手となり設備投資の社会的リターンは詩的リターンを上回るから補助金を与えられるべき、という見解に疑念を呈している。設備投資のシェアが伸びていてもTFPの伸びは薄いからだ。また、汎用目的技術という考え方を抜きに経済史を考察できるかも検討されていく。
三部では現在と大恐慌時代を比較する。財政危機の遠因がレーガン時代に溯れる。20年代の不動産のブームは、自動車によって新しい機会が生まれたから。戦間期の経験から何を学べるか考察し、鉄道に関して不況が長期的な生産性の成長に好影響があったかをみる。

(方法)
資本や労働の伸びで捉えられない経済の伸びはTFP(Total Factor Productivity)と呼ばれる。1929~41年ではどちらの要因もあまり伸びていないにもかかわらず33~40%の生産物の伸びを経験しているというのが、著者の中心的発見だ。
政府と農業部門を除いたPNE(Private Nonfarm Economy)を生産量として考えている。それは、政府部門の生産は市場に出ずコストで測られ、農業部門は転校に大きく影響を受けるからとのこと。
また最新のマクロ経済学を用い、景気循環のピークを同定し、それらを比べている;景気の底と天井を比べないようにするため。

すげー意外!
道路族には必読書かも?

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(感想)
・そういえば日本には車社会嫌いの高名な経済学者がいますね。数学に強くても年老いるとSAN値が下がるのかしら。
・上からの改革を目指した毛沢東の大躍進政策はコケたけど、下からの需要に応えたアメリカは文字通り躍進したというのが解題だそうで。うううん、加州の経済史家のくせに中国嫌いなのかなーw
・著者の師匠アブラモビッツや著者も認めるとおり、残査分析は推測に過ぎない。ただ、この時代が他の時代と比べて特徴があることは確かに思えるので、他の要因の指摘も待ちたいところ。特にITの影響が限られたものという見方は胡散臭さが残る。だって全ての産業に影響してるもん、コンピュータの導入。ただ変化がわかるようになるには50年くらいかかりそうだ。。。
・道路建設が顕著な時期を国際比較するって手もあるのか?
・バーナンキが珍しく褒められている!
・著者が使ったデータは読者も使えるようになっていた。素晴らしい。
(ご参考)
1948年以前のデータ;http://www.nber.org/books/kend61-1
それ以降; http://www.bls.gov, http://www.bea.gov
・ハコモノ建設は役立たずと言われるようになってきたけど(cf. Ed Glaeser)、まだまだアメリカはインフラ不足じゃないかなぁ。鉄道網もネット整備もショボショボ=希望があるような気がする。
posted by Char-Freadman at 23:34| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月26日

カトリックの経済的起源

皆さんこんばんは、【油を注がれた者】ことCharです。今回はキリスト教の経済的起源を分析した本を紹介してみます。



西洋世界を理解するには、2000年続くカトリックの分析は欠かせない。その特色は二点ある。単なる分派に過ぎない状態から、ローマの国教として受け入れられ拡大していくのがとても早いこと。そして、ローマ帝国の没落をものともせず中世までにヨーロッパと英国の信仰において独占的地位を確保したこと。
本書の目的は、独占に至る過渡期での教会の行動を、ミクロ経済学を用いて分析することにある。その地位を活かしてどういう行動をしたかは""に詳しい。もちろん他の学術の価値を貶めるものではない。宗教の多様なあり方のうち経済学という手法を用いて明らかにできる側面はたくさんあるよというのが著者たちのスタンスだ。競合他者を追い落としたいという組織の願望をを理解するのは重要なのだ。教団の進化に焦点を当てているため、教説の内容にまでは深く踏み込まない。

教団の発展はこのようにまとめられる。

初期の拡大は、起業精神に富んだパウロやその他の弟子によってなされた。
ローマ帝国が国教にした。
ニケーア公会議で教義が一元化された。
世俗の政治権力と繋がって西欧に広がり、教会は垂直的に統合された。
東西協会の分裂。
ローマ教会は税源を拡充し、政治権力と教会との権力の分離を確立した。
最上位にローマ聖庁、下位に地方教会という組織が確立され、信徒の一様性がもたらされた。

2章で他の文献紹介をして研究を位置づけたのち、3章で基本モデルを提示する。そこでは宗教が「死後の永遠の救済を約束する」製品を売る独占企業として捉えられる。そのサービスは購入後にその質を確かめることができない究極の信頼材だ。不確実性下の効用最大化問題として描かれる。
そして4章で、初期のキリスト教が広まったのは、パウロやディアスポラといった弟子の伝道に起業精神とネットワーク効果があったからと結論する。
5章ではキリスト教というカルテルの成立をみ、秩序と安定を統治下にもたらす=エージェンシーコストを低下させるという効率性の観点から、ローマはキリスト教を受け入れたとする。
6・7章では垂直的統合が中心的テーマだ。6章ではコンスタンチンからシャルルマーニュの戴冠までを扱う。コンスタンチンによる合法化とテオドシウスによる国教化は、ローマカトリックの垂直的統合の始まりに過ぎなかった。上流は下流を所有し、ローマ聖庁のもとで教会の収入は保証され各種の方針が調整されることとなった。6章は東方の皇帝の反対にどう対処したかが分析されている。フランク王国の手を借りたのだ。こうしてキリスト教は異教徒を改宗させ、ローマ教皇の正当性を認識させ保護させることに成功した。7章では世俗政治や東方正教との抗争の分析がなされる。
8章ではローマカトリックが中世までに独占的地位を占めたとし、その影響を見ていく。歴史的に重要なだけではなく、独占組織の傾向を見る上で普遍的に重要な示唆が得られるとのこと。そして現代のキリスト教会の行動を考察する。

産業組織論、宗教組織といったキーワードにピンときた人にお勧め。ただ、価格理論を使ってちょちょっと料理してみました系の爽やかな本ではない。気負ったタイトルからしてガッツリ専門書ですので、あしからず。

Christian.jpg

画像はイメージです。キリスト教の歴史は血塗られた闘争の歴史とはなんともよくいったもの。
posted by Char-Freadman at 00:50| 北京 | Comment(0) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年09月23日

カワイイは正義!

Danniel Hamermesh, "Beauty Pays: Why Attractive People Are More Successful"



美はその定義からして希少だ。そして希少価値といったら経済学の出番だ!円熟した労働経済学者が美というテーマに挑む。

まず美しさとはたいていの人が同意するような属性であることを確認する。とりあえず美の認識が似通っていて体系だっていれば経済学で扱うことは可能と締めくくる。逸話だってたくさんあればデータなんだよ!
顔面に対する五段階評価軸を使って、(1)同じ人に時期を違えて評価を聞き、変化するかをみる(2)いろんな人の評価を総合するという方法をとっている。まあ、完全な一致をみることはないけど、どちらのやり方でもそうブレはないみたい。年齢による違いはないけど、男のほうがより厳しいようだ。あと仲間に関して否定的な評価を下すことには文化の違いが見られ、アメリカ人は割とずけずけ言うのに対して中国人はそうではないとのこと。男女で平均は同じだけど分布は異なり、驚くほど美形とされる人が多いようだ。異なる人種には自分と同じ人種とは異なる評価をするみたい。どの文化でも若いほうがよく、しかもその差はでかい。男のほうが見た目は減価しにくいとのこと。(婚活ビジネスには悔しい結果といえそうだ^^)年齢による差が何故存在するかは進化的なもの以外に説明は加えないし、何が美の要件か(幼児期に審美眼が形成されることや顔の対称性)も考慮しない。衣服、髪形、化粧品や整形…これらが見た目を大きく変えると信じられているけど、残念!効果はさほど無い。好きなら消費すればといった程度。

さて市場での影響を見ていく。収入に差があるだけでは、消費者の選好を写したものか、雇用者の選好を写したものかはわからない。
ランダムに取られたデータからは、平均より上の容貌の女性は並の人に比べて高い収入を得ていることがわかる。教育・年齢・健康・組合加入・結婚・人種・都市の規模・宗教・家族の背景・勤続年数など容姿と収入に関係しそうな項目を考慮しても統計的に有意なようだ。上位1/3の女性陣と平均との差は8%であり、教育の影響(=10%)と引けを取らない(!)。生涯稼得では23万ドルもの違いが出てしまう。自信・性格・知性をコントロールしても結果は同じだって。が、男のほうが収入は美に左右されるというオドロキの結論が得られている!美しいほど収入が得られるなら、美人ほど労働市場に出るのではと推測している。つまり美しさが労働選択に影響を持つとのこと。またスキルを伸ばすいろんなチャンスに恵まれるのかもしれない。自己や事件で容貌が損なわれたとき、その損失はいくらくらいかこの研究は見積もることもできる。

職業選択にも関わってくる。能力と同じく美醜だってどんな職に就くかの際考慮するだろう。平均的には、美が得をするような職(俳優とか売春婦とか)に美形が揃うものだ。政治家にとっても美しさは重要だってさ。ちなみに大学の先生は5~6/10と見た目は低めの評価が下るし(おかしいナァ、評者の通う博士課程の学生にはイケメンが結構いるんだけど!)ふつう知性を最重視しているけど、それでも6%も差があるようだ。カッコイイほどティーチングの評価が上がるし、アメリカ経済学会長職にも選ばれやすいというぐぬぬな結果が得られている

営業担当員にも美しさは重要。消費者が美形な営業員を好めばそのような人を雇うのは企業にとって得であり、実際売り上げに大きな影響がある。会社にしてみたら労働者の美は「生産的」なのだ。そのような選好を間違って無視した企業は淘汰されてしまう。美形な労働者は、その美で培った人間関係を手放したくないから企業から離れにくくなる。

ベッカーは差別を「その人から買ったり、雇ったり、一緒に働いたりするのが嫌なこと」ととらえた。見た目でもそうである。容姿での差別は、雇う側にあっても、雇われる側にあっても、消費者にあっても、賃金の差が生まれる。

市場を離れた私生活でも美しさは影響する。知性や収入といった他の要因と同じく、美もまたパートナー選びにあたって交換される。美しいほど、他の望ましい条件を高く満たす人と付き合えるのだ。またグループ形成の際の要因ともなりうる。職探しと同じく、パートナー探しでは時間を通じてお互いのことを知りあう。データからは、妻の見た目と夫の教育水準が交換されていることがわかる。

容貌でこんなに差があるのは、公平といえるだろうか。はたして「顔面の不自由な人」の団体をぶちあげることに意味はあるのか。経済の本としては珍しく法手続き的なことまで踏み込んでいる。権利保護を目指すなら既存の団体と同じく労働市場でアファーマティブアクションがとられることになる。実際幾つかの区ではそうなりつつある。データからは概ね容姿に関して同意があるようだからひどいブサイクを定義することはまあできるし、14万ドルという巨額がかかっていればブサイクの資格がある人は法的保護を求めるようになるだろうとしている。黒人差別へ是正措置が取られるなら、美に関してだって取られてもいいじゃないかとのことだ。

手法に問題がある(サンプルはロースクールの学生だし主観性は消えないし)とはいえ、これらの研究結果に感情を乱すのではなく、自分の残念な容姿を認めた上で何ができるかを考えたほうが生産的でしょうね。所詮一つの要因に過ぎないのだから。

…大学の入学式で見た可憐な美少女がそのキャンパスライフを通じてぶくぶくぶくと太っていってただ悲しくなったのを思い出したよ!

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(感想)
ちょっと政府の役割認めすぎな気もするよねーと反感を抱いたのでマイナス一点してみた。水平的公平を論じるのはどうも性急じゃないかなーと。たぶんアメリカは差別にうるさい国だから追加した章なんだろう。

労働経済学者は本当に呆れるほどたくさんの回帰分析をするナァと頭が下がりました。

「黒人は美しいと思われにくい」(Char解釈;遺伝的というより、そのような美醜の文化が西洋に存在するようだ)という研究結果で物議を醸したLSEの金沢氏は完全にスルーされいている。うーんなんでだろ。

院生は容姿が残念と思われる人のために;西海岸の同期には涼しげな顔立ち・高身長・(定義により高学歴w)・おまけに彼女も(黙ってれば)綺麗という人類の敵が居ます。性格?察してくれ。

参考文献;差別といったらベッカー先生!博論がコレというから恐れ入る。。。

posted by Char-Freadman at 23:53| 北京 | Comment(3) | TrackBack(0) | ぶっくれびゅー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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