
CRIBSHEET
育児にあたって決めなきゃいけないことは多い。母乳で育てるか睡眠訓練するかなど挙げればキリがないし、ネットで調べれば調べるほどみんな違う意見を述べていてイライラするだろう。母乳で育てた子どもの方が健康状態がいいといっても、そういう家庭はそもそも裕福だから健康状態が良くなるのかもしれない:データが腐ってるのでいい結論が導けないのだ。母乳で育てるか哺乳瓶で育てるかランダムに決めてから健康状態を調べたデータが必要となる。著者は当書で扱ういろんなテーマにおいてそういう綺麗なデータを集めてくれている。
もちろん家計や健康状態など考慮に入れないといけない制約は人それぞれだし、宗教や子どもと一緒にいたい気持ちなどの好みも人によって違う。データは集めたので意思決定時の参考にしてほしいとのこと。
1章は出産から退院時までについて。新生児を風呂に入れてもメリットはあまりない。割礼には低い感染リスクと真性包茎を避けるメリットがあり、もしやるとしたら苦痛を和らげるケアをするといい。新生児と寝起きを共にしても母乳について影響はないので母親はぐっすり寝たいなら預けてしまっていい。栄養を取るのに慣れが必要なことから生まれたての赤ん坊は体重を減らしがちだけど、体重表を見て脱水を起こしてそうな危険な水準に達してなければ気にしなくていい。黄疸についても同じ。
2章は新生児について。毛布で包むと泣きやんだり睡眠の質が改善したりするが、足と尻が動くようにくるまないといけない。泣きかたががあまりにもひどい場合はプロバイオティクスを利用したり哺乳瓶を替えたりすると効果があるかも。雑菌に晒すのはアレルギーを避けるのにいいと言われているものの、生後数週間の乳児が風邪をひくと治療が大変なため晒さない方が良さそう。
3章は回復期について。産後も数週間は出血が続くし、腟は裂傷したままかもしれない。気にしないこと。運動やセックスしていいかは回復状態によるが、一般に言われている「6週間はセックスしない」というルールはでっちあげなのでやりたければやっていい。鬱は父親でも養父母でもかかりうるので早く助けを求めよう。
4章は母乳について。短期的には赤ん坊が湿疹や下痢にかかりにくくなるものの、長期的には健康に影響はなく、IQへの影響もない。一方で母親が乳がんにかかりにくくなる。
5章は授乳の工夫について。肌と肌で触れ合うのは乳が出やすくなるかもしれない。乳頭保護器を試してみてもいいかも。苦痛があったらすぐ助けを求めよう。哺乳瓶を使っても赤ん坊が母乳と取り違えるということはない。薬以外で母乳が出やすくなる方法はない。高い水銀の魚以外なら何を食べてもいい。
6章はSIDS(乳幼児突然死症候群)について。仰向けに寝かせればSIDSのリスクは低まるが、斜頭症のリスクは残る。ベッドを赤ん坊と一緒に使うことには小さいもののリスクがあり、タバコを吸ったり酒を飲んだりするようだとそのリスクは跳ね上がる。ソファで寝るのはとても危険。
7章は睡眠について。赤ん坊の睡眠時間は様々。6時から8時くらいに起きるようにすると良さそう。
8章はワクチンについて。リスクはまずほとんどないので受けさせましょう。
9章は労働について。母親の育児休暇は子どもにいい影響があるものの、それ以降家庭に居ても特に影響は見られない。家計の制約やら子どもとどれだけ一緒にいたいかとかは人それぞれ。
10章は託児について。質は重要。保育所だと認知能力が上がるものの悪い行動をするようになる。とはいえ乳母は高い。親が関わるのがとにかく重要なので、親としてしっかり機能できる方法を選ぼう。
11章は睡眠訓練について。「泣き止むまでほっとけ法(cry it out)」は効果的で、赤ん坊はよく眠るようになり、親の鬱も解消される。情動その他への悪影響はこれまでの研究では発見されていない。色々なやり方がありそのどれも効くので、どれか一つ選んでそれにこだわるのがいい。
12章は乳離れについて。アレルゲンに触れるのが早いほどアレルギーにかかりにくくなる。新しい味に慣れるのは時間がかかるものなので根気よく。無理に食べさせようとしても逆効果。
13章は発達について。歩き始めるのがあまりにも遅いようだと運動麻痺が疑われるし、風邪をしょっちゅうひくものの、たいていの場合それが当たり前なので気にしないでいい。
14章はテレビについて。2歳児まではテレビを見ても何も学ばず、3~5歳児なら学べるかも。映像より実際の人間から学ぶことが多いのでテレビはあくまでも補助として使おう。
15章は言語の発達について。女子の方が男子より早く話せるようになる。早くから話せる子は成長してからテストが得意になったりするがその影響は小さい。
16章はトイレについて。理由は不明なものの訓練開始時期は遅くなっているようだ。早く訓練を始めると訓練期間は伸びるものの早く仕上がる。
17章はしつけについて。一貫性を持ってやるべきで、脅したら実行しないといけない。体罰は逆効果。
18章は教育について。本を読んであげるのは良い。2~3歳児までは読めるか疑問。幼児教育の既存のどの指針がベストなのかはわからない。
19章は夫婦の関係について。子どもができると結婚への満足度は落ちるが、そのペースは幸せであったほどまたは子どもを計画的に作ったほど遅い。家事分担の不平等やらセックスの頻度がそこには関係していそう。チェックリストを作って話し合うと良いかも。
20章は何人持つかについて。どれくらいの期間空けるのが最適かはわかっていないものの、あまりにも間をおかず妊娠してしまうのは早産やら自閉症やらのリスクがあるのかもしれない。
21章は読者への励ましで締められている。
・前著では妊娠時に必要な意思決定についてのデータ集めてたからもし次の本が出るならちびっ子の教育本にでもなるのか?すげータフな人だ。
・いろんなリスクを挙げた上で何をするかは両親の選択であることを強調するのはいかにも経済学者らしい。ああせいこうせいって育児本マジ多いからうんざりしたんだろう。
・子どもがいても親は楽しんでいいんだよ、罪悪感覚えないでもいいのよというメッセージが溢れている。
・紹介文だと全部省いたけど個人的エピソードもおもろい。ゴミ捨てについてすげー細かい指示が来たら俺なら発狂しちゃうぜ。